文字の大きさ
大
中
小
203 / 500
第二部 10章
マースールー迷宮たる所以【6】
戦闘が終わり、戦っていたガルドさん達はお疲れモード。
手伝えなくて申し訳ない……
〈セナ、これはなんだ? 魔道具らしいがどうやって使う?〉
グレンがボスの宝箱から持ってきたのは、まさかの筋トレグッズだった。
「これ、腹筋ローラーだよ。おなかの筋肉鍛えるの。魔道具なんだね……」
口頭でやり方を説明すると、グレンは興味を失ったみたい。まぁ、グレンはナイスボディだから必要ないと思う。
エルミスに抱っこされたままみんなのところへ行くと、ガルドさん達も腹筋ローラーを持っていた。なんと十八個も入っていたらしい。ここにいる全員、一人一台もらえる数だった。
アーロンさんへのお土産の魔道具を回収して私達は続き部屋へ。
私はまだ気持ち悪いし、ガルドさん達もお疲れなので今日はここまで。昨日よりも進めていない。
「ご飯作らないと……」
「セナっちは休んでなよー。顔色悪いよー?」
「でも……」
「……ダメ」
ジュードさんが大変になっちゃうと反論しようとすると、コルトさんに却下されてしまった。
私は大きくなったアクランの膝の上に座らされて、周りをネラース達が固めた。モフモフのアニマルセラピー。
ジュードさんが作ってくれたご飯を食べて落ち着いた頃、私は熱を出した。
みんなに浄化の結界を常時張っていたことによる魔力消費と、イモムシが嫌いすぎて体が拒否反応を起こしたらしい。
「セナ様、セナ様」と甲斐甲斐しくお世話してくれるジルにガルドさんは苦笑い。
結局、熱が下がるまで二日もかかってしまった。
その間、基本的にみんなは私から離れず、お世話になりっぱなしだった。
復活した日の朝、私が朝食を作っていると起きたジュードさんに怒られてしまった。もう大丈夫だと説明したのに「病み上がりなんだから休んでなきゃダメでしょー!」とコンロ前から追い払われた。
肩を落とした私をモルトさんとコルトさんが慰めてくれる。
「……ジュードさん、心配してる」
「もう元気だよ?」
「グレンに聞きましたが、以前も無理して倒れたんですよね? 高熱でうなされていたと」
それは多分、魔力拡張のときだな……あれは普通に倒れたとはちょっと違うと思うんだけど、どう説明すればいいのか……
「……結界、魔力消費激しい」
「マジックポーションあるよ?」
「……無理はよくない」
「ええ。自分達も心配していますから、休めるときは休んで下さい」
むむむ……過保護に拍車がかかってる気がするぞ! グレンさん何言ってくれてるの!
大丈夫だと言ってもみんな聞いてくれなくて、私はそんなに信用がないのかとショックを受けた。まぁ、確かにダンジョンで熱を出すとかダメだと思うし、心配してくれているのもわかるんだけどさ……
そのままジュードさんが仕上げてくれた朝ご飯を食べて出発することになった。
エルミスに強制的に抱っこされて、三十二階層に降りる。
降りた先はまたガラリと変わり、草原エリアだった。所々に木は生えているものの、広場タイプでものすごくだだっ広い草っ原。
「ニワトリ?」
〈ほう! ドゥードゥーか! 久しぶりに見たな。セナ! アレの卵は美味しいぞ!〉
一回り大きいニワトリだと思ったら、魔物だったらしい。
グレンの〝美味しい〟発言で、ネラース達のやる気はうなぎ登りに。ジュードさんまで「いっぱい狩ろう!」とテンションが上がってしまった。
テンション高く狩りに行ってしまったネラース達を見て、ジュードさんがソワソワ。ジュードさんも美味しい食材に目がないみたい。
ドロップ品が卵とは限らないって思ったけど、卵だったみたいでグレンがネラース達に〈たくさん狩って来い〉と言っている声が聞こえた。
「じゃあ、俺達も狩ってくる。セナは階段を探してくれ」
「はーい」
苦笑いのガルドさんに言われて、私と精霊達は階段探し。
散らばった方が早いと思うのにエルミスが降ろしてくれないため、私はエルミスの腕の中でキョロキョロしているだけ。お荷物感がハンパない。
「あ! あったよー」
私が声をかけてもみんな狩りに夢中。念話を飛ばしてようやく気が付いてもらえた。
ニヴェスがガルドさん達を案内してくれ、全員集合。みんなはもうちょっと狩りたかったらしい。
そんなみんなの気持ちに応えるかのように、草原とニワトリのセットの階層が続いて、卵の在庫は大量になった。
三十六階層のボスは日本のニワトリサイズの七面鳥がたくさん。ターキーが大量に手に入って私のテンションが上がった。
三十七階層から四十階層も草原エリア。ここは一回り大きい軍鶏と烏骨鶏の二種類出てきた。
グレンいわく、ニワトリもそうだけどこの二種類も狩られまくって、今じゃ見かけることがほとんどないらしい。
ここでは軍鶏肉と烏骨鶏の卵が大量に手に入って私もジュードさんも大満足。
四十一階層のボスはここへきてまさかのマッチョシリーズ。五メートルはありそうな巨大な鳩がポーズをキメていた。
胸を膨らませ、羽を広げ、私達をチラ見して静止。反応しない私達に次のポーズを取ってまたチラ見。
「またこのパターン? 臭い虫とかイモムシよりは全然いいけどさ……」
〈さっさと終わらせるぞ。セナは待ってろ〉
「えぇー! …………わかった」
抗議の声を上げたらグレンに目で訴えられて、私は渋々承諾。
ニワトリもそこそこの耐久力があったけど、みんなにかかれば余裕。それでも三十分ほどかかっていた。
このメンバーでこれだけの時間がかかるとしたら、昔このダンジョンに入った人はどれだけ強かったのか……そんなにプロテインパワーはすごいのか……謎だ。
ドロップ品はお肉だったんだけど……日本では鳩を食べる習慣がなかったから、ちょっと微妙。中国では食べられているのもフランス料理で使われるのも、一応知ってはいるんだけどね。
卵狩りに時間をかけたせいで今日はこの続き部屋で休むことに。
朝ご飯と同じく私はネラース達に囲まれ、ジュードさんが夜ご飯を作ってくれた。
何もしなさすぎて申し訳ない。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。