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9章
召喚【2】
「まぁ、そのことはクラオルがいるときに話そうか」
「う……」
「ふふっ。セナさんは誤魔化し方が上手くないねぇ。(そこがまた可愛いんだけど)」
「うぅ……」
誤魔化されてくれなかった。しかも下手と言われてしまい、私は肩を落とした。
イグ姐が「そんなこと許さぬ」と、私の頭にグリグリと頬ずりしている横で、アクエスパパがゴホン! と咳払いをした。
「セナ、俺達に何か頼みたいことがあるんだろ?」
「お願い?」
お願いなんかあったっけ?
思い付かなくて、何のことかとアクエスパパを見ると、視線で示された。
「アルヴィンさん? あ! ジルに憑けるの?」
「このままでは無理だな。ただ、方法がなくはない」
アクエスパパが教えてくれたのは、精霊となりジルと契約すること。
ただ、精霊となるには本人も然ることながら、精霊帝であるウェヌスの許可も必要。
そして、行動を共にすることを考えて最低でもクラオルの許可が必要。
「本当は従魔全員の許可がもらえることが一番なんだけど、グレンは眠ってるからね」
「なるほど。で、アルヴィンさんはどうなの?」
「私は……精霊になるのは構わない。むしろありがたい。ただ、契約はセナではないのだな……」
アルヴィンさんの最後の言葉に、アクエスパパが「厚かましい!」と一刀両断した。
「お前の空間に俺達のセナを閉じ込めただろうが!」
「そうです! それに子孫のしでかしたことを考えて下さい!」
いや、アクエスパパよ。私が手がかり欲しさにこの空間に勝手にきたんだよ……そしてエアリルパパよ。遥か昔……少なくとも1000年以上昔の先祖であるアルヴィンさんは、子孫が老害みたいになるなんて思ってなかったと思うよ……
「でもジルはいい子だよ?」
一方的にアルヴィンさんが責められるのは何か違う気がして、ジルの名前を出すと、パパ達に揃ってため息をつかれた。
そんなため息をつかれるようなことは言ってないと思うんだけど……まぁ、剣呑な雰囲気じゃなくなったからよしとしよう。
なぜかいつの間にかエアリルパパにギュウギュウと抱きしめられ、スリスリと頬ずりされているけど。
「とりあえず、ジルベルトとなら俺達が許可してやる。ジルベルトに無茶なことはさせるなよ」
「御意に」
「じゃあ、ウェヌスとジルベルト、それにクラオルと……可哀想だからグレウスとポラルも呼ぼうか」
「うん! エルミス達はダメ?」
「エルミスとプルトンは村を守ってくれているからちょっと厳しいかな……ここに呼んじゃうと結界が切れちゃうと思う。セナさんはウェヌスの指輪に魔力を流していてね」
「そっか……わかった!」
ウェヌス達を心の中で呼びながら、魔力を通すと、パパ達は何かを呟き始めた。
ガイ兄が足でダンッと床を踏みつけると、目の前に魔法陣が浮かび上がってウェヌス達が順番に現れた。
こう……下からヌッと出てくる感じ。
《ここは……セナ様!》
『ん? 主様!』
『ふえ? あ! 主っ!』
〔!〕
パパ達には目もくれず、真っ直ぐ私に向かってきたクラオルとグレウスとポラルを抱きしめた。
うぅー! ウチの子可愛い!
