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9章
旅立つ準備
◇
お祭り騒ぎのお祝いが終わると、アーノルドさんはアーロンさんに報告すると街に戻って行った。
私達はコルトさんも目が覚めたので、みんなリビングに集まって離れ離れになった後の話をした。
ガルドさんには話していたけど、ジュードさん達にはなんとなくしか話していなかったから、いろいろ驚かれた。
「まさかあのとき従魔契約してなかったなんて、予想外だよー」
「こんなに魔物を従魔契約しているのにも驚きです」
「みんな可愛いでしょ? グレンはカッコイイ部類だけど」
私の家族を紹介すると、揃って驚かれたけどネラース達の人懐っこさにやられたらしく、ガルドさん達はモフモフを撫でてあげている。
「いや、一番驚愕なのは精霊だろ……俺も今知ったぞ……」
「アハ」
「笑って誤魔化すんじゃねぇよ……」
「精霊の三人を教えたのはガルドさん達だけだよ。他は誰も知らないから内緒ね?」
私がお願いすると、ガルドさんに「言えるわけがねぇだろうが」と返された。
精霊は珍しく中々遭遇もしないため、半ば伝説的な扱いなんだそう。見かけたとしても、普通は契約なんかできないらしい。
だから欲深い人間は精霊を捕まえ、言うことを聞かせるために暴力を振るう。一緒に楽しくすごすという考えはないみたい。
そんなの見つけちゃったらブチ切れる自信がある。
キヒター達、教会にいる三人のことは話していない。今ここにいないし、クラオル達に止められたことが大きい。きっといつかカプリコ達と会ったら、驚いてくれると思う。
「そういえば、セナちゃん? セナさん? なんて呼べばいいのー?」
「ガルドさんは呼び捨てだし、何でも大丈夫だよ?」
「んー、何がいいかなー?」
「近々街に移動するぞ。今はセナが買い物をしてくれているが、必要なものを買わなきゃならん」
悩み始めたジュードさんを放置してガルドさんが話題を変えた。
「出るって明日ー?」
「いや、コルトが起きて間もないから感覚を取り戻さなきゃまずいだろ」
「それがいいねー。オレっち達もずっと眠ってたからか、変だったもんねー」
「セナさんはこれからどうするんですか?」
「私?」
モルトさんに話題を振られて、どう言えばいいかと悩む。
「えっと……私もそうなんだけど、みんなもアーロンさんに呼ばれてるんだよね」
「は!? アーロンってこの国の国王だろ?」
「「「国王!?」」」
「うん。みんなに会いたいんだって」
私が言うと、理解しきれないらしく「国王って王様だよね? 一番偉い人だよね?」とジュードさんに確認された。
「セナが謁見したのは聞いたが、なんで俺達まで……」
「行かなきゃダメだろうけど、オレっち達国王に謁見できるような服持ってないよー?」
〈ん? なぜ着替える必要がある?〉
「だって王様でしょー?」
〈着替えなきゃいけないなら、呼び出した本人からもらえばいい〉
「グレンならそれもできるだろうが、俺達は平民だぞ? 普通は会うことすらできないんだぞ?」
「アーロンさんは気にしないから大丈夫だよ。私達も前回着替えてないし……それにアーロンさんは平民とか気にしないよ」
そう言うと、ガルドさんとジュードさんに何回も「ホントか?」と確認された。あまりにも何回も聞かれてグレンにしつこいと怒られていた。
実際、アーロンさんが気にするとしたら服装より強さだと思う。
「まさか、俺達に戦えなんて言わないだろうな?」
「ふふっ。たぶん大丈夫だよ。お礼言いたいって手紙に書いてあったし」
「「「「お礼?」」」」
「私を助けてくれたからだって。あと、私を探してくれてたから、このヒュノス村に来たでしょ? ガルドさん達がここに来なければ、私も来なかった。巡り巡ってこの国の村を助けたことになる……ってことにして紹介しろって」
