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9章
井戸と抵抗
気合いを入れて鑑定したのに、ガルドさん達の鑑定結果は文字化けだった。
“睡眠”とかかれた【状態】を注視するとモヤモヤと文字が変化して完全に文字化け状態になってしまった。
「文字化け……とりあえず本来は違うことがわかっただけマシと言えるのか……」
「セナ様、グレン様はどうでしょう?」
ジルに言われてコテージのグレンの部屋へ。
「んん? なんとかの抵抗? 抵抗って何? 意味わかんない。肝心なところが文字化けしてるし……」
「抵抗……ですか?」
「うん。そう書いてあるよ」
抵抗なんて体の免疫細胞の抵抗とかしか思い浮かばない。“白血球の抵抗”とか“善玉菌の抵抗”とか?
みんなもわからないみたいでしきりに首を捻っている。
「なんでガルドさん達では見えなかったのに、グレンのは見えるんだろ?」
『たぶんだけど、グレンが主様の従魔だからだと思うわ』
「関係あるの?」
『ワタシ達は主様と繋がってるのよ。繋がってる分読みやすいんだと思うわ』
「あの……セナ様?」
クラオルの言葉がわからないジルに説明すると「なるほど」と頷いた。
「結局、原因はわからないね。グレンと私達の違う行動はスープ飲んだか飲んでないか……でもガルドさんと私達が買ってきた食材だよね?」
「この村のものが混じっていたのかもしれません」
「それもそうか……村長に確認しないとだね」
村長に確認しにいくと、昨日なスープには村のものは使われていなかった。
倉庫に置いてある村の食材も、私達が渡した食材も鑑定させてもらったけど、特に異常は見受けられない。
「あの……グレンさんが起きられないのは昨夜のスープのせいだと?」
「それはわかんないの。ただグレンと私達の違いは食べたか食べてないか。私達がこの村の人が原因かもって思いたくないから、可能性を潰したいんだよ」
「昨夜のスープを作ったのは私ですが、そのようなことはしておりません! 自分の嫁も子供も眠ったままなのです! 誰が家族にそんなことをしたいと思うのですか!」
村長は疑われたと憤り、声を荒らげた。
村長に「だから調べるの」と言うと「はい?」と意味がわからないという顔をされた。
「もしかしたら、知らず知らずのうちに何かが混ざってる可能性もあるでしょ? 故意じゃなくて、偶然。それがわかればこれ以上被害が出なくて済むし、起こせるかもしれない」
「……」
「村長も奥さんと子供起きて欲しいでしょ? 私もグレンとガルドさん達に起きて欲しいんだよ」
「……わかりました。協力します。徹底的に調べてください! 食べ物が原因だなんて……」
「まだ決まったワケじゃないよ!」
先走って決めつけたっぽい村長に、あくまで可能性だと説明した。
「食材は大丈夫そうだね」
「セナ様、飲み水を調べておりません。((飲み水に毒を仕込めば手を汚さずとも葬れます))」
「そ、そうだね。調べなきゃ」
後半を念話で伝えてきたジルの物騒な発言に、上手く表情が作れなかった。
そんな私に村長は気が付かずに井戸まで案内してくれた。
この村はこの一つの井戸から水を汲んで全ての生活用水にしているらしい。
「ん? んん?」
「セナ様、どうか致しましたか?」
《((主よ、この水は何かの魔力が混ざっているぞ))》
「((でも悪いモノじゃないと思うんだけど……))」
村全体の空気感と同じでどっちかというと良さそうなモノだと思う。それも確証がないから断言できない。
鑑定してみたけど、“井戸の水”としかでてこなかった。
一応、【浄化】をしてみたけど変わらなかったから、たぶん大元の水源がおかしいんだろう。
心配そうに私を窺っているジルと村長に、井戸の水に何かの魔力が混ざっていることを伝えると村長から血の気が引いた。
村人は全員この井戸を使っていて、井戸がダメだと水が手に入らないらしい。
「悪いモノじゃないと思うんだけど……何なのかがわからないから飲まない方がいいかな?」
「飢え死にしてしまいます……」
「それは私がなんとかするよ。どのみち食材も私が用意しなきゃだし。村長には村人からの反感覚悟で手伝ってもらいたいんだけどいい?」
「村人が助かる可能性があるのならば、協力します」
試飲してみたかったんだけど、みんなに止められちゃった。グレンが起きない以上、私も危ないもんね。
井戸の水をどこから引いてるのか聞いてみたけど、村長は知らないらしい。
過去一度も枯れたことがないそうで、「そんなこと考えたこともありませんでした」と言われてしまった。
◇
みんなが眠っている部屋に戻って、プルトンに部屋全体に結界を張ってもらい、一応部屋の空気を【浄化】しておいた。
コテージでお守りを作ってジルに渡し、寝ているグレンにも勝手に付けさせてもらった。もちろん、ガルドさん達にも作っておいたネックレスを装着しておいた。
飲み水用の水も樽に水魔法で確保。
「さて、井戸の水がどこからきてるのかと、伝承について調べないとだよね。グレンとガルドさん達の様子も見たいしどうしよう……」
「グレン様達のことなら僕も見れますので、セナ様はお城に向かってください」
「でも、そうなるとジルが危ないよ」
《うふふ。もう、セナちゃんったら。私達がいるじゃない!》
《水なら儂が追える。たまには儂らを頼って欲しいもんだ》
いつも頼りっぱなしなんだけど……
本当にいいのか何回も確認すると、プルトンにしつこいと言われてしまった。
《儂らは残ろう。その代わりにウェヌスを呼んでくれ。ウェヌスなら主の護衛もできる》
「わかった」
心配性なエルミスに言われてウェヌスを呼んで説明すると、精霊の子達も情報を集めてくれることになった。
本当は危険な目に遭わせたくなかったんだけど、ウェヌスに《では、納得した子らだけに働いてもらいましょう》と言われてしまい、私には論破できる言葉が見つからなかった。
「じゃあ、私はお城で伝承のこと調べてくるね」
「かしこまりました」
「ジルはグレンとガルドさん達、プルトンは結界の維持、エルミスは水の確保と……あの井戸がどこから水を引いてるのかを調べてもらうってことで大丈夫?」
「はい」
《任せて!》
《御意》
「村のこと丸投げしちゃってごめんね。夜までには戻ってくるつもりだけど、何かほんの少しでもおかしいと思ったら念話して。すぐに戻ってくるから」
念のため、村人用のご飯の食材をジルに渡して、私は隠密マントを羽織った。
目指すはアーロンさんがいるお城。集中して転移を繰り返す。
『主様、大丈夫?』
「ふぅ。大丈夫だよ。ニヴェスがかなり飛ばしてくれてたことを痛感中」
作っておいたマジックポーションを飲みつつ転移をしてるけど、もっと効能のいいマジックポーションが欲しい。
ポーションの飲みすぎでおなかがタプタプ。
調べる時間が少しでも欲しいから、王都に入る門の列には並びたくない。パパ達が前に言っていた魔力を辿って転移できることを思い出して、アーロンさんの魔力目指して最後の転移を行使した。
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