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9章
思わぬ展開
どれくらいそうしていただろうか。ふとあることを思いついた。
ガルドさんにひと言告げてから私は村長宅を出た。グレンとジルはジュードさん達に付いてもらっている。
村長宅の横にの空き地にいつも使っている馬車を出し、そこからコテージへ。
『ねぇ、主様?』
「なーに?」
錬金部屋に入って道具をセットしているとクラオルに話しかけられた。
『ポーションいっぱい作ってなかった?』
「うん。普通のはね」
『それ使うつもりなの?』
「うん。パパ達は怒るかもしれないけど、一番見込みがあると思うの」
私が取り出したチートなリンゴを見たクラオルに確認された。
ジュードさん達を鑑定させてもらったけど、呪いではなく“衰弱”となっていた。ケガじゃないけど、疲れも取れるこのリンゴなら治せるんじゃないかと思った。
液体なら飲み込んでくれるとガルドさんは言っていた。だったらポーションと混ぜればいい。
精霊の子が作ってくれていたミキサーにリンゴを入れてすりおろし、ポーションの材料の中に入れる。みんなが治りますように。元気になりますように。また笑ってくれますように……たくさんの願いを込めて魔力を流したら出来上がり。
作ったポーションを確認すると、【セナ特製特殊ポーション】となっていた。どんなケガでも立ちどころに治し、元気ハツラツ。製作者である私の祈りが込められているらしい。
「できた! 早速飲ませよう!」
意気揚々とジュードさん達の部屋に戻った。
私達が部屋に戻るとガルドさんは村長に呼ばれたと部屋を出ていった。
「チャンス! グレン、ジル、協力して!」
二人に協力してもらって三人に特製ポーションを飲ませていく。衰弱しているため、飲み込む力が弱い三人に根気よくポーションを飲ませ、ヒールをかける。
タイミング良くガルドさんがグレンを呼びにきた。夜ご飯のスープを運ぶのを手伝って欲しいらしい。グレンを指名した理由は大きいからだそう。
残ったジルと一緒にジュードさん達を見守っていると、だんだんと顔色も良くなり、コケていた頬も戻っていく。
でも、目が覚める気配がない。名前を呼んでも、体を揺すっても起きてくれなかった。
どんなケガでも治ると書いてあったから、ケガじゃなくて病気の一種なのかもしれない。
それでもリンゴで起きないなんて……今まで疲れも気力も寝不足もなんでも治ってたのに……
「チートなリンゴでもダメなの? チートなリンゴなら大丈夫だと思ったのに……」
「飯持ってきた。開けてくれ」
「はーい……」
「こいつらにもポーションを……!?」
ドアを開けると入ってきたガルドさんは、スープ皿を両手に持ったまま虚をつかれたように固まってしまった。
「今の私の精一杯。でも起きてくれなかった……」
期待を寄せていただけに落胆が隠せないまま言うと、ガルドさんは「いつものあいつらに戻ってる」と声を震わせた。
ガルドさんはテーブルにスープを置いて、ぺたぺたとジュードさんを触って確認した。
「良かった……これでまだ希望が…………」
「「「!」」」
ガルドさんの体が傾き、倒れるところだったのをグレンがギリギリで受け止めた。
ガルドさんは床にぶつからなかったけど、グレンが持っていたスープ皿が床に大きなシミを作ってしまった。
〈すまん。咄嗟に投げ捨てた〉
「そんなことよりガルドさんは!?」
〈眠っている〉
「まさか……」
〈疲れとこいつらが戻ったことの安心感で眠ったことも考えられるが……おそらくこいつらと同じだろうな〉
「そんな……」
ショックが大きすぎる。
血の気が引いてフラついた私をジルが支えてくれた。
ジルは私を部屋のイスに座らせ、スープのお片付け。食器は木製だったから割れていない。
グレンは空いていたベッドにガルドさんを寝かせ、ペチペチと叩いて起きないか確認した。
「なんで……」
〈フム。やはり起きないな〉
「セナ様、お気を確かに」
目の前でガルドさんが倒れたショックで頭が混乱してくる。
さっきまでは普通だったのに……なんで……なんで? なんで!?
〈セナ、落ち着け。深呼吸しろ〉
呼吸が浅く早くなっていた私の頭を撫でながらグレンに言われて深呼吸した。
ジルは私が流す涙を拭ってくれている。
(そうだ。こういうときそこ落ち着かなければ。私がなんとかせずに誰がガルドさん達を助けてくれると言うのか! 中身三十路で良かった。マジな子供だったら絶えられないと思う。私も精神ギリギリだけど……)
「ふーっ、ふーっ。大丈夫。ごめん」
「謝らないで下さい」
〈我らがいる。一人で抱え込むな〉
「ありがとう……」
心強い二人にお礼を伝えてから再び深呼吸して気合いを入れた。
とりあえず村長に報告にいくと、村長は肩を落とした。
「ガルドさんまで……やはり村を出ていってもらえば良かったのか……しかし仲間を見捨てろなどとは言えなかった……あぁ……俺はどうすれば良かったのか……」
「村長さん。村長さーん!」
「はっ! 申し訳ありません。ガルドさんもこうなってしまった以上、あなた方も危険です。ガルドさんの大切な方だとお聞きしております。せめてあなた方は……」
「ストーップ!」
村を出ていけと言われる前に止めさせてもらった。
村長も混乱しているので、ジルに紅茶を淹れてもらう。私主観だけど、ジルが淹れてくれた紅茶が一番ホッとする。
「私はガルドさん達が目覚めるまで村を出ていくつもりはないの。何がなんでもね。食材や道具の心配なら私がなんとかする」
「ガルドさんに頼まれたのです。もし自分が倒れたら、セナさん達に村を出るように言ってくれと」
「それは無理だよ。私、ガルドさん達にずっと会いたかったんだもん。それよりどうやって助けるかを考えようよ」
「先程も話しましたが、いろいろな薬草やポーションも試したのです。でも目覚めてはくれませんでした。試せるものは試したのです……」
「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
泣きそうな顔で語っていた村長は、おずおずと手を上げたジルに「なんでしょう?」と聞き返した。
「この村は伝承で女神の怒りに触れたのですよね? 今回の件はなぜ呪いではないとわかったのでしょうか?」
そう言われるとそうだ。私とグレンは話を聞いたときに真っ先に呪いを疑った。鑑定して違うことがわかったんだけど……伝承がある村なんだから伝承と結びつけてもおかしくないと思う。
「それは簡単です。村人は女神への祈りを欠かしてはおりません。村にはポーションを作れるヘルバ婆がいるのです。ヘルバ婆は鑑定のスキルを持っています。薬草の知識もありますのでかき集め、ないものは採取しにいき、全て試したのです。しかし、効果はありませんでした」
「「なるほど……」」
「そのヘルバ婆も倒れてしまい、衰弱しております。歳も歳ですので長くはもたないでしょう……」
起きてたらいろいろ聞けたんだけどな……
もう既に何人も亡くなっていて、起きている村人も次は自分が眠ってしまうかもしれないと、疲れていても眠りたくないらしい。村長さんは「無理なのでしょうか……」なんて打つ手がないと諦めモードだ。
ガルドさん達も助けてくれた村人が亡くなってしまったらショックを受けることは間違いない。
「とりあえず、眠っている人の衰弱を治さないとだね。延命してその間に解決方法を探そう」
「そんなことができるのですか?」
「やってみなきゃ。私は諦めが悪いんだよ」
私達はチートなリンゴポーションを飲ませたジュードさん達が起きるかもしれないと、彼らが眠っている部屋に戻った。
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