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9章
一悶着
ガルドさんが案内してくれることを約束してくれたので、ギルドの応対の問題を聞こうとネルピオ爺を呼んだ。
ソファを移動して、私達はガルドさんと同じソファへ。ソファに四人は座れないため、私はグレンの膝の上に座ることになった。
好々爺のようにニコニコと微笑んでいたネルピオ爺に村の状況の説明をすると、だんだんと笑顔が消え真剣な表情に変わっていった。
「些か信じられん話じゃが……その様子だと本当のようじゃな。なぜそんなになっても街に報告がきていない?」
「村は身体強化で走って二日かかり、村人は疲弊している。俺達が村に着く前から既に何人かはそうなっていた。俺は街で薬がないか聞いたが、信じてもらえなかった」
「街から二日……あの村か。村人がほとんど村から出んことが原因か……話を聞いた職員を庇うわけではないが、おそらく信じられなかったんじゃろうな……ギルドの落ち度じゃ。謝って済む問題じゃないが申し訳ない」
「謝られてもな……特効薬もねぇみたいだし……」
もし、空気感染する病気とかなら既にガルドさんも感染して眠っているハズ。悪いと思いながらも鑑定させてもらうと、ガルドさんは“疲労”とだけ書かれていてホッとした。内心驚いたのが、レベルと年齢。今はまで鑑定した人物の中で一番レベルが高かったこと。Aランク……今はSランク冒険者の様子の名は伊達ではなかった。そして年齢は思っていたより若かった。
村人も半分は起きていることを考えると、空気感染ではないと思う。病気……もしくは呪い?
ネルピオ爺も症状に心当たりはなく、眠気覚ましが効かないのなら対策も思いつかないらしい。
たぶん、他の人が村に行っても被害が広がるだけだと思う。
「とりあえず……ネルピオ爺はアーロンさんへの報告と村への立ち入り禁止を通達してもらってもいい?」
「構わんがどうするんじゃ?」
「ふふっ。村に行くに決まってるでしょ?」
「じゃがっ…………そうか。決めたんじゃな……わかった。何か入り用なら言っとくれ。ギルドは全面的に協力する。ひ孫のような幼子に任せるしかないとは情けないのぉ……じゃが、約束しとくれ。必ず、必ず戻ってくるんじゃぞ?」
「もちろん!」
ネルピオ爺との話を終えて、村人に配るための食材を急いで買い集めた。
一時間後、集合場所である門前に着くとガルドさんはまだ来ていなかった。
みんなに話すチャンスだ。
「ジルは街に残ってもらって、グレンは街に残るか影に入ってもらいたいんだけど……」
〈「!」〉
「クラオル達もみんな影に入ってもらえないかな?」
『『〔!〕』』
『ちょっと! 主様、どういうことよ!?』
「私はガルドさん達も大事だけど、みんなも大好きで大事な家族なんだよ。何があるかわからないから、影の中なら安全かなって思って」
みんなの怒りの形相にちょっとビビりつつ、安全性を考えてのことだと伝えるとクラオルにベシベシと叩かれた。
『何言ってるのよ! ワタシ達をのけ者にする気なの!? そうなのね!?』
〈クラオルもっとやれ!〉
『主はボク達がいない方がいいんですか?』
〔ハナレタクナイデス〕
「セナ様、僕達はセナ様と共にいたいのです」
《そうよ~。みんなで行った方が解決できるわ!》
《儂らは引かぬぞ》
フーッフーッと興奮したクラオルを持ち上げると、泣かせてしまっていた。
「大好きだから、大切だからみんなに何かあったら悔やんでも悔やみきれないんだよ」
「それは俺のセリフだ。お前さん……いや。セナに何かあったらあいつらにも顔向けできねぇ」
いつの間にかガルドさんが集合場所に来ていた。
ガルドさんは「セナがあいつらに会いたいって気持ちと、こいつらが離れたくねぇって気持ちに差はねぇと思うぞ」と私の頭をガシガシと撫でた。
本当にいいのかを確認すると、全員に頷かれた。クラオルは『最後の最後まで一緒にいるわ』なんて、キュンとしちゃいそうなセリフを言ってくれたんだけど、死亡フラグっぽいなと思ってしまった。そんなこと何が何でも阻止してやるけど。
「じゃあ、出発するぞ」
〈待て。セナ、ニヴェスを呼べ。あやつも我らと同じハズだ。心配なら村に着いたときに影に入れればいい〉
グレンに言われてニヴェスを呼んで説明すると『もちろんですン』と足元にスリスリと体を擦り付けてくれた。
ガルドさんはニヴェスを呼んだことにも驚いていたけど、馬車を引いてもらうためにちっちゃいサイズからノーマルサイズになってもらうと、目玉が飛び出そうなくらい目を見開いた。
「おい。説明してくれるんだろうな?」
「従魔のニヴェスだよ。大きさ変えられるの。ね?」
『はいっ!』
私の頭をガッシリと掴んで、有無を言わさぬ笑顔で聞いてきたガルドさんに、ニヴェスを紹介するとニヴェスは元気良く返事をしてくれた。
「そういうことじゃねぇ……」
〈フッ。これくらいで驚いてたら身が持たんぞ。セナ、でかい方を出せ〉
「わかったー」
大きい方の馬車を出すと、ガルドさんは口をあんぐりと開けてちょっとフリーズした後、またもやため息を付いた。
会ってからため息をつかれてばっかりだ。
馬車に乗り込み、ニヴェスに急ぎめで走ってもらう。ニヴェスの速さなら今日中に着くでしょう。
今日はジルも私達と一緒に中にいるため、御者席には誰もいない。
「聞いてもいいか?」
「ん? なーに?」
「なんでグレンは呼び捨てなのにジルベルトは様付けなんだ?」
「僕はセナ様に救っていただいたのです」
「どういうことだ?」
ギルドで話が中途半端で終わっていたことを思い出して、ジルとの出会いをかいつまんで話す。
「国王に謁見……しかも命狙われたのかよ……」
「僕はあのとき生まれ変われました。新しい名前もいただき、セナ様に忠誠を誓ったのです」
ジルがうっとりと語る姿にガルドさんの顔が引きつっていた。
この先もジルの信者発言がありそうなので、ガルドさんにこっそりと「なぜか洗脳状態なんだよね」と説明しておく。
「そうか……セナはもう一人じゃないんだな……」
「うん! みんな大事な家族だよ! ガルドさんはお兄ちゃん!」
「……俺もか?」
「もちろん! モルトさんとコルトさんもお兄ちゃん!」
「……ジュードは?」
「ジュードさんはお母さん!」
「クククッ。そうか。あいつらに聞かせてやりてぇな」
ガルドさんは私の頭を撫でながら泣きそうな顔で笑った。最悪の場合を考えちゃってるのかもしれない。
私は足掻くつもりだけど、最後の手段も考えている。元日本人なら思いつくだろうあのことを。
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