220 / 537
9章
召喚【2】
「まぁ、そのことはクラオルがいるときに話そうか」
「う……」
「ふふっ。セナさんは誤魔化し方が上手くないねぇ。(そこがまた可愛いんだけど)」
「うぅ……」
誤魔化されてくれなかった。しかも下手と言われてしまい、私は肩を落とした。
イグ姐が「そんなこと許さぬ」と、私の頭にグリグリと頬ずりしている横で、アクエスパパがゴホン! と咳払いをした。
「セナ、俺達に何か頼みたいことがあるんだろ?」
「お願い?」
お願いなんかあったっけ?
思い付かなくて、何のことかとアクエスパパを見ると、視線で示された。
「アルヴィンさん? あ! ジルに憑けるの?」
「このままでは無理だな。ただ、方法がなくはない」
アクエスパパが教えてくれたのは、精霊となりジルと契約すること。
ただ、精霊となるには本人も然ることながら、精霊帝であるウェヌスの許可も必要。
そして、行動を共にすることを考えて最低でもクラオルの許可が必要。
「本当は従魔全員の許可がもらえることが一番なんだけど、グレンは眠ってるからね」
「なるほど。で、アルヴィンさんはどうなの?」
「私は……精霊になるのは構わない。むしろありがたい。ただ、契約はセナではないのだな……」
アルヴィンさんの最後の言葉に、アクエスパパが「厚かましい!」と一刀両断した。
「お前の空間に俺達のセナを閉じ込めただろうが!」
「そうです! それに子孫のしでかしたことを考えて下さい!」
いや、アクエスパパよ。私が手がかり欲しさにこの空間に勝手にきたんだよ……そしてエアリルパパよ。遥か昔……少なくとも1000年以上昔の先祖であるアルヴィンさんは、子孫が老害みたいになるなんて思ってなかったと思うよ……
「でもジルはいい子だよ?」
一方的にアルヴィンさんが責められるのは何か違う気がして、ジルの名前を出すと、パパ達に揃ってため息をつかれた。
そんなため息をつかれるようなことは言ってないと思うんだけど……まぁ、剣呑な雰囲気じゃなくなったからよしとしよう。
なぜかいつの間にかエアリルパパにギュウギュウと抱きしめられ、スリスリと頬ずりされているけど。
「とりあえず、ジルベルトとなら俺達が許可してやる。ジルベルトに無茶なことはさせるなよ」
「御意に」
「じゃあ、ウェヌスとジルベルト、それにクラオルと……可哀想だからグレウスとポラルも呼ぼうか」
「うん! エルミス達はダメ?」
「エルミスとプルトンは村を守ってくれているからちょっと厳しいかな……ここに呼んじゃうと結界が切れちゃうと思う。セナさんはウェヌスの指輪に魔力を流していてね」
「そっか……わかった!」
ウェヌス達を心の中で呼びながら、魔力を通すと、パパ達は何かを呟き始めた。
ガイ兄が足でダンッと床を踏みつけると、目の前に魔法陣が浮かび上がってウェヌス達が順番に現れた。
こう……下からヌッと出てくる感じ。
《ここは……セナ様!》
『ん? 主様!』
『ふえ? あ! 主っ!』
〔!〕
パパ達には目もくれず、真っ直ぐ私に向かってきたクラオルとグレウスとポラルを抱きしめた。
うぅー! ウチの子可愛い!
