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9章
打ち砕かれた希望
泣き続けた私は気が付くと自室のベッドの上だった。
『起きたのね』
『主っ!』
「クラオル、グレウス。私……」
『主様泣き疲れて眠っちゃったのよ。それでジルベルトがここまで運んだの』
「そっか……グレンは?」
私の質問にクラオルは首を振った。
『主様まで目が覚めなかったらどうしようかと思っちゃったわよ』
「ごめんね。ジルは?」
『ジルベルトは村長にグレンのことを報告に行ったわ。言っておくけど、ワタシ達は影に入らないわよ』
「う……」
『主様のことだから自分責めてるんでしょ? グレンが眠ったまま起きないなんて誰も予想してなかったもの。ワタシ達はなんと言われても主様と一緒にいたいの』
「起きれなくなるかもしれないんだよ?」
『もしワタシ達が起きれなくなったら主様がなんとかしてくれるんでしょ?』
「そりゃ、なんとかするつもりだけど……」
『だからいいのよ! 一緒にいられない方が嫌だわ!』
《そうよ~。私達の覚悟をなめちゃダメ》
プルトンはそう言ってパチンとウインクをキメた。グレウスもポラルも同じ気持ちらしい。
(なんでみんなこんなに優しいの? みんなのこと振り回してるのに……)
『んもう、主様ったら。また泣いて。おめめが腫れちゃうじゃない』
「戻り……セナ様!? どこか痛むのですか!?」
クラオル達に慰められていると、ちょうどジルが帰ってきた。オロオロと心配してくれるジルにギュウっと抱きついた。
「ジル。ありがとう……」
「いえ……セナ様の幸せが一番ですので」
「ふふっ。じゃあジルにも幸せになってもらわないとね!」
「セナ様……」
もう一度ギュッと抱きしめて気合いを入れた。
メソメソしている場合じゃない。私は足掻くって決めたんだから!
「村長に報告してくれたんだよね?」
「はい。村人はセナ様のポーションと料理で回復したようですね。ただ、眠り人は目を覚ましていないとのことです。セナ様に感謝を述べておりました。グレン様のことは申し訳ないと……」
「自己責任って話をしてたから責めるつもりは一切ない。グレンやガルドさん達のためにも解決しなきゃだしね!」
ガルドさん達を見ていてくれているエルミスに様子を聞いてみると、何も変わりはないらしい。
ひとまずグレンの様子を見ようとグレンの部屋へ向かう。
グレンは朝と見たときと変わらない。鑑定をかけても状態は“睡眠”だった。
ただ、初めてグレンのステータス見たけど……レベルがまさかの400オーバーだった。耐性もほとんど揃ってる。やっぱりこの“眠り病”には強さは関係なさそうだ。
コテージのドアはしまっても大丈夫だと前にパパ達が言っていた。ドアをしまって私達が馬車を降りると、昨日は見かけなかった村人が歩いていた。リンゴコンソメスープは効果があったらしく、不健康には見えなかった。
村長宅をノックすると中からバタバタと走る音が聞こえて、息を切らした村長が現れた。
「セナさん! スープとポーションありがとうございます! 住民が皆元気になりました!」
「それは良かった」
「しかしグレンさんが……大変申し訳ありません」
「村長のせいじゃないよ。解決方法一緒に探そう!」
「ありがとうございます……」
「とりあえず、ガルドさん達の様子を見たいから中に入れてもらってもいい?」
「はっ! すみません! もちろんです。どうぞ」
村長宅に入れてもらって、ガルドさん達が眠っている部屋でコテージへのドアを出した。これならここからグレンの様子も見に行ける。ドアは閉めておけば私が許可した人にしか見えないから、村長が入ってきても大丈夫。
「さて、作戦会議だよ。グレンが眠り病になったことが鍵だと思うの」
『主様、その前に朝ご飯食べてちょうだい』
「ご飯……そうだよ! グレンだけ村長からもらったスープ飲んだじゃん!」
《でも、村長怪しい感じはしないわよ?》
『あーるーじさまー?』
「ゔ! わかった! わかったから! ちゃんと食べるから叩かないで!」
ベシベシとクラオルに叩かれて降参。最近クラオルの叩く力が強くなってる気がする……それでも、物理耐性のおかげで痛くはないんだけどね。
食べながら考えようと、テリヤキバーガーにした。もうすぐお昼だし、ブランチにはちょうどいい。
プルトンが言っていた通り、村長がそんなことをしたとは思えない。それにグレンは私が作った物以外には必ず鑑定をかけてから食べる。
グレンにバレないように何かを入れることは難しいと思う。
「ヤバかったら最後の手段としてパパ達に頼もうと思ってたんだけど……頼めないかな?」
『それはワタシが聞いたわ。グレンが起きなくなるなんて異常事態だもの。でもね……神達も原因がわからないと手出しできないらしいの』
「そんな……」
『このまま助けたら、歳を取らなかったり寿命がおかしくなったりするそうよ』
「マジか……」
日本人お得意の最後の手段である“神頼み”が打ち砕かれた。
パパ達ならなんとかできるだろうと思って楽観視してたのがいけなかったのかな……
(他力本願はダメってことだね。そうだよね……なんで最初に考えなかったんだろう……私が頼んだからって助けてもらえるとは限らない)
『でも、原因がわかったら手を出せるって。神達もこんな病気は知らないから、何か原因があるハズだって。あと、主様の看破を少しいじったそうよ』
「ホント!? 良かった……看破って鑑定の?」
『そう。今までより詳しく視ることができるって言ってたわ』
「なるほど。でもさっきグレン鑑定したけど〝睡眠〟だったよ?」
『よく見てって言ってたわ』
「わかった。もう一回見てみる」
パパ達が言っていたなら、何か変化が起きるのかもしれない。
(なるべく自分達……いや。自分でやらないとね。ガルドさん達も私を探してくれていたせい。グレンも私がスープ飲んでいいって言ったせい。全部私のせい……)
足掻いて足掻いて、それでもダメだったらお願いしよう。私の命と交換になったとしても。私の命くらいじゃ足りないかもしれないけど……
「よし! 食べ終わった! 早速鑑定してみよう!」
ジルが淹れてくれた紅茶をグイッと飲み干して、出したお皿を片付けた。
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