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8章
モフモフ天国の危機【2】
「確かに前より多い気がするね」
前にも戦ったタヌキとの遭遇は既に四回を超えて、他にもでっかいハエやウルフ系もいた。
タヌキを倒し終えて魔物討伐を再開させると、ちょっと遠いけど二匹ほどやたら強い気配を察知した。
身体強化を使って森の中を走り、気配を消して魔物の場所へ近付くと……そこにいたのは怪我をした乳牛っぽい魔物と山羊っぽい魔物だった。
二匹とも破れてはいるけど、人間みたいな服を着ている。服装や筋肉質な見た目から二足歩行だと思われる。乳牛のように白黒の体毛の方がスイカのようなお胸で、茶色の山羊っぽい方がメロンみたいなお胸。顔と角からして牛と山羊にしか見えないのに胸は左右ひとつずつだった。
足は蹄だけど、手は人間みたいに五本なんだなぁー。乳牛人間と山羊人間とでも言えばいいんだろうか? いや……
「ミノタウロス? の女版?」
『キャッ! 敵!? 昨日アイツにやられた傷が治ってないのに!』
山羊人間が警戒心を露わにして乳牛人間を庇いながら臨戦態勢に入った。
ミノタウロスが牛人間だとして、山羊人間も何か神話に出てきた名前があったと思うけど忘れちゃった。確かサキュバスみたいな名前だったんだけど……
「えーっと、襲ってこなければコチラも戦う気はないよ。お姉さん怪我してるの?」
『な、何この子供。可愛いけど』
『し、知らないわ。気配なかったもの。可愛いけど』
牛人間と山羊人間がこそこそと相談し始めてしまい、私の質問には答えてくれなかった。
それなら別の質問に答えてもらおうとズイッと近づいて質問を投げかける。
「ねぇー! お姉さん達ヴァインタミア達いじめる悪いやつ?」
『なっ!? 失礼ね! あたい達そんなことしないわ! ヴァインタミア可愛いじゃないの! ってあら? 警戒心が強いって聞いてたのに、あなたの肩に乗ってるのね』
「そっか。じゃあお姉さんの怪我治してあげるよ」
『『え?』』
「セナ様、よろしいのですか? このような魔物に」
「うん。クラオルファミリーいじめたら問答無用で成敗するから。ね?」
ニッコリと微笑んだはずなのに、なぜかブルリと牛と山羊が身を震わせた。解せぬ。
気を取り直してヒールをかけてあげると、『治ったわ!』と喜ばれた。
「さて、お姉さん達はなんでここにいるの?」
『あたい達魔獣から逃げてきたの』
『昨日追いつかれて怪我させられたんだけど、なんとか逃げてきたの。また追いつかれないように急いで逃げなくちゃ! お嬢様もよ? ここも安全とは言えないわ』
「なぜ、その魔獣に追われているのですか? 普通ならばそこまで執着はされないはずです」
『それは……』
ジルの疑問に乳牛と山羊はオロオロし始めてしまった。どうも言いづらいことらしい。
まぁ、初対面の人間に込み入ったことを聞かれても戸惑うよね。でも、クラオルファミリーの安全のためにも、追われているとしたらファミリー達に近付けさせたくない。
「言いたくないならいいんだけど、私は私の大事なヴァインタミアを危険に晒したくないの。だから危険な魔獣に追われているなら、違う方向に逃げて欲しい」
『『え』』
「もし、教えてくれるならだけど、お姉さんが教えてくれる内容によっては助けてあげられると思うよ」
『『!』』
二人が相談し始めたので待ってあげていると、乳牛が意を決したように『お、お嬢様になら』と声をかけてきた。
コソコソ話のように耳を近付けると、『アタイ達のお乳が狙われてるの』と教えてくれた。
「え? 魔獣って変態なの? オーク?」
『違うわ!』
『あのね、あたい達のお乳から出る乳のことよ。あたい達の種族の女はみんな出せるわ』
(なるほど。胸じゃなくて牛乳が狙われてるってことね)
『アタイの種族は栄養がたっぷりなの』
『あたいの種族のは甘いの』
これはもしかすると、もしかするかもしれない。
味見させて欲しいんだけど、なんて言えばいいんだろうか……“あなたのオッパイ飲ませてください”なんて言ったら変態以外の何者でもない。
『まぁ、助かってももう家も壊されちゃってるし、行く宛もないんだけど……』
『大丈夫よ! 今までも二人で仲良くやってきたじゃない! これからも二人で一緒に頑張りましょ?』
「…………うーん。こんなこと言っていいのかわからないけど、人里に行くのはダメなの?」
『お嬢様は優しいのね。でもそれはできないのよ』
理由を聞くと、魔物だから従魔にでもならない限り街には入れないんだそう。もし入れても差別や迫害は免れないらしい。
「普通に話せるのにダメなの?」
『お嬢様みたいに優しい人ばかりじゃないの。以前取り引きでもできないかと思って村に行ったら罵られて攻撃されたのよ』
「そっか……それは辛かったね。ちなみに何を取り引きしようと思ったの?」
『アタイ達のお乳よ』
(ふぁっ!? これは流れがきているかもしれない!)
