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9章
ヒュノス村
お昼ご飯を食べていなかった私達は〈動く前に腹ごしらえだ〉とのグレンの言葉で、遅いランチを食べた。馬車の中なので片手で食べられるサンドイッチ。
遠慮しているのか、ガルドさんは五つだけしか食べなかった。
食べながら村の様子や村人の様子、ジュードさん達のことを細かく聞いていく。
村の名前はヒュノス村。自給自足のよくある田舎村。
村人は皆優しく、おおらか。
村人は薬草やポーションを眠ったままの人になんとか食べさせたけど、症状が変わらなかったらしい。
眠ったまま起きないけど、口にポーションを流し込むと飲み込みはする。
どんどんやつれていき、最後は亡くなってしまうらしい。ポーションを飲ませて、なんとか生きながらえてるみたい。
「村人は村を出ようとしないの?」
「してなかったな。俺も聞いたが、村を捨てることはできないと言われた」
「うーん……村人が出ないから話が広がらなかったのかな?」
「どうだろうな……街の人間に聞いても村そのものを知らねぇ感じだった」
村の存在が知られていないなんてそんなことあるの?
聞いてみると〈さっき爺が言っていたように、村人が村から出ないならありえる話だ〉とグレンが教えてくれた。
村に特産や特出した技術があれば訪れる人もいるけど、ただの村なら訪れる理由がない。旧道が近くにあるけど、使われなくなって久しいと村人が教えてくれたみたい。ガルドさんはその旧道を使ったらしいんだけど、荒れていて魔物が多くて大変だったそう。
ただ、村人は旅人や商人を拒んでいるわけではなく、この一件で一度拒否したものの、コルトさんのケガを心配して親身になってくれたってことだったらしい。
前に寄ったソイヤ村より田舎っぽいな……孤立した村って感じ? ポツンと村?
〈呪いかなんかじゃないのか?〉
「やっぱそう思う?」
グレンも私と同じ考えに至ったらしい。
「村人の半数以上が呪われるなんてあるのか? それに俺達は村人じゃない」
〈村自体が呪われてたらわからないだろ〉
「俺はなんともないぞ?」
〈耐性とか他にもいろいろあるだろ〉
「村人より俺達の方が耐性はあると思うが……ジュード達も耐性は持ってる。起きている村人より弱いとは思えねぇ……」
グレンはガルドさんと普通に話していて、ジルは何か考え込んでいる。
エルミス達にも念話で聞いてみると、プルトンもウェヌスもそんな病気は知らないらしい。クラオルに頼んでガイ兄にも聞いてもらったけど、「わからない」って言われたらしい。調べてくれるそうで「何かわかったら連絡するし、連絡して欲しい」とのことだった。
パパ達神様がわからないってことは元々あった病気ではないってことだよね……
◇
『もうすぐ着きますン』
いろいろな可能性を考えて思考の海に沈んでいたら、ニヴェスの声が聞こえて我に返った。
村に着くと、辺りは夕闇に包まれていて、もうすぐ真っ暗になってしまいそう。
「早ぇな。助かった」
馬車を降りて、何かあったら絶対呼ぶことを約束してニヴェスには影に戻ってもらった。
村は特に嫌な感じはしない。空気が澱んでいる感じもない。むしろ清らかな感じがするのは気のせいだろうか?
「とりあえず村長に紹介する。俺達が世話になってる人だ。それからあいつらに会わせる」
「はーい!」
村の家々は壊れているとかはなく、しっかりしているように見える。村長宅は村の中では比較的大きな平屋だった。
村長は五十代と思われる男性。疲れている様子が見受けられた。
村長はガルドさんと一緒に現れた私達に驚いた後、リビングに案内してくれた。
ガルドさんに紹介してもらうと、村長が話し始めた。
「今は人手がなく、ロクな物をお出しできず申し訳ありません。村人は弱る一方です。お仲間の方も同じく眠ってしまい、ガルドさんには申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「いや。ここで助けてもらわなかったらコルトは危なかった……あいつらも同じ気持ちだ」
「そう言っていただけるとまだ救いがあります……」
「ねぇねぇ、あの村の真ん中にあったレリーフみたいなのって何?」
村に入ってから村長の家に来る途中にあった大きな石碑みたいなのが気になって聞いてみると、村の昔話と伝えられている話の一部を模した彫刻だと説明された。
――昔、村は創世の女神を祀っていた。村人は日々の感謝を女神に祈っていた。そんなとき、村は災害に見舞われ存亡の危機に陥ってしまった。村人が女神に救済を求めると、女神は祈りに応え近くの泉に降り立ち、村を救ってくれた――
「この話には続きがありまして……時代が移り変わった後、村は女神への信仰心が薄れてしまいます。村は女神の怒りに触れ、村に呪いが襲いかかります。そんなときフラリとやってきた旅人が村を助けてくれた……と、言われております。ですので、女神への信仰を忘れてはならず、旅人を大切にしなさいと、村には伝わっているのです」
「へぇ~。そうなんだ」
たぶん女神ってイグ姐じゃなくてパナーテル様だよね? 主神だし。
呪いとか撒いちゃうの? 私のパナーテル様のイメージってかまってちゃんではあるけど、そんなことするイメージはなかったんだけどなぁ……かまって欲しくて病気撒いたら“女神の怒り”って言われた感じかな?
「私達もお世話になりたいんだけどいい?」
「このような状態ですので、オススメは致しません……どうしてもと仰るのであれば、ガルドさんのお知り合いとのことですので滞在するのは構いません。ですが……責任は取れません」
「それはもちろん。ありがとうございます」
村長の家はガルドさん達でいっぱいとのことで、私達は村長宅の横に馬車を出して休むことになった。
ガルドさんが村長に買ってきた食材やポーションを渡していたので、私達からもお世話になるからと買った食材を渡しておいた。
村長は村人に食材を配りに行き、私達はようやくジュードさん達が眠っている部屋へガルドさんに案内してもらった。
「ただいま。戻ったぞ」
「ジュードさん……モルトさん……コルトさん……」
「聞いてくれ。やっとあいつに会えたんだ。お前達にも会いたいつーから連れてきた。いい加減、目、覚ましてもいいんだぞ」
聞いていた通りジュードさん達は眠っていた。ただ、頬はコケていて、かろうじて胸が上下しているから生きているのがわかるくらい衰弱していた。特に一番長く臥せっているコルトさんは呼吸も浅い。
変わり果てた姿にかける言葉は見つからず、涙だけが私の頬を伝っていく。
震える手で眠るモルトさんの手を握ってみたけど、握り返してはもらえなかった。
呪淵の森で一緒に過ごした数日間が頭の中を駆け巡る。
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