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9章
悪いことは重なるもの
ジュードさん達は先ほどと変わらず眠っている。
鑑定すると“衰弱”ではなく“睡眠”に変わっていた。
睡眠なら目が覚めてくれてもいいのになんで目が覚めないんだろうか……
「ガルドさんにもリンゴポーション飲ませなきゃ」
〈セナ、スープ冷めてる〉
「あぁー、スープのこと忘れてた。食べたかったら食べちゃっていいよ」
〈ふむ。なら飲んでやる〉
グレンはスープをゴクゴクと飲んでいく。その間に私とジルはガルドさんにリンゴポーションを飲ませた。
〈肉が入っていない〉と文句を言うグレンに、作り置きしていた牛丼を「ジルと一緒に食べてね」と鍋ごと渡した。
「セナ様がお食べにならないのでしたら、僕もいりません」
『そうよ。主様が倒れたらどうするの!』
クラオルにペシペシ叩きながら抗議されたので、私も簡単に食べることにした。食欲があまりないため、私はおにぎりとお味噌汁。
〈腹いっぱいまで食べると眠くなってくるな〉
「疲れちゃった? 大丈夫? コテージいってる?」
〈うむ。大丈夫だ。これから作業するんだろ?〉
『もう遅い時間なんだから主様も無理はダメよ?』
「うん。心配してくれてありがとう」
グレンとジルがジュードさん達を見ていてくれると言うので、私はコテージの作業部屋へ。
リンゴポーションを大量に作ったら、起きている村人用にもキッチンでスープを作った。スープの隠し味にはもちろんチートなリンゴを使った。
「お待たせー」
「ガルド様の顔色は良くなりましたが、変わりありません」
〈ふわぁ……終わったのか?〉
「うん。村長に渡してくるからちょっと待ってて」
〈ジルベルトも行け。我が見ててやる〉
ガルドさん達をグレンに任せて、私とジルは村長の部屋に向かった。
結構遅い時間だったけど、村長は起きていた。
村長は半信半疑のまま、私が渡したリンゴポーションを持って隣の部屋へ入っていった。
付いていくと、その部屋には女性と子供が二人眠っていた。
村長は子供から順番に飲ませていく。
「嫁と子供です。ポーションありがとうございます」
(家族が眠り病だったのか……)
「よく見てあげて」
「え? …………えぇーー!?」
痛々しい姿をあまり見たくないのか、ポーションを飲ませ終わると奥さんと子供から目を逸らした村長に声をかける。
村長はコケていた頬が戻っていく姿を見て、口をパクパクさせて言葉を失ってしまった。
ペタペタと触ると実感してきたのか泣き始めてしまった。
私とジルは目を合わせて頷き合い、その場を離れた。
隣りの部屋のソファで待っていると、村長はズビズビと鼻を鳴らしながら戻ってきた。
「ありがとうございます。セナさんが仰っていた延命と言うのは本当だったのですね……」
「なくなりかけてた体力が戻っただけだよ」
「それでも……それでも、嬉しいのです……村の長としては失格でしょうが、自分の家族ですので……」
「村人分もあるからそこは安心して」
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
「起きている人も元気にならなきゃだから、スープも作ったの。だから村長に配って欲しいんだ」
「ありがとうございます。本日はもう遅い時間ですので、明日早朝に村人を集めます」
涙を溢れさせながらお礼を言い続ける村長に、スープとポーションを渡して私達はガルドさん達の部屋に戻った。
うつらうつらと船を漕いでいたグレンを起こして、私達は外の馬車へ。
ガルドさん達はエルミスが見てくれている。
「グレン大丈夫?」
〈大丈夫だ。明日はどうするんだ?〉
「起きている人と眠ったまま起きない人との違いを探そうと思って。昔の伝承も気になるからお城に行こうかと思ってるよ。書庫に古い書物があるって言ってたから」
〈ふむ。なら我も行く。アーロンがまたセナを利用しそうだからな〉
中敷きの件は自分が発端だから受けたけど、さすがにただ利用されるのは私も拒否るのに……
お礼を言うと、私の頭を撫でた後あくびをしながら自分の部屋へ歩いていった。
「ジルもちゃんと休んでね」
「セナ様もです。おやすみなさいませ」
「おやすみー」
グレンが眠気からフラフラだったけど、私も結構眠い。夜中はとうにすぎている。
自分の寝室のベッドにボフンと横になると、すぐに眠気が倍増して何も考える間もなく眠りに落ちた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クラオルがいつも通りに起こしてくれたけど、眠すぎる。
寝不足状態の私はプルトンからの衝撃の一言で眠気が吹っ飛んだ。
「グレンが起きないってどういうこと!?」
《そのままよ! さっき起こしたんだけど、起きないの!》
「セナ様、いかが致しました?」
「ジル! 良かった。ジルは大丈夫?」
部屋に飛び込んできたジルに、抱きつくように確認すると「少々寝不足ですが」と答えてくれた。
前のジルなら大丈夫としか言わなかったと思う。ちゃんと伝えてくれるようになっておばちゃんは嬉しいよ……じゃない!
「グレンが起きないって」
「え!?」
驚くジルを引っ張ってバタバタとグレンの部屋に入ると、確かにグレンは眠っていた。
名前を呼んでも、揺すっても、飛びつくように上に乗っかっても起きてくれない。
「まさか……」
『ガルド達と一緒ね……』
「昨日眠いって言ってたけど……でも……」
グレンはドラゴンだし、耐性も他の人より持っている。だから大丈夫だと思っていた。
ガルドさんが倒れたときは何がなんだかわからなかった。グレンは強い。ちょっとした攻撃なんか効かない。むしろ私がこの件でケガとかして、グレンの怒りを鎮める側だと思っていた。なのに……
完全に私が過信して放置してしまったせい。眠いって言っていたときなら何か打開策があったかもしれない。
「グレン……グレン。ヤダ……起きてよ……今日一緒にお城行ってくれるって言ってたじゃん……ねぇ、ねぇってば!」
『主様……』
「セナ様っ!」
ポカスカとグレンを叩いていた私をジルが抱き寄せてくれた。
自分の安易な選択、しでかしてしまった事の重大さ、仲間を失うことの覚悟の足りなさ……自分ならなんとかできるんじゃないかと驕った考え方をしていた過去の自分を殺してやりたい。
ジルはすがり付きながらわんわんと泣く私をずっと慰めてくれていた。
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