文字の大きさ
大
中
小
161 / 502
9章
ストーリーは突然に
戸惑っている人にコツを教えていると、ドナルドさんが倉庫に飛び込んできた。
「どうしたの?」
「探していた黒煙のパーティがこの国に入ったらしい」
「え!? ホント!?」
「お嬢に似た少女のことを聴き込んでいたらしい。ただ、名前を知らないと言っていて冒険者ギルドが怪しんだため報告が遅れた」
「記憶喪失だったから私の名前知らないんだよね……ねぇ、どこの街?」
「西のベヌグだ。隣国との境界が近い街だ。ただ……リーダーだけで、パーティとしての依頼は受けていないらしい」
「どういうこと?」
「それはわからん……検討したあと念のための報告とのことだ」
「とりあえずありがとう! すぐ出る! リシータさん! あとお願いします!」
「はっ、はい!」
ドナルドさんがアーロンさんとイペラーさんへ街を出ることを伝えてくれるらしいので、そのままバタバタと街の門を飛び出した。
◇
ガルドさん達には街から移動しないでもらいたいけど、行動を制限するのは良くない気がして言えなかった。
ガルドさんだけっていうのはケンカでもしたのかな?
何かあったなんて悪い方向には考えたくない。
馬車の中でマップを確認していると、クラオルから話しかけられた。
『ねぇ、主様。大丈夫?』
「大丈夫だよ。どのみちそろそろ王都を出ようと思ってたしね。場所がわかったから急ぎめで行きたいけど、ニヴェス達の疲れもあるから無理は言わないよ」
『ならいいけど……』
〈買い物は良かったのか?〉
「うん。ダンジョンの前にタルゴー商会でいっぱいもらったからね」
〈そうか! ならご飯だな! 我はちゃんと洗ってやったぞ!〉
言われてからお昼をすぎていることに気がついた。
みんなにリクエストを聞くと、珍しく和食を希望された。
珍しいなと思いながら、肉じゃがにお味噌汁に焼き魚と和定食風のご飯を作った。魚の骨も気にしないらしいのでニヴェスも同じご飯。
「できたよー! みんなが丼じゃない和食食べたいって珍しいね」
『このご飯なら主様も落ち着くでしょ?』
「私?」
『焦ってるの、ワタシ達にはお見通しよ!』
テーブルの上でビシッと私を指さしたクラオルを撫でる。
ソワソワしてたのがバレバレだったらしい。みんな揃って心配そうな顔をしていて、そんな表情をさせてしまったんだと思った。
「ごめんね。心配してくれてありがとう」
気を取り直してお昼ご飯を済ませたら、私はコテージの作業部屋へ。
『主様、今日は何作るの?』
「今日はシュティー達のお守りとスニーカーだよ」
『スニーカーってなーに?』
「靴だよ。こういうブーツとはちょっと違って走りやすいの」
『あら、またその板使うのね』
「うん。これ便利だよね」
中敷きと同じようにクッション性のあるスニーカーが欲しい。
靴底はこの板を使えばいいけど、表面の布に悩む。紐はポラルとミスリルカイーコの糸を編み込んで作ればいいけど、魔物の皮を使うと革靴やブーツみたいに糸みたいになっちゃう気がする。
「あ! そういえばダチョウの毛皮ってアルパカみたいだから紡いだら糸みたいになるかな? もしできたらカピバラの毛皮も使えるかもだね」
糸車が作れないかと書庫でそれらしい記述が載った本を探したけど見つからない。
プルトンとエルミスに作り方を知らないか聞いてみると、精霊の国にあるから私用に作ってくれることになった。なんなら糸紡ぎまでやってもらえるらしいのでプルトンに頼んでアルパカとカピバラの糸紡ぎもお願いしてしまった。
スニーカーは糸待ちになっちゃったのでシュティー達のお守りを作り始めた。
「デザインはキヒターと同じでクラオルマークでいいかな?」
『そういえば前に作ってたわね』
「うん。可愛いでしょ? あ! ニコイチってことでクラオルとグレウスにしようかな?」
『ボクもですか? 嬉しいですっ!』
良かった。嫌がられたらショック受けるところだった。
スリスリと擦り寄ってくるグレウスが可愛くて、気分良く神銀を捏ねていく。
キヒターは首輪がないからネックレスにしたけど、シュティー達は首輪のカウベルがあるんだよね……
