213 / 534
9章
消された記憶
しおりを挟む「まず、ジ……トリスタン君が幼い頃、家の書庫からどこかに飛んだんだよね?」
「なぜそれを……」
「どうやって行って、どうやって戻ってきたの?」
「知らん」
「本当に?」
「本当だ……」
うーん……。嘘つくなって言ったし、本当に知らないのか……
「それなら質問を変えるよ。その場所に心当たりはあるんだよね? それはどこなの?」
「祖先の隠れ家だ。ワシすらも……ワシですらも行けなかったというのにっ! ワシが行けぬのに、使えんアレが祖先に選ばれたなど許せんっ! だから……」
「だから?」
「記憶を封印した」
なるほど。記憶をいじったんじゃないかと思ってはいたけど、僻みと妬みからか……
たぶんジルは先祖返りだから、何かが反応したんだろうな……っていうか、ジルって覚醒してないときも、お城の私の部屋に侵入しようとしてた諜報員を軽~く葬ってたし、充分強かったと思うんだけど……
祖先ってイグ姐が前に言ってた強いハイエルフかな?
「そんな簡単に記憶って消せるの?」
「消すのではない、封印だ。禁忌魔法だができなくはない。封印するために殺す寸前まで痛めつけたからか、魔法の代償からかアレの髪が黒くなったが」
老害に怒りをぶつけたかったけど、ウェヌスが握りしめていた私の手を取って止めた。
《お待ち下さい。セナ様のお手が汚れてしまいます》と言うウェヌスと『そうよ。神達にお仕置きしてもらいましょ』と言うクラオルも、怒りのオーラを纏っている。
「ふぅー。ヒュノス村って聞いたことある?」
「ない」
「創世の女神は?」
「創世の女神……世界を作ったと言われている神か」
「それだけ?」
「他に何がある?」
全然めぼしい情報が手に入らない! 私の質問の仕方が悪いのか……
「書庫から隠れ家にいけるって、言わば転移でしょ? やり方、もしくは起動のし方って伝わってないの?」
「わかっていたらとっくにやってる。アレに聞いたが、わからんとぬかしおった」
「やり方はわかるのに、自分は行けない……とかかと思った。トリスタン君に言って欲しい情報仕入れてきてもらえばよかったのに」
「全て終わり、倒れたアレを見て気が付いた。だが、一度封印したものを解く魔法はない」
(んん? じゃあ、何で今回夢に見たんだろ? パパ達が何かしたのか……それとも村の何かに反応したのか……自然に思い出すってこともありえなくはない……かな?)
「じゃあ……眠ったまま起きない病気については?」
「それはいろいろやり方がある。ひとつ目は……」
老害は〝眠ったまま起きなくさせる〟方法を語った。
体の機能を麻痺させる毒薬、強い睡眠薬、状態異常の魔法……中でもエグいと思ったのは植物のタネを埋め込み、体を侵蝕させるやり方だった。
(うぅ……気持ち悪っ……聞いてるだけで具合悪くなってきちゃう)
「もういいよ……そんなグロい話を聞きたかったんじゃない……」
「そうか。まだあるがな」
「起こす方法を知りたいんだよ」
老害は記憶を探しているのか、空を見つめた後、ポーションや薬草について話し始めた。
老害の薬草についての知識は、知らないことがないんじゃないかというくらい造詣が深かった。私が本で読んだ初級ポーションの作り方は、本当に初級だったらしい。
「まさか、お茶の葉の一番茶みたいに葉っぱの新芽のみを使うとか、作る物によって使用する葉っぱを選択するとかで効果が変わるとは……」
「より効果が期待できる。祖先はワシより詳しい。ワシの知識は祖先の書物によるものだ」
「マジか……奥が深いのね……」
薬草について語る老害は少し楽しそうだった。私がちょこちょこ質問していたせいで知識を披露できるのが嬉しかったのかもしれない。
(そういう知識を、人を陥れるために使うんじゃなくて、助けるために使えば良かったのに……)
「……貴様は祖先の隠れ家に行くつもりなのか?」
「そのつもりだよ」
「貴様なら行けるのかもしれんな……今、話していて思い出したことがある。祖先は隠れ家をいくつか持っていたと伝わっている。邸の書庫から全てに行けるのかはわからん。まぁ、もう既になくなっている場所もあるかもしれんがな」
「なるほど」
もし、書庫からいくつかの場所に通じていた場合……ジルが行った場所に飛べるとは限らないのか。でもこれは現場を調べなきゃわかんないんだよね。
「ありがと」
「なぜ礼を言う」
「ん? 答えてくれたじゃん。薬草のことも教えてくれたし、何かしてもらったらお礼を言うのは当たり前でしょ? それが例え、その首輪のせいでもね」
「そうか……当たり前か……なんの裏もない礼など言われたのはいつぶりだったか……」
遠い目をし始めた老害を見て、もしかしたら老害も被害者だったのかもしれないなと思った。
ジルを虐待していた事実は覆らないし、老害の過去を確かめる気もないけど。
