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8章
閑話:あの人達はどうなった――無口な男
コルトは焦燥にかられていた。
リーダーであるガルドが休みを設けるようになり、前よりも移動のスピードが格段に落ちたからだ。
各街での依頼は以前よりも多くなり、依頼にかける日数も増えていた。依頼にかかる日数が増えれば休息の日数も増える。
なるべく村で休みを取ってはいるが、街に行かなければ少女の情報は手に入らない。
少女の情報を得ようと街を訪れれば依頼が待ち構えている。
コルトはもどかしくてもどかしくて仕方がなかった。
◇
「なんでそんなにイライラしている?」
暇さえあれば触って存在を確かめるようになった少女の短剣をベッドの上で撫でていると、双子の片割れであるモルトに話しかけられた。
ガルドとジュードは買い物に出かけていて部屋にはいないからか、モルトは口調を崩していた。
「……このままだと会えるのはいつになるかわからない」
「焦っても仕方ないでしょう」
「……会いたくないの?」
「会いたいに決まってる」
「……急げられるのに急いでない」
「ガルドさんはみんなの体調を考えてるんだよ。疲れればケガするリスクが上がる。常識だろ?」
「……わかってる。わかってるけど……」
コルトも頭ではわかっていた。
依頼の量も増え、難易度も高いものが多い。休みがなければ確実に誰かはケガをしてしまう。休みと言っても最低限で余分な休みはないことを。
頭ではわかっていても、心が追いつかない。だから焦ってしまう。
「はぁ……そんなイライラするな。みんなあの子に会いたい気持ちは変わらない」
「……うん。早く会いたい」
「そうだな」
「ただいまー」
「戻った」
ガルドとジュードが宿に戻ってきて、話は流れてしまった。
イライラするのはお門違いなのもわかっているが、他の三人が普通に過ごしているのにもイライラしてしまう。
(なんでみんなは普通にしていられるのか……本当に会いたいの?)
みんなより自分の方が会いたいんだとコルトは思ってしまう。
実際は、普通にしていないと少女のことを考えてしまうから、ガルド達三人はあえて普通にしていた。それにコルトは気が付いていなかった。いや、気が付かないフリをしていた。少女のことを忘れてはいけない気がして……
◇
その後も依頼をこなし、やっと……山を越えたら自国を出て隣りのシュグタイルハン国に入るところまできた。
コルトは少女ともう何年も離れ離れになっている気持ちだった。
(長かった。やっとこれで一歩近付ける気がする)
コルトは久しぶりに気分が高揚していた。
「この村から先はシュグタイルハン国の村までは野営になる。準備は大丈夫か?」
「食材はバッチリだよー」
「ポーションも薬草も買ってあります」
ガルドが確認してジュードとモルトが答えた。
「コルト、コルトも大丈夫か?」
コルトはガルドに名指しで聞かれたので頷いた。
自国を出たら指名依頼も少しは落ち着くだろう。そしたら進むスピードが上がると考えていたコルトに、「気を抜くなよ」とガルドが声をかけた。
冒険者や商人にメインで使われているのは街から続く道。
ガルド達が歩いている道はあまり使われていない道だった。依頼で村に寄らなければならなかったからだ。
ただガルドは初め、街からの道を使おうとしていた。コルトが「旧道を使えば早い」と指摘したことで、この道を使うことになった。
道があるならあまり使われていないとは言っても、そこまで魔物は出ないと予想しての行動だった。
だが、実際山に入るとその予想は裏切られてしまった。
「クソッ! こうも魔物が出てくるとは!」
「もしかしたら、街道側から追い立てられてこっちに流れてきてるのかもー!」
予想外の魔物の多さに驚きながらも、ガルド達は魔物を倒していく。
◇
十日ほどかけて峠を越えたころには回復アイテムが心許なくなっていたため、途中で薬草も採取しつつ山を下る。
「あー! あれじゃない!? あの小さく見えるやつー!」
ジュードがテンション高く指さしたのは、シュグタイルハン国の村だった。
自国を出た事実に四人全員の気分も上がった。
◇
あと二日もあれば村に着けるというときに事件は起こった。
モントモンキーの群れに囲まれてしまったのだ。
「クソッ! ここへきてCランクの大群かよ!」
「殺るしかないですね」
Cランクとは言っても大群であれば難易度はグッと上がる。
四人は頷きあってモントモンキーと対峙した。
魔法と武器を駆使して戦い続ける。
「ぐあっ!」
「コルト!」
コルトは一瞬の隙を付かれてモントモンキーからの攻撃をモロにくらってしまった。
流れる血で意識が朦朧としてくる。
(ガルドさんが気を抜くなって言ってたのに……ごめん……みんな無事でいて……最後にあの子にひと目でも会いたかったな……)
コルトは責任を感じ、パーティメンバーの無事と少女のことを想って瞳を閉じた。
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