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8章
国王推奨レシピ【2】
「カレーはさ、アレンジしやすいんだよね。今日入れたお肉と野菜は一番オーソドックスだと思う。自分の好きなお肉と野菜で試してみるといいかもね」
「セ、セナ様はその後のことも考えていらっしゃるのですね」
「それなら、平民も食べられるように配合を公表すればイイんじゃないですカナ? 」
「それはダメだ!!!」
ボンヘドさんの公表する案は、あの怒鳴っていた料理人さんによって即刻却下された。
国全体に配合を公表してしまうと、自分が考えたと言う人が出てくる可能性があるらしい。
(何その現代の著作権みたいなの……)
私的にはボンヘドさんの案に賛成で、食べたいなら各家庭で好きなようにアレンジして食べればいいと思うんだけど、それはダメらしい。ジルにもクラオルにも怒られてしまった。
「アンタ……いや、先生のこのレシピの数々はすごい発見だ! 値段を付けられないくらいの価値があるんだ!」
「「「「そうだ! そうだ!」」」」
「それなのに! そんな自分のレシピの価値を下げるようなことするんじゃねぇ!」
「「「「そうだ! そうだ!」」」」
怒鳴っていた料理人さんを筆頭に厨房にした料理人さん達に賛同されてしまい、私はグレンの背中に隠れてタジタジ。
(ここはデモ会場か何かなの? しかも先生って何!?)
「落ち着け。公表はさせん。そうだろう?」
「ハイ。申し訳アリマセン」
「ならいい。料理長としての意見だが、アレンジ可能レシピとしてレシピを登録して、販売する店を商業ギルドが精査すればいいんじゃないのか?」
「オオォォォー!! それならば可能デス! それですと……」
怒鳴っていた料理人さんは料理長だったのか……
その後も私そっちのけで話が進んでいて、私は暇すぎる。
厨房の入り口にはアーロンさん達がいて、キッチンから出られない。
「暇だね……」
「セナ様は話に加わらなくてよろしいのですか?」
「いつもだけど、こういうときは勝手に話が進んでいくんだよ。私が口を挟む方が話が進まなくなるの」
〈セナは無欲だからな〉
「なるほど」
立っているのも疲れるので踏み台に座って、どうしたもんかと考える。
そういえばタルゴー商会で樽を買ったのにあのオリジナル果実水買いに行けていないし、観光らしい観光もできていない。
初日にもらった地図を広げて、グレン達とどこか面白そうな場所がないか見てみる。
「みんなはどこか行きたい場所ってある?」
「そうですね……街ではありませんが、シュグタイルハン国には不思議な遺跡があると何かの書物で読んだことがあります。いつどこで読んだかは忘れてしまいましたが……」
「不思議な遺跡?」
「はい。なんでもトラップの数が恐ろしいくらい待ち受けているそうですが、最奥には……どんな願いをも叶えてくれる魔法の泉があるそうです」
〈そんなものがあるなんて聞いたことないぞ〉
「伝説や伝承といった類いです。僕自身は特に行きたい場所はありませんが、セナ様が面白そうなところと仰っていたので……」
ちょっと面白そう。トレジャーハンターの映画みたいじゃん!
ただ、トラップが危険なのは困るなぁ……みんなが怪我するのはイヤ。
「神のなんちゃらとかじゃないところがミソだね。泉にお願い事でもするのかな? 金の斧と銀の斧みたいに女神でも現れるのかな?」
『例えがよくわからないけど、主様には神達がいるじゃない。そんな怪しいところにお願いすることないわ』
「そうだね~。でもトレジャーハンターみたいなのは面白そうだよね」
多分エアリルパパ辺りが「僕達を頼ってくれない」ってショック受けちゃうだろうけど、そういうお願い事じゃなくて“冒険”が楽しそう。
不思議を発見するあの番組みたいに、歴史的なものを紐解く……みたいなことはできないかもしれないけど、この世界のことがちょっとわかるかもしれない。
グレン達と話しているとアーロンさんに呼ばれた。
「決まった。セナのレシピはアレンジ可能レシピとして登録してもらう。別として、割高になるがセナのレシピの分量の粉を家庭用として販売することになった。分量の情報は公表されないし、貴族に買い占めなどはさせん。販売はタルゴー商会とする」
「うん。それならいいんじゃないかな? リシータさんが大変になっちゃうと思うけど……」
「しょ、しょ商会長より職員を増やす許可をもらったので大丈夫です!」
「食堂などの販売は商業ギルドが信頼をおけると言う人物のみだ……ってどうかしたのか?」
ちょっと考えてただけなのにアーロンさんに目ざとく心配されてしまった。
「一般家庭も食堂も同じく、分量を配合したカレーパックを卸せばいいんじゃないの?」
「それはダメなのですヨー。悪質な料理屋が使用するカモしれないのデース。なので料理として提供する場合は許可が必要としまシタ。配合されたカレーの粉の販売はあくまで家庭用なのデス」
販売店の精査をしなきゃいけないから……ということらしい。
目潰しの粉ということは秘匿されてタルゴー商会がカレー用の素材の粉として卸すんだそう。
カレー炒めとかも出てくると思うけどその辺はどうするのか聞いてみると、そもそも私の配合のカレー粉を使った料理であれば私のレシピ使用料が発生するんだそう。
カレーパックとは別に簡単な作り方のレシピも一般家庭用に販売されるらしい。
「周辺国を招いての晩餐会をしようと思う」
「はい?」
「この国で配合された粉を買って自国に持ち帰って販売されたらたまったもんじゃないからな。オレの国が発祥だと示す必要がある」
「はあ……まさか私にその晩餐会の料理を作れと?」
「まぁ、作ってもらえるなら作ってもらいたいが……それだと料理人の腕が上がらないからな。数日、ここの料理人達に仕込んでくれないか?」
「えぇー!?」
私はまだいいけど、グレンとジルが暇になっちゃう。
「報酬も出す」
「いや、それは別にいいんだけど……グレンは厨房にずっといるのイヤでしょ? どうする?」
〈ふむ。そうだな……ならば我はちょっと出かける。ジルベルトはセナの護衛しろ〉
「もちろんでございます」
グレンが納得したのでまた明日もお城の厨房にくることが決まった。
◇
夜ご飯を作らされる前に宿に戻ってきてやっとひと息つけた。
「まさかずっとキッチンで会議することになるとはね……あぁ~、ジルの紅茶が美味しい~」
「ふふっ。ありがとうございます。セナ様、昨日と今日使った食材を教えていただけますか?」
理由を聞くと、帰り際にレナードさんに謝罪されたんだそう。私の消費した食材を保障してくれるらしい。
食材をジルがメモして、私達は夜ご飯を食べようと宿の一階に降りた。
「セナ様は連日の登城でお疲れみたいだから薄味にしておいたよ」
「わぁー! ありがとうございます!」
イペラーさんが用意してくれたのはコンソメの薬草スープだった。
美味しくいただいて早々にベッドに入らせてもらった。
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