文字の大きさ
大
中
小
170 / 500
9章
井戸と抵抗
気合いを入れて鑑定したのに、ガルドさん達の鑑定結果は文字化けだった。
“睡眠”とかかれた【状態】を注視するとモヤモヤと文字が変化して完全に文字化け状態になってしまった。
「文字化け……とりあえず本来は違うことがわかっただけマシと言えるのか……」
「セナ様、グレン様はどうでしょう?」
ジルに言われてコテージのグレンの部屋へ。
「んん? なんとかの抵抗? 抵抗って何? 意味わかんない。肝心なところが文字化けしてるし……」
「抵抗……ですか?」
「うん。そう書いてあるよ」
抵抗なんて体の免疫細胞の抵抗とかしか思い浮かばない。“白血球の抵抗”とか“善玉菌の抵抗”とか?
みんなもわからないみたいでしきりに首を捻っている。
「なんでガルドさん達では見えなかったのに、グレンのは見えるんだろ?」
『たぶんだけど、グレンが主様の従魔だからだと思うわ』
「関係あるの?」
『ワタシ達は主様と繋がってるのよ。繋がってる分読みやすいんだと思うわ』
「あの……セナ様?」
クラオルの言葉がわからないジルに説明すると「なるほど」と頷いた。
「結局、原因はわからないね。グレンと私達の違う行動はスープ飲んだか飲んでないか……でもガルドさんと私達が買ってきた食材だよね?」
「この村のものが混じっていたのかもしれません」
「それもそうか……村長に確認しないとだね」
村長に確認しにいくと、昨日なスープには村のものは使われていなかった。
倉庫に置いてある村の食材も、私達が渡した食材も鑑定させてもらったけど、特に異常は見受けられない。
「あの……グレンさんが起きられないのは昨夜のスープのせいだと?」
「それはわかんないの。ただグレンと私達の違いは食べたか食べてないか。私達がこの村の人が原因かもって思いたくないから、可能性を潰したいんだよ」
「昨夜のスープを作ったのは私ですが、そのようなことはしておりません! 自分の嫁も子供も眠ったままなのです! 誰が家族にそんなことをしたいと思うのですか!」
村長は疑われたと憤り、声を荒らげた。
村長に「だから調べるの」と言うと「はい?」と意味がわからないという顔をされた。
「もしかしたら、知らず知らずのうちに何かが混ざってる可能性もあるでしょ? 故意じゃなくて、偶然。それがわかればこれ以上被害が出なくて済むし、起こせるかもしれない」
「……」
「村長も奥さんと子供起きて欲しいでしょ? 私もグレンとガルドさん達に起きて欲しいんだよ」
「……わかりました。協力します。徹底的に調べてください! 食べ物が原因だなんて……」
「まだ決まったワケじゃないよ!」
先走って決めつけたっぽい村長に、あくまで可能性だと説明した。
「食材は大丈夫そうだね」
「セナ様、飲み水を調べておりません。((飲み水に毒を仕込めば手を汚さずとも葬れます))」
「そ、そうだね。調べなきゃ」
後半を念話で伝えてきたジルの物騒な発言に、上手く表情が作れなかった。
そんな私に村長は気が付かずに井戸まで案内してくれた。
この村はこの一つの井戸から水を汲んで全ての生活用水にしているらしい。
「ん? んん?」
「セナ様、どうか致しましたか?」
《((主よ、この水は何かの魔力が混ざっているぞ))》
「((でも悪いモノじゃないと思うんだけど……))」
村全体の空気感と同じでどっちかというと良さそうなモノだと思う。それも確証がないから断言できない。
鑑定してみたけど、“井戸の水”としかでてこなかった。
一応、【浄化】をしてみたけど変わらなかったから、たぶん大元の水源がおかしいんだろう。
心配そうに私を窺っているジルと村長に、井戸の水に何かの魔力が混ざっていることを伝えると村長から血の気が引いた。
村人は全員この井戸を使っていて、井戸がダメだと水が手に入らないらしい。
「悪いモノじゃないと思うんだけど……何なのかがわからないから飲まない方がいいかな?」
「飢え死にしてしまいます……」
「それは私がなんとかするよ。どのみち食材も私が用意しなきゃだし。村長には村人からの反感覚悟で手伝ってもらいたいんだけどいい?」
「村人が助かる可能性があるのならば、協力します」
試飲してみたかったんだけど、みんなに止められちゃった。グレンが起きない以上、私も危ないもんね。
井戸の水をどこから引いてるのか聞いてみたけど、村長は知らないらしい。
過去一度も枯れたことがないそうで、「そんなこと考えたこともありませんでした」と言われてしまった。
◇
みんなが眠っている部屋に戻って、プルトンに部屋全体に結界を張ってもらい、一応部屋の空気を【浄化】しておいた。
コテージでお守りを作ってジルに渡し、寝ているグレンにも勝手に付けさせてもらった。もちろん、ガルドさん達にも作っておいたネックレスを装着しておいた。
飲み水用の水も樽に水魔法で確保。
「さて、井戸の水がどこからきてるのかと、伝承について調べないとだよね。グレンとガルドさん達の様子も見たいしどうしよう……」
「グレン様達のことなら僕も見れますので、セナ様はお城に向かってください」
「でも、そうなるとジルが危ないよ」
《うふふ。もう、セナちゃんったら。私達がいるじゃない!》
《水なら儂が追える。たまには儂らを頼って欲しいもんだ》
いつも頼りっぱなしなんだけど……
本当にいいのか何回も確認すると、プルトンにしつこいと言われてしまった。
《儂らは残ろう。その代わりにウェヌスを呼んでくれ。ウェヌスなら主の護衛もできる》
「わかった」
心配性なエルミスに言われてウェヌスを呼んで説明すると、精霊の子達も情報を集めてくれることになった。
本当は危険な目に遭わせたくなかったんだけど、ウェヌスに《では、納得した子らだけに働いてもらいましょう》と言われてしまい、私には論破できる言葉が見つからなかった。
「じゃあ、私はお城で伝承のこと調べてくるね」
「かしこまりました」
「ジルはグレンとガルドさん達、プルトンは結界の維持、エルミスは水の確保と……あの井戸がどこから水を引いてるのかを調べてもらうってことで大丈夫?」
「はい」
《任せて!》
《御意》
「村のこと丸投げしちゃってごめんね。夜までには戻ってくるつもりだけど、何かほんの少しでもおかしいと思ったら念話して。すぐに戻ってくるから」
念のため、村人用のご飯の食材をジルに渡して、私は隠密マントを羽織った。
目指すはアーロンさんがいるお城。集中して転移を繰り返す。
『主様、大丈夫?』
「ふぅ。大丈夫だよ。ニヴェスがかなり飛ばしてくれてたことを痛感中」
作っておいたマジックポーションを飲みつつ転移をしてるけど、もっと効能のいいマジックポーションが欲しい。
ポーションの飲みすぎでおなかがタプタプ。
調べる時間が少しでも欲しいから、王都に入る門の列には並びたくない。パパ達が前に言っていた魔力を辿って転移できることを思い出して、アーロンさんの魔力目指して最後の転移を行使した。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。