文字の大きさ
大
中
小
188 / 502
9章
信者スキルと契約
翌朝、ご飯を作って馬車から降りると、馬車の周りには村人が集まっていた。
眠り病に罹っていた村人数人が起きたらしく、報告とお礼にきたらしい。
そのうちの一人、おじいさんに跪かれてお礼を言われてしまい、私は顔が引きつってしまった。
「大げさだよ!」
「とんでもございません! 娘夫婦は亡くなってしまいましたが、私にとって孫娘は最後の希望だったのです。その孫娘が起きてくれて……うぅ…………ジルベルト様の仰っていた通り、素晴らしい御方……全て……全てセナ様のおかげです……」
「ジルから?」
「はい。セナ様は慈悲深く、とてもお優しい方だと。お仲間たけではなく、我々も救って下さるために尽力していただいていると。食事もポーションも全てセナ様からのいただき物だと……」
まさか私がいない間に布教活動されていたなんて!
ジルを恨みがましく見ると、ニッコリと微笑まれてしまった。
違う。ジル、違うよ。微笑んで欲しかったわけじゃないんだよ……
「えっと……娘さん夫婦は残念だけど、孫娘さんが起きてよかった。孫娘さんのためにも長生きしてね」
「あああぁ……やはり女神様のような御方だ……」
なんでそうなった!
この場をどうすればいいのか悩んでいると、グレンが〈セナは忙しい。起きたならその孫娘に付いててやればいい〉と助け舟を出してくれた。
おじいさんは涙をボロボロと零し、ペコペコと頭を下げながら戻っていった。
埋もれそうな私はグレンに抱っこされて、村長宅へ避難。
「んもう、ジル!」
「はい。何かいけませんでしたか?」
「何であんなこと言ったの?」
「セナ様特製ポーションを渡して、やつれた村人を戻したのに……井戸の件と、セナ様の食事のスープに関してコソコソと文句を言う輩がいましたので、セナ様の素晴らしさをお教えしました。あのご老人はそれを聞いていたようですね。セナ様の素晴らしさをご理解いただけたようで嬉しく思います」
「……なるほど」
特に何も思ってなかったワケじゃなかったのね……ジルのおかげで直接文句を言われなかったのか……
でも二、三日しか離れてなかったのに……洗脳早くない!? 信者スキル優秀すぎない!?
ジルのおかげで不満を爆発されずに済んだことを考えると、文句も言えなくて……私は言葉を呑み込むしかなかった。
気を取り直して村長に村人用の朝ごはんを渡し、私達はガルドさん達の部屋を訪ねた。ガルドさんはすでに起きていて「はようさん」と挨拶してくれた。
ジュードさん達は起きてはおらず、私達は朝ごはんを食べた。
ジルとグレンにお留守番を頼み、私は転移でベヌグの街へ。
冒険者ギルドに入ると、ギルマスのネルピオ爺が飛んできた。
応接室で早速「何か進展があったのか?」と聞いてくるネルピオ爺に解決しそうだと話すと、瞳に涙を湛え「そうか、そうか……」と頷かれた。
「王都からお前さんの知り合いじゃと言う者が来ておるが会うかの?」
「知り合い?」
「名をアーノルドと言っておった」
「アーノルドさん! 会う!」
ネルピオ爺がアーノルドさんに使いを出すと、寝癖頭のまますぐに来てくれた。
「お嬢ちゃん!」
「やっほー!」
「…………はあ。気が抜けちまったよ……大丈夫そうだな」
「うん」
「アーロンから昨日報告を受けたが、村は今どうなってる?」
やれやれとため息をついたアーノルドさんに、村の現状を伝えるとホッと息を吐いた。
アーノルドさんは私が王都を出た後すぐに、アーロンさんの命令を受けてこの街まで飛んできたらしい。
昨日ヘロヘロ状態で着いたところに、アーロンさんから「解決できそうらしい」と報告を受けたんだそう。
「とりあえず、お嬢ちゃんが村のために消費したものを書き出してくれ。アーロンが払う」
「わかった。一応アーロンさんへの報告の手紙も持ってきたんだよ」
「助かる」
「書くから、アーノルドさんはこれ食べて待ってて。朝ごはん食べてないんでしょ?」
私がウインナーロールを渡すと、アーノルドさんは大げさに喜んでかぶりついた。
ポーションの素材や食材を書き出してリスト化すると、ネルピオ爺に驚かれた。予想外に見やすかったらしい。
アーノルドさんはこれからどうするのか聞いてみると、まだどうするかは決まってないんだそう。