『主様? どうしたの?』
「シュティー達、従魔の首輪あるからどうしようかなって」
『守る結界ならネックレスの方がいいわよ』
「そうなの?」
クラオルの説明では、魔道具のネックレスを中心に結界が張られるため、指環とかよりはネックレスのほうがズレがないらしい。
ピアスでもいいらしいけど、シュティー達に丸いメダル状のピアスは牧場の牛の耳に着いているタグを思い出しちゃうからやめておこう。
ピアスがアリなら鼻輪でも大丈夫そうだとちょびっとだけ思っちゃったのは内緒。
「できた! 思ってたよりも時間経っちゃったね。夜ご飯作らなきゃ」
『調べてたものね』
ニヴェスに野営地を探してもらって、私はご飯作り。
夜ご飯はもんじゃ焼きにしよう! グレンとジルはいっぱい食べるだろうからお好み焼きも作ればいいよね! 特にグレンはもんじゃ焼きを食べた気がしないって言いそうだし。
エルミスとプルトンにも手伝ってもらってザクザクとキャベツを刻んでいく。
「よし! できた! キヒターの教会に飛ぼう!」
『え?』
《馬車はどうするんだ?》
「置いてくよ。プルトン結界お願いしてもいい?」
《はーい!》
馬車から降りてグレンとジルに飛ぶことを伝えると、二人にも驚かれた。
ニヴェスは一度影に戻ってもらう。人数が増えると不安だからね。
まだ夕方だけど、辺りに人の気配がないことを確認してプルトンに厳重に結界を張ってもらったら出発!
教会目指して飛んで飛んで飛ぶ。
「やっぱ教会に直接は難しいんだね……今度からクラオルの実家経由にしようかな……クラオルの実家なら一発で行けるから」
『主様、大丈夫?』
「うん。プルトンに馬車の結界頼んどいて良かった」
魔物と戦うよりも転移の方が魔力消費が激しい。この先呪淵の森からさらに離れたら、教会に来るのにも一苦労だ。
私達が教会に着くと、キヒターがパタパタと出てきてくれた。
《女神様! どうしたんですか?》
「みんなでご飯食べようと思って。シュティー達も呼んできてもらえる?」
《わぁー! かしこまりました!》
キッチンにあるテーブルは私達が全員席に着くには小さいので、パパ達の像の前に私の持っているテーブルセットを出した。
『お嬢様と一緒にご飯なんて嬉しいわ!』
『こんなに幸せでいいのかしら?』
「ふふっ。いいんだよ」
先に焼いておいたお好み焼きを配って、つまみながらホットプレートでもんじゃ焼きを焼いていく。
暑くてエルミスに周りを冷やしてもらうように頼んだ。エコなクーラー扱いだけど、快く冷やしてくれた。
〈グチャグチャだぞ? 本当に食べ物なのか?〉
「美味しいんだって。このヘラでこうやって取って食べるの。熱いからヤケドしないように気を付けてね」
クラオルとグレウスはホットプレートから取りにくいので、お皿に確保してあげる。ポラルはいつも通り器用に糸を使って食べていた。
シュティーもカプリコも『はふはふ』と熱さに四苦八苦しながらも『美味しいわ!』と食べていく。
キヒターはやっぱり魔力水の方が好きらしく、グレンはもんじゃ焼きよりもお好み焼きの方が好きらしい。食べた気がしないんだそう。予想通りの反応だった。
ご飯を食べ終わってからシュティー達にネックレスを渡すと泣かれてしまった。
『やっぱりお嬢様は他の人族とは違うわ』なんて言っていて、今まで会った人はどんだけ酷かったのか……同じ人間として申し訳ない。
「首輪があるけど、お守りだからネックレスにしちゃったんだ」
『本当に……嬉しいわ』
『うんうん。しかも可愛い……』
「気に入ってくれて良かった。身に着けててね」
『『一生の宝物にするわ!』』
大げさな気がするけど、嬉しそうに握りしめてるからいいかな?
お礼を言うシュティー達から搾乳したミルクをもらって馬車に戻った。
帰りはクラオルの実家の経由をしたら行きよりも転移の回数が少なくてすんだんだけど、行きが実家経由じゃなかったからか一発とはいかなかった。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。