ドン引きされないようにしなければ! と、下心を隠して話しかける。
「それ、私協力できるかも」
『『え?』』
「はい。これ私のギルドカード」
『これが……初めて見たわ』
ギルドカードについてと商業ギルドにも登録していることをジルが説明してくれた。
ジルは説明しながら信者発言を連発していたけど、真剣に話を聞く二人に話の腰を折ることは言えず……黙っているしかなかった。
『お嬢様はすごいのね』
「すごくないよ。それでね、私も商人だからお姉さん達の取り引きしたいものをチェックしたいんだけど……プルトン、ジルとエルミスの目隠しお願い」
《はーい!》
『せ、精霊!? 初めて見たわ!』
「セナ様!?」
《儂もか!?》
「お姉さん達が恥ずかしいかもしれないから、ジルとエルミスは終わるまで見ちゃダメ」
プルトンが闇魔法で目隠しをしてくれている間に、驚いているお姉さん達にコップを渡して搾乳してもらう。
エルミスは《クラオルとグレウスも男なのに》とボヤいていたけど、クラオル達は私とお風呂も一緒だもん。私の幼女体型と、お姉さん達のスイカとメロンとは比べ物にならないかもしれないけど。
「ふぁぁぁぁぁ!!!! やっぱ生クリーム! そして練乳! 素敵!」
『『え? え?』』
「お姉さん! ぜひ私のところにきぶっ!」
『『えぇー!?』』
味見をさせてもらってテンションが上がった私に、クラオルからパンチが炸裂された。
お姉さん達はその様子を見て二人で抱きしめ合って驚いている。
『主様! 興奮するのはいいけど、ちゃんと考えなきゃダメでしょ! 大体、旅してるのに連れて歩くの!?』
「うぅ……一応ちゃんと考えてるよぉ。人里に行きたかったらキアーロ国のサルースさんに良さそうなところ聞くつもりだったし、人里がイヤだったらキヒターの教会もありだなって。森がよければ、キヒターの教会近くの精霊の泉近くだったら飲み水も食べ物もあるじゃん」
『ちゃんと考えてたのね。てっきり従魔にするつもりなのかと思ったわ』
「従魔は考えてなかったや。なってくれたら生クリームと練乳が手に入るから嬉しいけど、お姉さん達が望むものがわからないからね」
『『ふふっ。アハハハハハ』』
いきなり笑い始めたお姉さん達に私達が困惑する。
『ふふふ。仲良しなのね。あたい達が望むものは平和な生活よ』
『うんうん。こうやって狙われるのはもうウンザリ。人里で人目を気にするより、ちゃんとした生活が送られればそれで充分なの』
取り引きしたいって、何か欲しいものがあったんじゃないのかと聞いてみると、服とか生活に必要最低限のものと交換して欲しかったんだそう。
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