最後の言葉でガルドさんとジュードさんがガクッとコントみたいに反応した。ノリが素晴らしい。
「アーロン陛下の親族とかじゃないんだよな?」
「違うよー」
〈セナを一緒にするな〉
「はあ……ただの確認だから睨むな」
ガルドさんはワガママな子供に言い聞かせるようにグレンに返した。
「とりあえず、コルトが回復次第に行く。その後準備できたら王都を目指す」とガルドさんが無理矢理まとめた。
憂いもなくなって久しぶりの集合。結局、その後も話しが尽きることはなく、盛り上がってしまった。
夜遅く、部屋に戻って眠ることに。部屋に戻る前にコルトさんに「頑張って」と声をかけると、コルトさんはコクリと頷いた。
────────────────────
翌朝、コルトさんはちゃんと伝えられたらしく、スッキリした顔をしてガルドさん達と一緒に狩りに行った。絆が深まったみたいで私も嬉しい。
ジルは家に押しかけてきた村長の娘さんに捕まったため、私はグレンと一緒にベヌグの街へ。
アーノルドさんを交え、ネルピオ爺と村の今後について話し合った。
村長からの伝言を伝え、ギルドの意見も交えてアーロンさんと手紙のやり取り。今後は定期的に村と連絡を取ってくれることになった。
そして商人も行商に訪れるようにしてもらった。これにはもちろん、タルゴー商会が一枚噛んでいる。なぜって、この街唯一の商会とタルゴーさんが知り合いだったから。商業ギルドとタルゴーさんの包囲網で、この街の商会長はビビりまくっていたけど……一応お詫びとして、ナッツパンとドライフルーツパンのレシピの使用許可を出したから許してもらいたい。
ヒュノス村以外にも詳細が知られていない小さな村があるらしく、そちらにも人を派遣することが決まったらしい。
村へ戻り、村長に報告をすると村長夫妻は喜んでいた。買い物の度に街へ行くのが大変だったらしい。
家に帰ると、怒った様子のジルが迎えてくれ「明日は連れて行って下さい」とお願いされてしまった。
ジルは言葉を濁していたけど、どうやら村長の娘さんは私の悪口を言いまくり、ジルに結婚してと迫っていたらしい。どんな悪口なのかは教えてくれなかったけど、ヤキモチもあると思うんだよね。
「っていうか、迫るって……最近の子供ってすごいんだね……」
「子供でも言っていいことと悪いことがあります。恩人であるセナ様の悪口など……僕はセナ様と共にいたいのだとハッキリ言いましたが、こちらの話は聞く気がありませんでした」
《私もアレは苦手だ。昔、しつこく付き纏ってきた女を思い出す》
アルヴィンはブルリと震えて自分自身を抱きしめるようにさすった。
クラオル達もグレンも娘さんは好きになれないらしく、あまり関わっていないのにヘイトが溜まっている。
「今日はごめんね。明日はネルピオ爺に頼まれた薬草採取に森に行くつもりだから、ジルも一緒に行こ?」
「はい! ぜひ!」
途端に笑顔になったジルに私も笑顔になる。ジルが残ることになったら寂しいなと思っていたけどよかった!
◇ ◆ ◇
朝早く……まだ日が昇らない時間に私達はこっそりと家を出た。ガルドさん達には昨日のうちに説明しておいたから大丈夫。
薄暗い中、気配を消して森を目指す。
「ここまで来れば大丈夫でしょ」
「お気遣いありがとうございます」
「ううん。ご飯食べよ!」
森の入口で朝ご飯を食べると、グレンが〈こういうのは久しぶりだな〉と笑っていた。やっぱり森っていうか、自然が好きみたい。
お昼頃、ガルドさん達も合流してみんなでワイワイと薬草採取。
ジルは村のおばあさんに教わったと、薬草を見つける名人になっていた。
ガルドさん達もジルを褒めてはワシャワシャと頭を撫でていて、さらにやる気を上げたジルのおかげで大量の薬草を確保できた。
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