文字の大きさ
大
中
小
204 / 500
第二部 10章
マースールー迷宮たる所以【7】
翌朝、四十二階層に降りると、砂漠エリアの広場タイプだった。ダンジョンの中なのにジリジリと太陽に照らされる感覚に襲われる。
壁があるハズなのに見えない。
「暑いな……ってなんで平気そうなんだよ……」
「服に自動温度調節付いてるから?」
「オレっちの服も一応付いてるハズなんだけど暑いよー」
私とプルトンが闇魔法で日陰を作っているし、エルミスが水と氷魔法で紛らわせてくれてるんだけど、暑いもんは暑いらしい。
クラオルとグレウスは私の服の中に避難して、首元から顔だけ出している。
アクランは暑さにバテてしまい、影の中に入ってもらった。
「ねぇ、ガルドさん。これ地面、砂しかないけど、階段ってどうやって見つけるの?」
「俺達もダンジョンの砂漠は初めてだ」
〈通常は階段のところだけ砂がないんだが……〉
ガルドさん達もわからないとのことで、グレンに顔を向けると教えてくれた。けど……
「何その含みがある言い方……」
〈落とし穴のように下層に落ちる場合もある〉
「え!? マジ!?」
〈マジだ〉
グレンは大真面目に頷いた。
多分、砂時計みたいに滑り落ちる感じだよね?
「それって……みんなバラバラになる可能性出てこない?」
〈うむ。なるべく離れない方がいいな〉
「「マジか……」」
私とガルドさんの声がハモった。
一つ上の階のボスがアレだったから、嫌な予感がしてたんだけど……現れた魔物は予想通り、ポージングを取った。
「サソリまでブーメランパンツ穿いてキメるのね……」
砂の中から出てきたサソリはポーズをキメた瞬間、アルヴィンによって狩られた。ドロップ品はまたプロテイン。効果が(微)から(弱)に変わっていた。
ガルドさん達もネラース達も砂漠の暑さで元気がない。
砂のせいで歩きにくくて体力も奪われていく。
ネラース達に影に入るか聞いたけど嫌がられ、バテ気味のネラース達の代わりにアルヴィンとウェヌスが魔物を担当してくれた。
階段が見つからなくてウロウロすること二時間……ようやく階段を見つけて下層に降りられた。
「また砂漠……これ、今までの感じだと砂漠続くのかな?」
「ありえるな……」
「さすがにこう暑いとキツいですね……」
モルトさんの疲労が滲む声を聞いて見上げると、モルトさんだけじゃなくてみんな汗を大量にかいていた。唯一平気そうなのはグレンだけ。
私も氷魔法で冷やそうとしたら、「この先のことを考えてやめておけ」とガルドさんに言われてしまった。
それならと以前作った保冷剤を配るとガルドさん達は大喜び。ジュードさんが保冷剤に頬擦りしてプルトンに引かれていた。
そのまま砂漠エリアが続き、四十四階層でオアシスを発見。
オアシスの周りはセーフティーエリアらしく、魔物は出てこない。
ネラース達もガルドさん達もオアシスの泉で水浴びして、スッキリとしたところで遅いお昼ご飯。
ダンジョンの砂漠はどこからか風が吹いてきて砂が舞い、ゆっくりと休憩できる場所がなかった。
「あぁー……生き返ったぜ」
「このパラソル? というものは便利ですね」
「……この保冷剤もすごい」
「さっき食べたシャベーットがいいよ!」
モルトさん、コルトさん、ジュードさんが褒めてくれた。でもジュードさん、〝シャベーット〟じゃなくて〝シャーベット〟だよ。
そんな三人にグレンが〈セナが作ったやつだからな!〉とドヤ顔を披露している。
私達は私のマップのおかげで、このだだっ広い砂漠でも迷子になっていないけど、マップがなかったら彷徨うことになっていたと思う。マップを付けてくれたパパ達に感謝しないと。
私達をずっと冷やしていてくれたエルミスに魔力は大丈夫なのか聞くと、今くらいの消費量なら夜までは大丈夫らしい。これ以上だと辛いみたい。プルトンは日陰を作っているだけだから大丈夫なんだそう。
一応エルミスとプルトンにはマジックポーションを飲んでもらった。
充分に休憩したところで気合いを入れて出発。熱中症にならないように水分と塩分補給もしながら砂漠を歩いていく。
時間がかかりながらも階段を見つけて下層へ。
四十六階層のボスは二メートルほどのゴーレムが五体だった。
ゴーレムは言わば石の人形。アニメやゲームに出てくるあの感じまんま。
ただ、気になるのは何故か石のボディがテカっていること。
そしてそのゴーレムもマッスルポーズでキメていて、いい加減しつこいダンジョンのアピール具合に私達は辟易。
ゴーレムは、体内のどこかにある核と呼ばれている部分を破壊しないと再生し続ける。
そう。スライムと同じように。
「ちょっと面白そう」
〈セナ?〉
「おい、何で笑ってる? 変なこと考えてるんじゃねぇだろうな?」
「ふふふ」
「また笑って誤魔化しやがって……」
ガルドさんに怪訝そうに見られたけど、気にしない。
今回は五体いるから私も参戦させてもらおう。
地面は砂だから気をつけないとね。
私は刀と短剣を両手に握り、みんなとタイミングを合わせてゴーレムに突撃。
「おぉ! さすがイグ姐の刀!」
動きが遅いゴーレムの腕が抵抗感もなくスパッと切れて私はニンマリ。
クラオルとポラルがゴーレムの攻撃の邪魔をしてくれたおかげだ。
切り落とした腕はそのままで、ボディの方から腕がズズズズズと再生されていく。
「なるほど。核が再生を担うってことは、落とした腕に核はないのね」
クラオルとポラルに声をかけ、クラオル達が動きを阻害してくれた瞬間を狙って手足を切り落としていく。
再生力に限りがあるのか、だんだんと再生するスピードが落ちてきた。
――――グゴオオオオオオオ!!
感情があるのか、はたまた暴走か……ゴーレムは目を赤く光らせ、先ほどとは打って変わって攻撃してくるスピードが上がった。
『くっ! 主様、力も強くなってるわ。早く決着つけて』
「わかった! グレウス! ゴーレム転ばせて!」
『はいっ!』
私がお願いすると、グレウスは地面をボコッと盛り上げてゴーレムのバランスを崩してくれた。
すかさず足を切り落とし、予想を付けていたゴーレムの下っ腹を刀の柄で殴り付ける。ヒビが入ったボディからチラりと色の異なるものが見えた。
「ビンゴ!」
横たわったゴーレムのお腹のヒビを広げるようにガンガンと柄を振り下ろし、核をゲット!
手の平に乗せた核がプルプルと小刻みに震え始め、核の周りには砂が集まってきてしまった。周りの砂でゴーレムを形作っていたらしい。
これはまずいと咄嗟に核に魔力を流すと、色が変わって振動が止まった。
核ではなくボディがあった場所にダンジョンボスの宝箱が出現していた。
「ふぅ。三人ともありがとうー! 無事手に入ったよ!」
『んもう! またおかしなことして!』
クラオルにペシペシと抗議されながら、みんなの戦闘は終わったかなと振り向くと、みんなから注目を浴びていた。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。