ウェヌスは私のケガの有無を確認していて周りをパタパタと飛んでいる。
「ふふっ。大丈夫だよ。パパ達も来てくれたし」
《それならばよかったです》
「ジルベルトを呼ぶ前に説明するよ。元ハイエルフのアルヴィン・プラティーギア。名前から想像できると思うけど、ジルベルトの祖先」
ガイ兄が簡潔に紹介すると、アルヴィンさんがウェヌスに黙礼した。
ガイ兄がそのままウェヌス達に許可の話をすると、ウェヌスは条件を出した。
《そうですね……今までのことから考えて、知識は膨大なのでしょう。しかしその知識でジルベルトに影響が出ないとも限りません。キチンと与える情報を選ぶこと、精霊帝である私の言うことを聞くこと、嘘をつかずセナ様や神に迷惑をかけないと約束できるのでしたら許可します》
「それだけでいいのか」
ウェヌスはアルヴィンの反応を見て、少し悩んだ後、再び口を開いた。
《もうひとつ。精霊として生きるのであれば、アルヴィン・プラティーギアという名は使わないで下さい。ジルベルトに自身が先祖であることも言ってはなりません》
「そんなことか。構わない」
《ジルベルトと契約するということは、セナ様に仕えるということになります。ゆめゆめお忘れなきよう》
「賜った」
アルヴィンさんが頭を下げると、ウェヌスが仰々しく頷いた。
クラオル達も特に異論はないらしく、アルヴィンさんは精霊になることになった。
ログハウスの中は召喚魔法陣があるので、外の淡白い空間で精霊にするらしい。念のために私達はログハウスでお留守番。
窓に張り付いて見ていると、アルヴィンさんを中心にパパ達が何かを呟きながら回っていた。
「かごめかごめみたい……」
手を繋いでいたりはしないけど、何となく儀式っぽい。
パパ達が両手をアルヴィンさんに向けると、アルヴィンさんは発光し始め、凝縮されていった。
光りが収まると、精霊の子と変わらないサイズの玉になった。遠いけどたぶん十センチくらい。
《無事に変わったようですね》
「アルヴィンさんは何の精霊になったのかな?」
《おそらく複数の属性を持っていると思います。ジルベルトを考えると光と風は間違いなく持っているでしょう》
「そうなんだ。ジルの自信になったらいいな。とか言ってジルが嫌がったら契約できないんだけどねー」
私達が話していると、精霊化が終わったらしく、ログハウスに戻ってきた。
ウェヌスが人型になる方法を説明すると、アルヴィンさんはすぐに人型になれた。
「わぁ~。ちっちゃい大人ジルだね!」
「そうじゃの。ジルベルトはこやつの血を色濃く受け継いでおるからの」
アルヴィンさんにいわかんとかはないのかと聞いてみたけど、特にないらしい。簡単に飛べることに感動していた。
「じゃあ、ジルベルトを呼ぼうか。セナさんはまた指輪に魔力を通していてね」
「はーい!」
ガイ兄に言われて魔力を流すと、ジルも魔法陣からヌッと現れた。
ジルはこの場に呼ばれたことに驚きながらも、パパ達に礼をとった。
「よいよい。いつも通りでよいぞ。いきなり呼んだのは妾達じゃからな」
ジルはイグ姐の言葉で私の隣りまで歩いてきた。
「早速なんだけど、ジルベルトはこの精霊と契約する気はあるかな?」
「精霊ですか? セナ様ではなく?」
「そう。セナさんよりジルベルト向きなんだよ。魔法の扱いは上手いし、薬草の知識もあるよ」
「セナ様のお役に立てるのですね……僕は嬉しいですが、そちらの精霊はよろしいのでしょうか?」
ジルがアルヴィンさんに聞くと《私では不満か?》と逆に聞いていた。
アクエスパパが名前を付けるようにジルに言うと、ジルはアルヴィンさんを見つめて「アルヴィン……」と呟いた。
「あっ! 先祖様のお名前なのです! 魔法も薬草も詳しく、賢者と讃えられていた御方で……僕は名を捨てたのに! 申し訳ございません!!」
アワアワと焦りながらジルが私に向かってガバッと頭を下げた。
「偶然って怖いね」とガイ兄の呟きが聞こえた。私も激しく同意するよ!
「ジル、頭を上げて。確かにジルはジルだけど、大昔の先祖のことはいいんじゃないかな? 憧れてたんでしょ?」
「はい……ですが……」
「ジルが付けたい名前が一番だよ。さすがに悪いやつの名前はあれだけど、その先祖はいい人だったんだよね?」
「はい。薬草の知識で困っている人を助け、魔法に長けていて……今各国で研究されている失われた呪文の中にはその御方が作ったと言われているものもあります。僕もそんな人になりたかったのです」
「じゃあいいんじゃないかな? きっとご利益もあるだろうから」
アルヴィンさんはジルに名前を呼ばれて虚をつかれたように驚いてたけど、ジルが褒めると顔を赤くして照れていた。
自分の子孫であるジルがここまで慕ってくれているなら、悪いようにはしないと思う。むしろ可愛がりたくなるんじゃないかな?
ジルは「本当によろしいのですか?」と聞いてきたけど、パパ達は苦笑いしつつもダメとは言ってないから私が「大丈夫!」と許可を出した。
ジルとアルヴィンさんが契約すると、このアルヴィンさんの空間に置いてある大量の本を回収することになった。
ジルになるべく早く帰るからと別れて、私もパパ達に元の場所に戻してもらう。
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