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9章
待望の目覚め
急いで村長宅に戻って、クラオル達を呼んだ。
途中で待っていてくれたウェヌスには、パパ達が連絡しておいてくれてたらしく、ヤキモキさせずに済んでホッとした。
ガルドさん達が眠っている部屋からコテージに移動してグレンの部屋へ。
グレンは一時間もしないうちに目が覚めてくれた。
〈ん……ん?〉
「グレン!!」
〈セナ? どうした?〉
私がガバッと抱きつくと、グレンは驚きながらも受け止めてくれた。
「グレン……グレン……よかった……」
〈セナ? なぜ泣いている? 何かあったのか? 村人か? 始末するか?〉
『覚えてないの?』
〈何をだ?〉
グレンは眠ってからのことを覚えていなかった。普通にいつも通り寝ていたつもりだったらしい。
グレンにしがみついて泣く私の代わりに、ジル達がグレンに説明と聴き取りをしてくれた。
〈なら、我は何日も眠っていたのか?〉
《そうよ! セナちゃん大変だったんだから!》
〈ふむ。体は何ともない。大丈夫だから泣くな〉
泣き止まない私をグレンが抱きしめ、背中をトントンしてくれた。
◇
グレンに抱きかかえられたまま村長に起きたことを報告すると、村長は大喜びで泣きながら村人達に報告すると家を飛び出して行った。
私達はガルドさん達の部屋に戻って、ネラース達も呼んでグレンが眠っていた間のことを話した。
「んとね、グレンとエルミスとプルトンは事後報告になっちゃったんだけど……ジルが精霊と契約したの」
精霊と?
「そ。紹介するね。ジル」
私が促すと、ジルはアルヴィンを影から呼び出した。
《アルヴィンだ。よろしく頼む》
!
アルヴィンが挨拶すると、プルトンとエルミスは何かに気が付いたらしい。一応挨拶はしたけど、様子を窺うような目をして決して近付かない。
三人に念話でワケを説明すると、特に不満もなく納得したみたい。
みんなが揃ったところで、泉でのチンチラの話をすると、クラオルに『契約したの!?』と首元をグイグイされてしまった。
「契約してないよー。ポラルが拒否ったんだよ」
〈よくやった!〉
「特に契約するつもりはなかったけど、何でそんなに嫌なの?」
『……だって……神の使いなんか従魔にしたら、ワタシ達がいる意味がなくなっちゃうじゃない……』
クラオルは居心地悪そうにモゴモゴと教えてくれた。
「ふふっ。そんなこと心配してたの? んもう、可愛いんだから! 私にとってはみんな大好きで大切な家族だよ? 一緒にいてくれなきゃ寂しくて生きていけないよ」
クラオルとグレウスを持ち上げてスリスリすると、二人とも体を擦り寄せたあと頬にチュッとキスしてくれた。
「はわぁ! 可愛すぎ!」
『『キャ~』』
クラオルとグレウスにじゃれつくと、嬉しそうに喜んでくれ、そこへ『ズルい!』とネラース達が飛び込んできて、モフモフにもみくちゃにされた。
久しぶりの全員集合に、グレンが眠ってから張り詰めていた心が解れていく。
まだガルドさん達は起きていないけど、気持ち的には軽い。
部屋の密度はすごいけど、家族の笑顔が一番だね!
◇
しばらく話していると、ネラース達は飽きたのか、ドアからコテージに遊びに行った。開けっ放しだから気が済んだら戻ってくると思う。
「セナ様、本日の夕食はいかが致しますか? まだ村人が起きていないとすると、作らなければならないかと思いますが」
「そうだね。眠ってる人がいつ起きても大丈夫なように余分に渡さないと。って、あ! 井戸の水大丈夫になったのかな?」
『そうそう。たぶん大丈夫だけど、念の為に【浄化玉】を入れてってガイア様から伝言よ』
「わかった!」
どうせならと村人のご飯は井戸の近くで作ることにした。
エルミスにガルドさん達を任せて、スープを作っていると、グレンが起きたことを聞いた村人達が集まってきた。
ちゃんと起きていることを自分の目で確認すると、瞳に希望を宿し、口々にお祝いとお礼を述べられた。
ポラルに頼んでいた【浄化玉】を回収して、スープを配り、井戸が使えるようになったことを伝えると涙を流す村人まで現われた。
「目を覚ますまでちょっと時間がかかるかもしれないけど、みんなが元気じゃないとね。いっぱい食べて起きるの待とうね!」
私が声をかけると歓声が上がり、元気を取り戻した村人達はスープと飲み水を持って戻っていった。
「ありがとうございます……村に希望が……」
「お礼を言うのは早いよ。まだ村長も奥さん達起きてないでしょ?」
「そうですね……起きたときにしっかりしていなければ嫁と子供に笑われてしまいます」
「うんうん。村長もちゃんと食べてね」
村長にもスープを渡して、私達はガルドさん達の部屋に戻った。
ネラース達がコテージから戻ってきていて、ガルドさんをベッドの周りから四人で覗き込んでいた。
「どうしたの?」
《もうすぐ起きそうらしい》
「ホント!?」
〈セナ、我は腹が減った〉
「じゃあ、ご飯食べながら待とうか?」
グレンが肉を食べたいかと、ピンクオークの生姜焼き丼を大盛りで出してあげると大喜び。
もうジルにも食べさせていいと許可が下りたので、ジルも普通盛りの同じもの。
アルヴィンは見たことのない食事だと恐る恐る食べてから感動していて、ジルが「セナ様の料理は世界一なのです」と、自分のことのように言い聞かせていた。
「ん……俺は……?」
「ガルドさん!」
ガルドさんが起きて、食べていたご飯をそっちのけで私はガルドさんに飛びついた。
「セナ? なんか美味そうな匂いが……」
「ふふっ。ガルドさんも食べよ?」
ガルドさんには普通のオークの生姜焼きを作って渡してあげると、おなかが減っていたのかガツガツと食べ進め、何回も作ることになった。
「ふぅ。生き返った。初めて食べたが美味いな……」
〈セナの料理だからな!〉
ガルドさんは五杯目の生姜焼き丼を食べ終わって、ようやく少し落ち着いたらしい。六杯目を作って渡すと、また食べ始めた。
ジュードさん達が回復してから記憶がないと言うガルドさんに、かいつまんで説明すると、自分も眠り病になっていたことに驚いていた。
グレンと同じく、普通に目が覚めた感覚らしい。
「またセナに助けられたのか……」
「ガルドさんが起きたから村の人達喜ぶよ!」
「全く……また無茶しやがって……」
そう咎めるガルドさんの声は優しく、ガシガシと頭を撫でられた。
お兄ちゃん具合と、口元にご飯粒が付いているのが相まって笑っちゃうと、ペシッと軽くデコピンされてしまった。
「なぁ、これ、もしかして従魔か?」
「うん。ニヴェスは前に会ったでしょ? ネラース、アクラン、ルフスだよ。可愛いでしょ?」
「はぁ……またお前は……」
ガルドさんは盛大なため息をついた後「よろしくな」と挨拶してくれた。
ネラースが撫でろ撫でろと体を擦りつけると、ガルドさんはおっかなびっくり撫でてあげていて、微笑ましい。
しばらく撫でた後、ガルドさんは村長に起きたことを報告しに行った。
「アーロンさんに報告しないとだけど、ここからあんま離れたくないから手紙でいいかな?」
〈我が飛んでいくか?〉
「それはダメ。病み上がりだからグレンはゆっくりしなきゃなの」
グレンはちょっと嬉しそうに〈そうか〉とだけ呟いた。
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