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9章
嘆く国王
しおりを挟む私達が老害の隠し書庫に戻ると、私はブラン団長の上着を下に寝かされていた。
「ん?」
「セナさん!」
「セナ! 気が付いたか! よかった!」
体を起こすと、ブラン団長とフレディ副隊長に代わる代わるギュッと抱きしめられた。
何がどうなったのかわからなくて聞いてみると、私は意識を失っていたらしい。時間にすると十分も経っていないけど、クラオル達が慌てていてブラン団長達もかなり焦ったらしい。
「ごめんね。パブロさんは?」
「パブロはアレに聞きにいくと飛び出して行きました。私達はセナさんをこの場から動かさない方がいいかと」
「そっか……」
「体の異変などはありませんか?」
「大丈夫! 問題の解決方法もわかったよ!」
「「は?」」
どう説明すればいいか迷って、不思議な人がいろいろ教えてくれたと説明した。
アルヴィンさんに鍵開けの方法も教えてもらったから嘘は付いていない。
ブラン団長達は顔を見合わせたけど「意識を失っていたからな」と無理矢理納得してくれたみたい。
「パブロさんにも大丈夫って言わないと……」
「……そうだな。セナが倒れたことで頭に血が上っていた。今のパブロなら殺しかねない」
「えぇ!?」
それはとってもマズイ!
たぶんこの先また老害に聞きたいことも出てくると思う。
隠し書庫を出てドアを閉めると、トラップの発動は解除されたらしく、鑑定しても大丈夫だった。
歩くより転移の方が早いと、トラップ部屋から老害の元へ転移した。
「てめぇ……」
「パブロさん!」
「セナさん!?」
老害の胸ぐらを掴んでいたパブロさんを呼ぶと、バッと振り返って私を見つけた途端にパッと笑顔になった。
「セナさん大丈夫なの?」
「大丈夫! 大丈夫だから、その手放そ?」
私が言うと、老害を乱暴に解放して、私の名前を呼びながらササッと目の前まで移動してきた。
「セナさーん!」
「……パブロ、止まれ」
「何で!」
「……セナが汚れる」
「あ! そっか。クリーン! これならいいでしょ?」
ブラン団長が頷くとギュウっと抱きしめられた。
さっきのパブロさんは怖かったけど、今のパブロさんはいつも通り。変わり身が早い……
「大丈夫だから、回復してあげてもいい?」
「セナさんは優しすぎだよー。あんなトラップ仕掛けるようなやつだよ?」
プリプリと怒るパブロさんの拳のケガをヒールをかけ宥めてから、私は老害の前まで移動した。パブロさんとは違って牢の前までだけど。
謝りながらヒールをかけてあげると、老害に驚かれた。
「貴様はあの隠し書庫に入れたんだな……」
「うん。ってもしかして入ったことなかったの?」
「……ない。祖父が入っていたのは知っているが、父も方法を知らなかった。若い頃ワシも試したがトラップに返り討ちにされた。隠し書庫があることしか思い出せず、トラップのことはそいつから聞くまで忘れていた。すまん……」
忘れているとは思ってたけど、そもそも入ったことがないとは意外だった。
老害に謝られたことも驚きだ。
「まぁ、無事だしいいよ。パブロさんのおかげでケガもしてないし」
「そうか……あの書庫には何があった?」
「人体実験についてと禁忌魔法について書かれた本。私はあの部屋にあなたが入ったことがなくてよかったと思う。入ってたらもっと酷いことしたでしょ?」
「そうかもしれんな……」
老害は静かに目を閉じた。何か思うところがあるのかもしれない。
これ以上ここにいる理由がないので、報告のために国王に会いに執務室を訪ねた。
トラップと隠し書庫の話をすると、国王と王太子は頭を抱えた。取り壊すにも他にも隠し部屋があるかもしれず、手が出せないらしい。
まぁ、老害すらも知らない部屋もありそうだもんね。
「大変恐縮だが、助けてもらえないだろうか……」
「全部解決した後ならいいよ」
「ありがたい……おそらくこちらの手に余るだろうから、あの邸にある書物も全てセナ殿のものにして構わない。いや……むしろ引き取ってもらえると助かる」
研究するのに使わないかと思ったけど、研究したとしても使えるとは限らず、また老害みたいなのが出てきたら困るとのことだった。
「過去より未来を見据えるべきだと思う。セナ殿はシュグタイルハン国で貧民や孤児に仕事を斡旋したそうだな。我が国も民の幸せを願いたい」
「それもいいとは思うけど、過去のことを伝えていくことも大事だと思うよ? 反面教師って言葉もあるし、ちゃんと不正を取り締まって、人の心を育てるようにすればいいんじゃないかな?」
「はんめんきょうし……心を育てる……」
わかっていなさそうなので、反面教師の意味と助け合い精神の説明をした。
「まぁ、貴族には難しいだろうから……研究者を厳選するしかないかな? 貴族だけじゃなくて、貧民も平民も孤児も関係なく、人選すればいい。契約書でも交わせば確実だと思うよ」
「なるほど……」
「ただ、そうなると王族と関係を持ちたがる貴族は増えるだろうね」
私の発言で国王は頭を垂れて「荷が重い……さっさと引退したい」と唸った。
初対面時の偉そうな態度はどこへやら完全に気弱なおじさんにしか見えない。
「とりあえずさ、私は大事な人達を助けに行きたいんだよね。転移門使わせてもらってもいい?」
「はい。王族と一緒じゃなければ使えませんので「……俺が行く」」
王太子に被せてブラン団長が言い、ブラン団長が送ってくれることになった。
転移門はお城の地下にあるらしく、王太子の案内でブラン団長に抱っこで運んでもらう。
階段の段差が足の長い人向けだったんだよ! 一段ずつ降りるしかなくて見兼ねたブラン団長が抱っこしてくれたんだよ!
この国の転移門は、シュグタイルハン国にしか通じておらず、その転移門もキアーロ国の建国時にシュグタイルハン国から下賜されたらしい。
今となってはどうやって設置したのかもわからないんだそう。
王太子が「ここです」と止まったのは、予想外に普通のドアの前だった。
謁見の間みたいに重厚な扉かと思ってたのに、私が泊まっていた部屋のドアと大差ない。
それを伝えると、元々、王太子となってからこの部屋のことを教えられるそう。王太子にならない者が興味を持たないように、わざとこういう普通のドアにしてあるんだとか。
今回は特例としてフレディ副隊長とパブロさんも一緒に来たけど、さすがに部屋の中には入れないとのことで、部屋の前でお別れした。
部屋の中は、真ん中にドドーン! と門が構えている以外は何もない部屋だった。
「このプレートにブランが魔力を通せば扉が開きます。扉の先はシュグタイルハンとなっています」
「わかった。ありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
王太子が門から離れたのを確認して、ブラン団長が私を抱っこしたままプレートに魔力を流すと、ギギギギギっと音を立てて扉が開いた。
扉の中は白いモヤが動いていて先は見えない。
ブラン団長が私を守るように抱え直して、門に足を踏み出した。
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