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8章
国王奨励事業
私達がお城を訪ねると、アーロンさんは兵士さん達と一緒に体を動かしている最中で、敷地内の訓練場のようなところに案内された。
アーロンさんは楽しそうに兵士さんと拳を打ち合っていて、私達に気が付かない。
「書類も溜まっておりますのに、ああなると気が済むまで終わりません。あの状態ですので、ぶっ飛ばすなりなんなりして気が付かせていただけると助かります。ポーションで回復できる程度の怪我でしたら大丈夫です」
自国の王様に対してのレナードさんのビックリ発言に私達が呆気にとられてしまった。
扱い雑じゃない!?
「えぇ……どうしよう……あ! グレンが威圧すればいいんじゃん!」
〈わかった〉
「気を失わせないように弱ーく、あの人達だけに絞ってくれる?」
〈ふむ。弱くだな〉
「セナ様、反射的に攻撃されるとも限りませんので、結界を張ることをオススメ致します」
ジルに言われて結界を張ると、ボンヘドさんとリシータさんに驚かれた。
グレンに威圧してもらった瞬間、危険を察知して結界がカンッ! と何かを弾いた。
音が鳴った方を見てみると、ナイフだった。
〈ふむ。弱すぎたか……調節が難しいな〉
「なんだ!? ってセナか。どうした?」
咄嗟に対戦していた兵士さんに庇われたアーロンさんが、兵士さんの後ろから顔を覗かせた。
「ちょっと用があって。それにしてもいい反射だね。このナイフ誰の?」
私が結界を解除してナイフを見せると、誰も名乗り出なかった。
兵士さん達はこのまま訓練を続けるらしく、そのまま応接室に向かうことになった。
◇
「シャワーを浴びてくる」と途中で別行動になったアーロンさんが応接室に遅れてやってきた。
「待たせた」
「急いできてくれたのはありがたいけど、髪の毛くらいは乾かそうよ」
「ん? おぉ、悪いな。いつもレナードもリシクも気にしないから、ついクセでな」
いつもタオルドライだけで自然乾燥らしいアーロンさんがタオル片手にニカッと笑った。
(いや、そんな少年みたいな笑顔を向けられても困るんだけど……)
気を取り直したようにアーロンさんに「で、どうした?」と聞いてもらえたので、素材の在庫問題で販売延期だと伝えた。
ボンヘドさんとリシータさんが細かい説明をすると、アーロンさんの眉間にシワが刻まれた。
「それは困ったな……足のかゆみは兵士にも多い。兵士用に融通してもらえないか?」
「え、えっと……」
〈フンっ。むしろ兵士には販売しないこともできる。いや、セナはレシピの許可を取り消しても困らん。登録しても必ずしも許可がもらえると思うな〉
困ったようにリシータさんに見られて、答えようと思ったら先にグレンが口を開いた。
言い方はアレだけど、私は融通するとしたら平民を優遇したい。
「セナ様は貴族や平民と差別することを嫌っております。アーロン陛下はキアーロ国で痛感したと思いますが違ったのでしょうか?」
「……そうだな。悪かった」
ジルが無表情にジーっとを見つめて問いかけると、アーロンさんが折れた。
アーロンさんが言うには――なんと、兵士さん達の中で“足がかゆすぎる問題”が勃発しているらしく、ブーツを履きたくないがために獣化を練習している獣族の人もいるらしい。
まぁ、確かに見た目が完全に動物だったらブーツどころか服も着なくていいだろうけど……
「集まりにくいドロップ品とはなんだ?」
「サンドスライムだよ」
「は!?」
「「「セナ様!?」」」
私がアーロンさんの質問に答えると、リシータさんとボンヘドさんとジルに揃って驚かれた。
アーロンさんはわかるけど、まさか三人にも驚かれるとは思ってなかった。
「セナ様、レシピの内容を話してしまってよろしいのですか?」
「あぁ! それは大丈夫だよ。さっきレシピ登録しちゃったから類似品も作れないし、サンドスライムのドロップ品があっても作り方はわからないだろうからね。それに、アーロンさんはそういう面倒なの嫌いでしょ?」
「ハッハッハ! その通りだ」
まぁ、アーロンさんが頼めば誰かしらが研究したりもするんだろうけどさ、今までの固定概念があるから研究が早く進むとは思えないんだよね。
「しかし、サンドスライムか……確かに冒険者を雇ったら話題になるだろうな……」
なぜかアーロンさんがチラチラと私を見てくる。
(まさか……)
「セナ、行ってもらえないか? セナのレシピだからセナが一番詳しいだろ? 冒険者に機密が漏れる心配もない」
「そりゃそうだけど……」
「他の冒険者が気になるならダンジョンを貸し切りにすればいい」
「えぇ……そこまでするの?」
「なるべく早く作って欲しいからな。行ってくれるなら指名依頼にしよう」
「はぁ……わかったよ」
そろそろ出発しようかと思っていたんだけど、アーロンさんを筆頭にレナードさん、ボンヘドさん、リシータさんにまで期待の眼差しを向けられて了承した。
ただ、今回限りでこれからは買い取り強化で頑張ってもらいたい。
サンドスライムが現れるダンジョンは王都の近くでは三つほどあり、その中でも一番他の冒険者に影響が出ないダンジョンを貸し切ってもらうことになった。理由はダンジョンの調査ってことにするらしい。
そんなアバウトで大丈夫なのかと思ったけど、お国柄か大丈夫らしい。
ダンジョンの入り口には兵士が立って通達を知らない冒険者が入らないように見張ってくれることになった。
「じゃあ、籠るならいろいろ買わないと」
「わ、わたくしの商会がご用意致しますっ!」
「無理を言ったからな。城に請求してくれて構わん。セナも好きなモノを買っていいぞ」
「わかったー」
依頼受注と通達のために一度冒険者ギルドに寄って、その後タルゴー商会に行くことになった。
指名依頼の報酬はお金と貸しイチ。私が困ったときとかに手を貸してくれるらしい。特に欲しいモノがないって言ったらそうなった。アーロンさんいわく「何もなくてもセナの味方であることには変わりないがな!」だそう。
◇
冒険者ギルドで依頼を受けて、タルゴー商会で大量購入。
お城払いってなったからか、ジル以外みんな遠慮がなかった。特に小麦粉は買い占めになるところだった。
みんなが選んだものをよりすぐって食材中心に購入させてもらった。
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