文字の大きさ
大
中
小
188 / 500
9章
最後の一人
二日後の朝ジュードさんが目覚め、同じ日の夜モルトさんが目を覚ました。やっぱり眠り病に罹っていた記憶はなく、普通に起きた感覚らしい。
二人共私がいることに驚き、そして喜んでくれた。
助けてもらったお礼を言うと、逆にお礼と謝罪をされてしまった。
それから一週間も経つと、村人はほとんどが目覚め、残すところ後数人。
元気になった村人達が私達が滞在できる家を作ってくれ、部屋は別だけど、ガルドさん達と同じ家で寝泊まりするようになった。
さらに一週間で村人は全員目を覚ました。
村は眠り病に罹る以前の状態に戻り、村人は各々活動をしている。
なのに……なのに、なぜかコルトさんだけ起きてくれない。
パパ達も理由はわからないらしい。
その間、グレンは体が鈍るとよく狩りに行っていた。ちなみに、ガルドさん達が苦労したモントモンキーという猿の魔物はグレンによって狩り尽くされました……
ジルはジルで村のお婆さん――ヘルバ婆から薬草の話を聞いたり、ガルドさん達に稽古を付けてもらったりしている。アルヴィンはエルミスとプルトンに教わりながらジルのサポート。ジルの成長を見守れるのが嬉しいらしい。
グレンとジルはガルドさん達に慣れ、村人達とも仲良くしている。
ジルはガルドさん達によく撫でられていて、少し恥ずかしそうに照れながらも嬉しそうな姿をよく見かけた。
私は街に買い物に行ったり、アーロンさんやブラン団長やタルゴーさんと連絡を頻繁に取っていて、なんだかんだと忙しく過ごしている。
◇
毎日交代交代で付いていて、今日は私がコルトさんを見守る番。とは言っても、ガルドさん達は狩りに出かけていないものの、グレンとジルは村にいる。
コルトさんにポーションを飲ませ、私はベッド横のイスに座った。
コルトさんは眠ったままだから話かけても反応はない。それでも、反応してくれるんじゃないかと期待して話しかけてしまう。
「今日のお昼はチキンタツタバーガーだったんだよ。コルトさんは鶏肉好き? ……ねぇ、コルトさん。コルトさん起きたらアーロンさんがお城に来いって言ってたよ。王都に行ったら一緒にカレー食べよ? あとね、美味しい果実水のお店があるんだよ。ねぇ、コルトさん……」
ペラペラと一人で喋り続け、会ったときからのことを思い返す。
記憶がなくて正体不明だった私をガルドさん達はいつも守ってくれていた。
歩くときはモルトさんに手を引かれて、走るときはみんなの背中におんぶしてもらってた。
コルトさんの光魔法キレイだったんだよねぇー。走るときは忍者みたいで揺れなかったし……ストレッチするときに寝ぼけてることも多くて、目をゴシゴシする姿は可愛かった。
私が号泣しちゃったときも、支離滅裂なこと言ってたと思うけど、コルトさんは根気よく聞いてくれた。
私が恥ずかしがるからと歌ったやつも秘密にしてくれたんだよね……しかも一回でサビのメロディー覚えちゃうっていう。
思い出して、懐かしむように私の口からメロディーが零れていく。
それは開けた窓から風に乗り、村全体に広がっていった。
「うひっ!」
もうすぐ曲が終わるというとき、腕を取られてベッドに引きずり込まれた。
「コルトさん?」
「……会いたかった……夢でも嬉しい……」
「コルトさん!」
私がギューっと抱きつくと「夢じゃない?」と呟かれた。
「起きてくれてよかった!」
「……起きた?」
コルトさんは状況をよくわかっていないらしく、眠ったまま起きなかったと教えると目を丸くさせた後、何かに納得したように頷いた。
「……だから……」
「ん? コルトさん?」
「……夢、だと思う……ずっと何かが身体に絡みついて動けなかった……でも会えないなら動けなくてもいいと思ってた……そしたら……あの歌が聞こえた……すぐ近くで……会いたくて手を伸ばしたら……絡みついてたのが消えてなくなって…………目の前に会いたかった子がいた」
最後は嬉しそうに優しく微笑みながらギュッと抱きしめてくれた。
私の歌が起こすキッカケになったみたい。もっと早く歌えばよかった……
「……本当に無事でよかった。ケガは?」
「大丈夫だよ。助けてくれてありがとう!」
「……ううん。最後助けてくれたのはキミでしょ? ありがとう」
コルトさんは私の鼻をツンツンして笑った。
「……ガルドさん達は?」
「みんないるよ。今は狩りに行ってる」
「……そっか。謝らないと」
「謝る?」
コルトさんは、自分のせいでみんなが大変だったと思っているらしい。そんな話はガルドさん達から聞いてないんだけど、気に病むならそうした方がいい。言わないまま誤解が誤解を生んですれ違いになっちゃうかもしれないからね。
ひとまず紹介したい人がいると、グレンとジルにコルトさんが起きたことを念話で飛ばした。
二人とも急いで駆け付けてくれ、グレンはコルトさんのベッドの中にいる私を見て警戒心を露わにした。
〈グルルルル〉
「グレン?」
〈貴様……我のセナから手を離せ!〉
「……セナ?」
「私のことだよ。思い出したの。私の名前はセナ・エスリル・ルテーナ」
「……セナ。いい名前……」
〈ぬぁぁ! さっさと解放しろ!〉
「わわっ!」
「……あ」
グレンはしびれを切らしたのか、ズカズカと歩いてきて私をひったくった。
残念そうなコルトさんにフンっと鼻を鳴らし、〈我のセナだ〉とさっきと似たようなセリフを言った。
「んもう! ビックリしたじゃん!」
〈何もされてないだろうな?〉
「へ? あはは! 何かあるわけないよー。コルトさんだし、クラオルとグレウスも一緒だよ?」
〈ふむ。ならいい〉
グレンは納得したのか、一度グリグリと頬ずりした後、抱きかかえていた私を降ろしてくれたのでコルトさんにジルとグレンを紹介した。
グレンがドラゴンだと教えると、コルトさんは目をまん丸にして驚いていた。
「ガルドさん達にも教えないとね。んーと……今は森にいるね」
〈我が呼んできてやる。ジルベルトはこやつを見張ってろ〉
「かしこまりました」
窓から飛び立ちそうなグレンを引き止めて、ついでにお願いとアーロンさんへのお手紙とネルピオ爺に伝言を頼んだ。
◇
ガルドさん達は急いで戻ってきてくれた。狩っていた魔物はグレンがちゃちゃっと倒しちゃったんだそう。
ガルドさんは起きたコルトさんを見て、うるうるとしながらも「心配かけやがって」とこずいていた。
ジュードさんもモルトさんも、コルトさんが起きたことに大喜びで、子供のようにじゃれついている。
私達が騒いでいたからか、最後の一人であるコルトさんが目を覚ましたことは村中にあっという間に広まり、村全体でお祝いムード。
村長が「宴をしましょう!」と村人に声をかけると、あれよあれよという間に、村の中心にあるレリーフの回りには村人が持ち寄った素朴なご馳走が並んだ。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。