210 / 537
9章
書庫と古文書
転移先はアーロンさんの執務室だった。
執務席に座るアーロンさんとレナードさんが険しい顔で話していた。
「ねぇ」
「「!」」
被っていたフードを取ってアーロンさんに話しかけると、ザッと戦闘体勢をとられた。
「誰だ!? ってセナ!? なんでここに? ベヌグにいたんじゃないのか?」
「うん。ベヌグの街の伝承って知ってる?」
「「伝承?」」
二人は顔を見合わせて首を傾げた。
「そっか、知らないんだね。昔の記録見たいんだけどいい?」
「あ、あぁ……それは構わんが……」
「案内して欲しいの」
「昨日ギルドから報告を受けたんだが、本当か?」
「うん。本当だよ」
「……にわかには信じ難いが……セナが言うのなら本当なんだろうな……セナは大丈夫なのか?」
「たぶん大丈夫。人から人に伝染るものじゃないと思う。じゃなかったらまだ起きてる村人の説明が付かない。着いたその日にグレンが……グレンが起きなくなったの」
「「なっ!」」
「だから時間が惜しい」
「わかった。レナード、手の空いている信頼できるやつを呼べ! 書庫へはオレが案内する」
「ハッ!」
レナードさんが急いで執務室を出て行くと、アーロンさんに「付いてこい」と促された。
「調べるのを手伝わさせる」
「ありがとう」
「古代龍までとは……村はどうなってる? 眠ったままだと報告を受け、立ち入り禁止にすると言っていたが、村に行っていないから詳細はわからんと言われた」
早足で歩きながらアーロンさんに説明すると、「そんなことが起こりえるのか?」と聞かれた。そんなの私が聞きたいくらいだ。
ガルドさん達も眠ってしまった今、まともに動けるのは私達だけ。グレンは私のせいで眠ったままになっちゃったけど……
「とりあえず、誰が行ってもなりえるってことしか言えないよ……被害を増やさないためにも人を向かわせないで欲しい」
「こちらから人を遣わそうと思ってたんだが……それにセナも危険だろう」
「ここから魔馬車でも時間がかかりすぎる。その間にも被害が広がるかもしれない。それに何が原因かわからないから、人が増えてもできることがない。グレンも私がずっと会いたかったガルドさん達も眠ったままだから、傍にいたいしできることはやりたいの」
「そうか……セナにばかり苦労をかけるな……オレの国だ。協力は惜しまん。何か必要な物があれば言ってくれ」
「ありがとう」
アーロンさんは私が引かないことがわかったのか、複雑そうな顔をしながらも「あまり危険な真似はさせたくないんだがな……」と呟いた。
アーロンさんに案内されて着いた場所は、謁見の間の扉みたいに大きく重厚な扉の前だった。
中は、壁一面の本棚にビッシリと本が並んでいて、本を読む人がいないと言っていたのにホコリひとつ落ちていなかった。
「キアーロ国より大きいね……」
「建国が古いからな。ただ、どの棚になんの本があるのかはわからん」
「探すから大丈夫」
「すぐに人を寄越す。こき使って構わん。好きに使え。俺も手伝う」
「うん。ありがとう」
ひとまず急ぎの仕事を片付けてくると言うアーロンさんと別れて、私はサーチで目当ての本を探し始めた。
探すのはもちろんあの村の伝承についてと、この国の昔の出来事。あの村だけじゃなくて他にも似たような伝承があるかもしれない。
サーチで反応があった本を手に取った瞬間、バタバタと人が書庫に飛び込んできた。
「お嬢!」
「お嬢ちゃん!」
「うひゃっ! ってドナルドさんとアーノルドさん? あとダンジョンの警備してたお兄さん?」
書庫に入ってきたのは全員暗部の人達だった。
私を見つけるなり、あっという間に詰め寄られて「大丈夫なのか!?」と確認された。
あまりの素早さに思わず後退しちゃったけど、さすが暗部だと内心驚いた。
私自身は大丈夫だけど、村は大丈夫じゃないことを伝えると「あのドラゴンすらも……」とアーノルドさんが息を呑んでいた。
途中から合流したアーロンさんも一緒に探してもらっているけど、なかなかめぼしい文献が見つからない。
しかも時代が古すぎると文字が古代文字になってしまい、アーロンさん達では読み取れなかった。
それが発覚した後は古代文字エリアは私が担当、アーロンさん達は比較的新しい時代の物を担当することになった。
途中、創世の女神について書かれていた古文書を見つけたんだけど……“大変慈悲深く、どんな者でも悔い改めれば救いの手を差し伸べて下さる。ただ、少しお茶目な面もあり、イタズラがお好き”と書かれていた。
パナーテル様は私にも加護をくれたから優しいとは思うけど、廃教会の像を造ったときの肖像画事件をイタズラで済まされるのはご勘弁願いたい。
それにしても……そんな優しいって言われてるのに、祈られなくなっただけで村に呪いを撒くかね? 神様の怒りの沸点がわからん。それとも、歳取って丸くなったとか?
「うーん……謎だね」
『古代文字って変な記号みたいな文字ばっかりなのね……読めないわ』
『ボクもです……』
〔ハイ。ヨメマセン〕
《私もここまで古い文献は解読に時間がかかりそうです》
「そうなの? じゃあ、たぶん私が読めるのはパパ達がくれた全言語理解のおかげだね」
クラオル達は手持ち無沙汰みたいで、私が読み終わった本を片付けてくれた。
サーチの反応は多いものの、目当ての内容は見つからない。
結局その後はめぼしい古文書は見つからなくて、いたずらに時間だけが過ぎていき、今日は村に戻ることになった。
戻る旨を伝えると「もう日が暮れる」と全員に引き止められ、お城の客室を用意されてしまった。
「まさか一致団結されるとは……まぁ、でもこの部屋使わせてもらっちゃおう!」
部屋に結界を張って、来たとき同様に転移を繰り返して村に戻った。
「ただいま! 遅くなってごめんね」
「おかえりなさいませ」
《おかえり》
《おかえりなさ~い》
グレンもガルドさん達の様子も変化はなかった。
私の帰りが遅くなってしまったので、村人達のご飯はジル達が作って村長に配ってもらったらしい。食材渡しておいて良かった!
夜ご飯を食べ終わると、エルミスが決まり悪そうに話し始めた。
《井戸の水源を探したが、儂らはまだ見つけられていない。ただ……》
「ただ?」
《国境の山近くの森に儂でも近付けぬ場所があった》
「近付けない?」
エルミスが語ったのは――強い魔力が溢れていて近付けば近付くほど落ち着かなくなる。悪いモノではなさそうだけど、精霊は魔力に敏感なためプルトンの結界を以てしてもダメだった。もしかしたら人間には近付けるかもしれない――とのことだった。
《何回も試したんだが……すまない》
「エルミスの体は大丈夫? 何か違和感あったりしない?」
《それは大丈夫だ。近付いたときだけで離れれば何ともない》
「良かった……もぅ! 無理しないでって言ったのに」
私がプクッと頬を膨らませると、エルミスに《無理はしていない》と笑いながら頬をつんつんされた。
村に関係があるのか、全く関係ないのかはわからないけど、ソコには何か特殊なモノがあるんだと思う。
早速調べに行こうと思ったらみんなに怒られてしまい、明日行ってみることにした。
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。