話し終わった私が離れようとすると、呼び止められた。
「待て。アレが隠れ家に移動した書庫は四階だ。貴様が何を調べているかは知らんが、地下七階にある隠し書庫も調べてみるといい」
「わお! ありがと!」
今度こそ牢から離れると、待っていたブラン団長に抱っこされた。
ブラン団長達はさっさと離れようとしているのか、来たときよりも早足で塔の階段を登っていく。
「地下七階に書庫などなかったと思いますが……」
「さっき隠しって言ってたから、僕達じゃ見つけられてないのかも」
「……また調べる必要があるな」
「ん? 調べたときに老害に確認してないの?」
「……いや、した。確か、あのときは……〝貴様らが見つけられなかったのならそうなんだろう〟と、言ってたな……」
視点が合っていなかったから、目が見えないのかと思っていたと、ブラン団長は続けた。
「たぶんだけど……魔力に反応するとか、隠蔽されてるのかもだね。もしかしたら、老害が知らない隠し部屋もあるかも」
「……そんなことあるのか?」
「可能性としてはね。ジルは行動を制限されてたから、邸の全部はわからないって言ってたよ。それが代々受け継がれてたら、ありえると思う」
私の発言でブラン団長達は顔を見合わせ、どうするか相談し始めた。
結局、調べられるほどの人材がいないので、王族私有地として立ち入り禁止のままにするらしい。
そのうち暇になったら私が調べてもいいけど、今はグレンとガルドさん達の方が比べるまでもなく優先。いつ暇になるかはわからないし、ブラン団長も私に頼む気はないみたい。
塔から出ると既に日が暮れかけていた。時間が惜しい私は、お願いしてそのまま老害の邸に連れて行ってもらった。
老害の邸は前に一度、貴族エリアを回ったときに見ていたけど、他の貴族宅とは比べ物にならないくらい大きい。ブラン団長に聞いたところ、地上五階、地下十階から成り立っているらしい。
門を通るときに、一瞬だけ何かプヨンとした弾力を全身で感じた。おそらく結界だと思う。
ブラン団長達は何回も訪れているみたいで、慣れた手つきで鍵を開けてくれた。
目指すは、教えてもらった四階の書庫。ブラン団長達も覚えきれてないみたいで、見取り図を見ながら案内してくれた。って言っても、大変だからとフレディ副隊長が抱っこしてくれたので、私は楽ちんだ。
ブラン団長達を巻き込みたくはないので、書庫の前で待っていてもらうことにした。ものすごく渋られたけど、私ならどこか知らない場所に飛ばされたとしても、転移で戻ってこられるからね!
転移魔法陣が作動するかもしれないから、一週間は居なくなっても騒がないこと、あまりに遠くてすぐに戻れない場合は近くの街から連絡することを約束した。大陸外とかからならわからないけど、たぶんクラオルファミリーのところにはすぐ飛べると思うんだよね。そしたらすぐに戻って来られる。
1,289
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜
咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。
元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。
そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。
「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」
軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続!
金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。
街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、
初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊!
気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、
ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。
本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走!
ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!?
これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ!
本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。