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9章
先人達は厨二病
◇
「謁見も終わったし、自由にしていいよね。ガルドさん達はどうするの?」
「それなんだが……元々、セナと森で別れなければ、街に着いたときに一緒に来るか聞こうと思っていた。だが今はセナもグレンとジルベルトがいるだろう?」
ガルドさんの発言で、隣りに座っているジルに緊張が走ったのがわかった。
手を握ってあげると小さく震えている。何か不安なのかもしれないと、念話で聞いてみたけど、言いにくいのか口ごもって教えてもらえなかった。
ガルドさん達にはまだパパ達のことも話していないし、コテージやキヒターの教会のことも知らない。一緒は嬉しいけどどうしようかと考えていると、グレンが口を開いた。
〈クランを組めばいい。昔と変わっていなければギルドで組める〉
「クラン?」
〈クランはパーティの集まりだ。普段は各パーティで行動できる。クランを組んでおけば、二つ以上のパーティで行動していても咎められる謂れはない〉
「んん? 二つ以上のパーティが一緒にいたら怒られるの?」
〈ガルド達はSランクだろ? 基本的に高ランクの冒険者を、国は囲い込もうとする。何かあったときの戦力になるからな〉
「あぁ……なるほど」
高ランク者がこぞって移動したら国は困るワケだ。でもクランを組んでたら文句は言わないと。私は高ランクじゃないけど、グレンがいるもんね……
それはいいかもしれない。常にベッタリだと、何か用があって転移で飛ぶときに困るし、パパ達から許可を得るまでコテージで作業もできない。でも一緒がいい、ワガママな私にピッタリじゃん!
「それができるなら俺達は構わないが……聞いたことないぞ?」
〈ふむ。そう簡単にギルドの仕組みは変わらないとは思うが……ダメだったらアーロンに言って許可させればいい〉
「そんなこと言えるかよ……」
〈我が言ってやる〉
グレンがガルドさんにニヤリと笑いかけると、ガルドさんは降参だと両手を上げた。
「じゃあ、早速行ってみよー!」
「セナっち元気になったねー」
「うん! みんなと一緒にいられる!」
私が満面の笑みでジュードさんに返すと、ガルドさんにガシガシと頭を撫でられた。
◇
冒険者ギルドに着くとすぐに会議室みたいな部屋に案内され、ガルドさん達は驚いていた。
「ここの待遇もすげぇな……」
〈いつもと変わらんが、今日は応接室じゃないな〉
「おそらく人数の都合じゃないでしょうか? 応接室だとソファが足りません」
〈そうか。ジルベルト、紅茶は? 冷たいのがいい〉
「かしこまりました」
グレンの変わらなさ加減にガルドさんは苦笑い。いつもだったらため息だけど、何か吹っ切れたみたい。
ジルはマジックバッグから作り置きしていたアイスティーをみんなに配っていく。
「冷たいのは初めて飲んだが美味いな」
「へぇー! 氷も紅茶なんだねー!」
「はい。この方が味が薄まらないと、セナ様が教えて下さいました」
「これもかよ……まったく、セナの頭ん中はどうなってんだ?」
ガルドさんとジュードさんにジルが言うと、ガルドさんに呆れられた。そんなガルドさんにジュードさんが「美味しいんだからいいじゃん」と肩を叩いていた。
グティーさんは息を切らせて会議室にやってきた。私のレシピの件で商業ギルドに行っていたらしい。
「急がせちゃってごめんね」
「構わない。どうかしたのか?」
〈クランを組みたい〉
グレンが言うと、グティーさんは「クラン?」と首を傾げた。
〈異なるパーティが手を組む仕組みがあっただろ〉
「…………あぁ! あるにはあるが、今は皆無と言っていいほどクランを組んでいるパーティはいないぞ?」
〈他のやつのことはどうでもいい。我の記憶では、ギルドマスターの許可が必要だったはずだ。許可しろ〉
「構わんが、署名が必要だったはずだ。待ってろ」
グレンの偉そうな態度を気にする様子もなく、グティーさんは席を立った。
戻ってきたグティーさんの両手には分厚い本といつものワープロ水晶玉が抱えられていた。
席に着くなり、その本を広げ「クラン……クラン……」と呟きながら指で本の文字を追っている。本はマニュアル本だったらしい。
「あった、あった。パーティリーダーの署名だけでいいらしい」
〈調べなきゃわからんのか……〉
「俺がギルマスになって初めてだぞ? 不備があったら困るだろうが。この紙に名前を書いてくれ」
グレンに答えたグティーさんから契約書みたいな紙を一枚受け取った。
「んん? パーティ名?」
「パーティ名というのは、ガルドさん達ですと【黒煙】です。パーティの通り名ですね」
私の疑問にジルが答えてくれた。
「ありがとう。でも私達そんなのないよ?」
「あぁ、そこは空白でもいいらしい」
「わかったー」
自分の名前を記入して、ガルドさんに渡す。
ガルドさんが署名を終えると、グティーさんがサインした。
「クラン名はどうするんだ? 過去には〝コッフア姫親衛隊〟とか〝女神の尻にしかれ隊〟とかあったらしいが……」
〈なんだそのふざけた名前は。他にまともなのはないのか?〉
「他は……〝常闇シンドローム〟〝漆黒の旅人〟〝迷宮大好き〟〝聖者の渾沌〟〝東の太陽〟……あとは〝KYO・PA・I〟……」
「却下だ。もういい」
グレンに言われて、グティーさんがマニュアル本に載っているクラン名を読み上げていくと、ガルドさんがすげなく拒んだ。
「セナ様? いかが致しました?」
「ぐふっ。だって……完っ全に、厨二病……ふふっ、ふふふ。闇属性多すぎ」
ジルは隣りでプルプルしている私を不思議に思ったみたい。
だって面白すぎでしょ! 長い詠唱の呪文でも厨二病っぽいって思ったけど、ここまでとは……
「気に、しないで。ふふふふふ……名前、どう、するの?」
「セナが主軸だからな。セナが好きな名を付けて構わん」
ガルドさんに丸投げされて、笑いが治まらないまま考える。
厨二病は嫌。絶対黒歴史になる! 私も類に漏れず、日本でやってたゲームのモンスターパーティ名に〝戦神ワルキューレ〟とか付けてたけどさ……あれはゲームだから許されたんだよ!
恥ずかしくない、仲間っぽいのがいいよねぇ……
「〝女神降臨〟などはいかがですか?」
「ぶっ! いや、ジル。私女神じゃないから」
突然ジルに言われて吹き出しちゃったけど、そのおかげか笑いが止まった。
私が断ると、ジルは「そうですか……」と肩を落とした。
いやいや、ジルさん。なんでそんなに残念そうなの? ジルまでキヒターみたいなこと言わないで。
「では〝慈愛の天使〟はどうでしょうか?」
「いやいやいや! まず、みんなが使う通り名だからね!?」
ご勘弁を! どんだけジルは私を神格化してるの! いや、信者なのはわかってるけどさ!
私が焦っていると「ジルベルトが普段セナをどう思ってるのかが丸わかりだな……」とガルドさんの声が聞こえた。
「もっと、こう……家族とか仲間っぽいのがいい……」
〈なら〝セナと仲間〟か?〉
「まんまじゃん……」
グレンの案は〝セナと愉快な仲間たち〟になりそうだから辞めていただきたい……まだファミリアの方がマシだよ。
「うーん……」
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