ウェヌスは私のケガの有無を確認していて周りをパタパタと飛んでいる。
「ふふっ。大丈夫だよ。パパ達も来てくれたし」
《それならばよかったです》
「ジルベルトを呼ぶ前に説明するよ。元ハイエルフのアルヴィン・プラティーギア。名前から想像できると思うけど、ジルベルトの祖先」
ガイ兄が簡潔に紹介すると、アルヴィンさんがウェヌスに黙礼した。
ガイ兄がそのままウェヌス達に許可の話をすると、ウェヌスは条件を出した。
《そうですね……今までのことから考えて、知識は膨大なのでしょう。しかしその知識でジルベルトに影響が出ないとも限りません。キチンと与える情報を選ぶこと、精霊帝である私の言うことを聞くこと、嘘をつかずセナ様や神に迷惑をかけないと約束できるのでしたら許可します》
「それだけでいいのか」
ウェヌスはアルヴィンの反応を見て、少し悩んだ後、再び口を開いた。
《もうひとつ。精霊として生きるのであれば、アルヴィン・プラティーギアという名は使わないで下さい。ジルベルトに自身が先祖であることも言ってはなりません》
「そんなことか。構わない」
《ジルベルトと契約するということは、セナ様に仕えるということになります。ゆめゆめお忘れなきよう》
「賜った」
アルヴィンさんが頭を下げると、ウェヌスが仰々しく頷いた。
クラオル達も特に異論はないらしく、アルヴィンさんは精霊になることになった。
ログハウスの中は召喚魔法陣があるので、外の淡白い空間で精霊にするらしい。念のために私達はログハウスでお留守番。
窓に張り付いて見ていると、アルヴィンさんを中心にパパ達が何かを呟きながら回っていた。
「かごめかごめみたい……」
手を繋いでいたりはしないけど、何となく儀式っぽい。
パパ達が両手をアルヴィンさんに向けると、アルヴィンさんは発光し始め、凝縮されていった。
光りが収まると、精霊の子と変わらないサイズの玉になった。遠いけどたぶん十センチくらい。
《無事に変わったようですね》
「アルヴィンさんは何の精霊になったのかな?」
《おそらく複数の属性を持っていると思います。ジルベルトを考えると光と風は間違いなく持っているでしょう》
「そうなんだ。ジルの自信になったらいいな。とか言ってジルが嫌がったら契約できないんだけどねー」
私達が話していると、精霊化が終わったらしく、ログハウスに戻ってきた。
ウェヌスが人型になる方法を説明すると、アルヴィンさんはすぐに人型になれた。
「わぁ~。ちっちゃい大人ジルだね!」
「そうじゃの。ジルベルトはこやつの血を色濃く受け継いでおるからの」
アルヴィンさんにいわかんとかはないのかと聞いてみたけど、特にないらしい。簡単に飛べることに感動していた。
「じゃあ、ジルベルトを呼ぼうか。セナさんはまた指輪に魔力を通していてね」
「はーい!」
ガイ兄に言われて魔力を流すと、ジルも魔法陣からヌッと現れた。
ジルはこの場に呼ばれたことに驚きながらも、パパ達に礼をとった。
「よいよい。いつも通りでよいぞ。いきなり呼んだのは妾達じゃからな」
ジルはイグ姐の言葉で私の隣りまで歩いてきた。
「早速なんだけど、ジルベルトはこの精霊と契約する気はあるかな?」
「精霊ですか? セナ様ではなく?」
「そう。セナさんよりジルベルト向きなんだよ。魔法の扱いは上手いし、薬草の知識もあるよ」
「セナ様のお役に立てるのですね……僕は嬉しいですが、そちらの精霊はよろしいのでしょうか?」
ジルがアルヴィンさんに聞くと《私では不満か?》と逆に聞いていた。
アクエスパパが名前を付けるようにジルに言うと、ジルはアルヴィンさんを見つめて「アルヴィン……」と呟いた。
「あっ! 先祖様のお名前なのです! 魔法も薬草も詳しく、賢者と讃えられていた御方で……僕は名を捨てたのに! 申し訳ございません!!」
アワアワと焦りながらジルが私に向かってガバッと頭を下げた。
「偶然って怖いね」とガイ兄の呟きが聞こえた。私も激しく同意するよ!
「ジル、頭を上げて。確かにジルはジルだけど、大昔の先祖のことはいいんじゃないかな? 憧れてたんでしょ?」
「はい……ですが……」
「ジルが付けたい名前が一番だよ。さすがに悪いやつの名前はあれだけど、その先祖はいい人だったんだよね?」
「はい。薬草の知識で困っている人を助け、魔法に長けていて……今各国で研究されている失われた呪文の中にはその御方が作ったと言われているものもあります。僕もそんな人になりたかったのです」
「じゃあいいんじゃないかな? きっとご利益もあるだろうから」
アルヴィンさんはジルに名前を呼ばれて虚をつかれたように驚いてたけど、ジルが褒めると顔を赤くして照れていた。
自分の子孫であるジルがここまで慕ってくれているなら、悪いようにはしないと思う。むしろ可愛がりたくなるんじゃないかな?
ジルは「本当によろしいのですか?」と聞いてきたけど、パパ達は苦笑いしつつもダメとは言ってないから私が「大丈夫!」と許可を出した。
ジルとアルヴィンさんが契約すると、このアルヴィンさんの空間に置いてある大量の本を回収することになった。
ジルになるべく早く帰るからと別れて、私もパパ達に元の場所に戻してもらう。
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。