文字の大きさ
大
中
小
166 / 502
9章
一悶着
ガルドさんが案内してくれることを約束してくれたので、ギルドの応対の問題を聞こうとネルピオ爺を呼んだ。
ソファを移動して、私達はガルドさんと同じソファへ。ソファに四人は座れないため、私はグレンの膝の上に座ることになった。
好々爺のようにニコニコと微笑んでいたネルピオ爺に村の状況の説明をすると、だんだんと笑顔が消え真剣な表情に変わっていった。
「些か信じられん話じゃが……その様子だと本当のようじゃな。なぜそんなになっても街に報告がきていない?」
「村は身体強化で走って二日かかり、村人は疲弊している。俺達が村に着く前から既に何人かはそうなっていた。俺は街で薬がないか聞いたが、信じてもらえなかった」
「街から二日……あの村か。村人がほとんど村から出んことが原因か……話を聞いた職員を庇うわけではないが、おそらく信じられなかったんじゃろうな……ギルドの落ち度じゃ。謝って済む問題じゃないが申し訳ない」
「謝られてもな……特効薬もねぇみたいだし……」
もし、空気感染する病気とかなら既にガルドさんも感染して眠っているハズ。悪いと思いながらも鑑定させてもらうと、ガルドさんは“疲労”とだけ書かれていてホッとした。内心驚いたのが、レベルと年齢。今はまで鑑定した人物の中で一番レベルが高かったこと。Aランク……今はSランク冒険者の様子の名は伊達ではなかった。そして年齢は思っていたより若かった。
村人も半分は起きていることを考えると、空気感染ではないと思う。病気……もしくは呪い?
ネルピオ爺も症状に心当たりはなく、眠気覚ましが効かないのなら対策も思いつかないらしい。
たぶん、他の人が村に行っても被害が広がるだけだと思う。
「とりあえず……ネルピオ爺はアーロンさんへの報告と村への立ち入り禁止を通達してもらってもいい?」
「構わんがどうするんじゃ?」
「ふふっ。村に行くに決まってるでしょ?」
「じゃがっ…………そうか。決めたんじゃな……わかった。何か入り用なら言っとくれ。ギルドは全面的に協力する。ひ孫のような幼子に任せるしかないとは情けないのぉ……じゃが、約束しとくれ。必ず、必ず戻ってくるんじゃぞ?」
「もちろん!」
ネルピオ爺との話を終えて、村人に配るための食材を急いで買い集めた。
一時間後、集合場所である門前に着くとガルドさんはまだ来ていなかった。
みんなに話すチャンスだ。
「ジルは街に残ってもらって、グレンは街に残るか影に入ってもらいたいんだけど……」
〈「!」〉
「クラオル達もみんな影に入ってもらえないかな?」
『『〔!〕』』
『ちょっと! 主様、どういうことよ!?』
「私はガルドさん達も大事だけど、みんなも大好きで大事な家族なんだよ。何があるかわからないから、影の中なら安全かなって思って」
みんなの怒りの形相にちょっとビビりつつ、安全性を考えてのことだと伝えるとクラオルにベシベシと叩かれた。
『何言ってるのよ! ワタシ達をのけ者にする気なの!? そうなのね!?』
〈クラオルもっとやれ!〉
『主はボク達がいない方がいいんですか?』
〔ハナレタクナイデス〕
「セナ様、僕達はセナ様と共にいたいのです」
《そうよ~。みんなで行った方が解決できるわ!》
《儂らは引かぬぞ》
フーッフーッと興奮したクラオルを持ち上げると、泣かせてしまっていた。
「大好きだから、大切だからみんなに何かあったら悔やんでも悔やみきれないんだよ」
「それは俺のセリフだ。お前さん……いや。セナに何かあったらあいつらにも顔向けできねぇ」
いつの間にかガルドさんが集合場所に来ていた。
ガルドさんは「セナがあいつらに会いたいって気持ちと、こいつらが離れたくねぇって気持ちに差はねぇと思うぞ」と私の頭をガシガシと撫でた。
本当にいいのかを確認すると、全員に頷かれた。クラオルは『最後の最後まで一緒にいるわ』なんて、キュンとしちゃいそうなセリフを言ってくれたんだけど、死亡フラグっぽいなと思ってしまった。そんなこと何が何でも阻止してやるけど。
「じゃあ、出発するぞ」
〈待て。セナ、ニヴェスを呼べ。あやつも我らと同じハズだ。心配なら村に着いたときに影に入れればいい〉
グレンに言われてニヴェスを呼んで説明すると『もちろんですン』と足元にスリスリと体を擦り付けてくれた。
ガルドさんはニヴェスを呼んだことにも驚いていたけど、馬車を引いてもらうためにちっちゃいサイズからノーマルサイズになってもらうと、目玉が飛び出そうなくらい目を見開いた。
「おい。説明してくれるんだろうな?」
「従魔のニヴェスだよ。大きさ変えられるの。ね?」
『はいっ!』
私の頭をガッシリと掴んで、有無を言わさぬ笑顔で聞いてきたガルドさんに、ニヴェスを紹介するとニヴェスは元気良く返事をしてくれた。
「そういうことじゃねぇ……」
〈フッ。これくらいで驚いてたら身が持たんぞ。セナ、でかい方を出せ〉
「わかったー」
大きい方の馬車を出すと、ガルドさんは口をあんぐりと開けてちょっとフリーズした後、またもやため息を付いた。
会ってからため息をつかれてばっかりだ。
馬車に乗り込み、ニヴェスに急ぎめで走ってもらう。ニヴェスの速さなら今日中に着くでしょう。
今日はジルも私達と一緒に中にいるため、御者席には誰もいない。
「聞いてもいいか?」
「ん? なーに?」
「なんでグレンは呼び捨てなのにジルベルトは様付けなんだ?」
「僕はセナ様に救っていただいたのです」
「どういうことだ?」
ギルドで話が中途半端で終わっていたことを思い出して、ジルとの出会いをかいつまんで話す。
「国王に謁見……しかも命狙われたのかよ……」
「僕はあのとき生まれ変われました。新しい名前もいただき、セナ様に忠誠を誓ったのです」
ジルがうっとりと語る姿にガルドさんの顔が引きつっていた。
この先もジルの信者発言がありそうなので、ガルドさんにこっそりと「なぜか洗脳状態なんだよね」と説明しておく。
「そうか……セナはもう一人じゃないんだな……」
「うん! みんな大事な家族だよ! ガルドさんはお兄ちゃん!」
「……俺もか?」
「もちろん! モルトさんとコルトさんもお兄ちゃん!」
「……ジュードは?」
「ジュードさんはお母さん!」
「クククッ。そうか。あいつらに聞かせてやりてぇな」
ガルドさんは私の頭を撫でながら泣きそうな顔で笑った。最悪の場合を考えちゃってるのかもしれない。
私は足掻くつもりだけど、最後の手段も考えている。元日本人なら思いつくだろうあのことを。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。