そもそも 私が解決するまでは村には立ち入り禁止だけど、情報収集や解決後のために向かわされたらしい。「解決した後、アーロンから指示がくるだろ。それまでのんびりさせてもらう」とのことだった。
その後一緒に買い物に向かうと「アーロン払いだからな。好きなだけ買えばいい」と全部払ってくれた。ちゃっかり自分のご飯も買っていたのは内緒にしておいてあげよう。
アーノルドさんはしばらくこの街に滞在するらしく、また報告にくることを約束して私は村に戻った。
◇
次の日、本を持ってきちゃった私は、レッドキャプスに会うためジルを連れてアルヴィンの隠れ家を訪れた。
アルヴィンはレッドキャプスにバレないように姿を消していたけど、いまだに隠れ家を守ってくれているレッドキャプスに感謝していた。
「報告が遅くなっちゃってごめんね。まだ完全にじゃないけど、解決しつつあるの」
《そりゃよかっただ。オイ達も探しただが、見つけられんかったして、どうすっかって話してただや》
「そっか。あのね、おじさんが会ったと思う男の子連れてきたよ」
《やっぱそうだっただな。あの坊主が立派んなって! 主にそっくりだなや~! こったら嬉しいことはねぇなぁ!》
おじさんはジルを見つめ本当に嬉しそうに頷いた。
「僕を送ってくれた方でしょうか?」
《んだんだ! オイのことさ覚えてただな!》
「それは……あの……」
《いんや~! あの坊主がなぁ~!》
前持って私から聞いていたジルは正直に言おうとしてたけど、おじさんは嬉しさのあまり聞いていない。世の中には知らない方がいいこともある。
ジルに首を振ると言わないことに決めたみたい。
「ねぇ、おじさんはこれからもココを守り続けるの?」
《んだな~。主の後継者が現れたからな!》
「後継者ですか?」
《んだんだ! おめさのことだなや! 血を受け継ぎ、魔力も見た目もそっくりなおめさはピッタリだ!》
「あの……僕は……」
おじさんの中で、ジルは後継者に決定みたい。
「ジルが嫌じゃないならいいんじゃない? なんならおじさんと契約してもいいと思うよ。おじさん、ジルの先祖と契約したかったみたいだし」
《ほんとだか!?》
ジルに話していると、おじさんが身を乗り出して食い付いてきて驚いた。
「うわっ! ビックリした……」
《ほんとに契約してくれるだか!?》
「セナ様ではなく僕でよろしいのですか? 僕は家名を捨て、ジルベルトとなりました」
《主の後継者はおめさだなや?》
おじさんに家名は関係ないらしく、ジルは悩んだ後「わかりました」と答えた。
「ただ、条件があります」
《言ってみれ》
「僕はセナ様に仕えております。ここにはそう頻繁に来れません。僕は魔法も薬学もまだまだです。この蔵書を役に立てることは現状難しいと思います。ですが、セナ様ならば有効活用できるでしょう」
《ん? どういう意味だ?》
ジルの遠回しな発言はおじさんに理解されなかった。
「えっと……そう、僕の全てはセナ様のものです。僕と契約するのならばセナ様のお役に立つようにお願い致します」
《この女子の? オイは何したらいいだ?》
まさかの丸投げに私はどうしようか悩む。
「まず、ジルは私の大事な家族だから、仕えるんじゃなくて普通でいいんだけど……うーん……あ! おじさんはジルが困ったときやピンチになったとき助けてあげてくれる? 戦わなくても、助言とか……アルヴィンさんの昔話とか」
「セナ様……」
《そったらことでいいだか?》
「あとは、ココを守って、私が訪ねてきたときに本を読ませてもらえたら充分だよ」
《わかっただ!》
キラキラとした瞳で期待いっぱいにジルを見つめるおじさんに、ジルは頷いて〝ファーダ〟と名付けた。
契約の光が消えるとおじさんは三十代くらいまで若返って驚いた。
キヒターは成長したけど、逆パターンもあるのか……
《これが契約なんだなぁ。力が湧いてくるだ!》
若返ったのに話し方は変わらないらしい。
おじさんは手をグーパーしながらニカッと笑った。
《オイの仲間にも伝えとくだで、どこの家さ行っても大丈夫だ!》
「それは助かるよ。じゃあ私達はそろそろ戻るね」
おじさんは《またな~!》とブンブンと手を振ってお見送りしてくれた。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。