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第二部 10章
国王の望む物
コテージに泊まった翌朝、ガルドさん達はお肌がツヤツヤだった。
お風呂でスッキリして、コテージのベッドで癒されたらしい。
「これに慣れたら抜け出せなくなりそうだ……」とガルドさん談。
その日はダンジョンのドロップ品を選別したり、ジルの弓矢やガルドさん達の食器を作ったりと、私は忙しく動いていた。
その間ガルドさん達はコテージ内で各々バラバラに行動していたみたい。ジュードさんは丸一日ほとんどキッチンですごしていたらしく、「何もないのに笑ってて不気味だった」とプルトンに引かれていた。
◇ ◆ ◇
今日はリシクさんのお迎えで王城へ。
若干緊張気味のガルドさんは、リシクさんに「本日は執務室になります」と言われてホッとしていた。
私達が執務室に入ると、ウキウキした様子のアーロンに迎えられた。部屋にはアーロンさんの他にレナードさんとドナルドさんもいた。
「で、どうだった!? クリアしたのか?」
「クリアはしたよ。一応ね」
「一応? なんか引っかかる言い方だな……何があった?」
ソファに座るなり聞いてきたアーロンさんに答えると、アーロンさんは眉を寄せた。
おちゃらけた雰囲気がなくなり、真剣な顔になったアーロンさんに、おばあちゃん達に相談した内容を話していく。
「――で、一番最後のボスがカイザーコングだったんだよね。だから普通の人には厳しいと思う」
「「「「カイザーコング!?」」」」
アーロンを筆頭に、リシクさん、レナードさん、ドナルドさんまで目を見開いた。
「…………なるほど……伝説の魔獣まで……ドロップ品はどうだった?」
「それは多分気に入ると思うよ。ただ……いや、先に見せるね」
私はダンジョンのドロップ品を出しながら、鑑定結果を交えて摂取方法も説明していく。
私の解説を聞きながらどんどん瞳を輝かせていくアーロンさん。
「これはすごいな! 飲むだけで強くなれるとは!」
「鍛えなきゃ意味ないよ?」
「それでもだ! これがあればもっと強くなれる!」
「しかし陛下!」
予想通りプロテインに大興奮しているアーロンさんに、レナードさんが咎めるように話しかけた。
「なんだ?」
「セナ様方以外が入れないダンジョンとなると、むやみやたらに飲むことはオススメ致しません。いくら今は膨大な数をセナ様が取ってきて下さったとはいえ、いずれ底を尽きてしまいます」
「む……そうか……そうだな……」
いや、アーロンさん! 私を捨てられた子犬みたいな目で見ないで! 私はもう入りたくないよ!
「セナ……」
「ヤダよ! 超大変だったんだから!」
〈我も拒否する。セナが使える食材がロクにないダンジョンに用はない〉
「ムゥ……」
そんな子供みたいに口尖らせても行かないからね!
「アーロン、お嬢にばっかり負担をかけるな」
「わかってる……」
注意したドナルドさんにわかってると言いつつ、未練がましく私を見てくるアーロンさんに、レナードさんがため息を吐いた。
「セナ様、おおよそで構いませんので【マッスル粉】の数量を教えていただいても?」
「微々、微、弱、中、全部合わせたら一万以上だよ。ちなみに【堅骨粉】は私も欲しいから、渡せるのは千くらい」
「一万!? そ、そんなにですか……大変貴重な物ですので全てを買い取るのは難しいかもしれません……」
「それは全然いいよ。ギルドに売ったりしないから安心して。他に魔道具もあったけど、そっちはどうするの?」
「魔道具……おそらく二度と手に入らないよな……欲しいが、【マッスル粉】が……」
「陛下、とりあえずその魔道具を見せていただいては?」
レナードさんに言われて、筋トレグッズを出していく。
アーロンさんは私が出したのを手に取り、どうやって使うのか聞いてきた。
「それはウエイト。手足に巻き付けて使うんだけど、込めた魔力量で重さが変わるんだよ」
全ての魔道具の説明をすると、アーロンさんもレナードさんも揃って悩み始めてしまった。
完全に予算の都合だよね。私的にはいらないから安くて構わないんだけど……今回はガルドさん達も一緒だし、グレンとジルに前もって言われてるから相応の値段じゃないと売れない。
長くなりそうだけど、私は他のことも話したい。
「どうせ私が持ってるんだから分割で買うのはダメなの?」
「「「「!」」」」
四人にバッ! っと顔を向けられ、ビクッと反応してしまった。
視線が強すぎだよ……
「いいのか?」
「遠い場所にいたら、ここに来るのが遅くなっちゃうかもしれないけど、それでもよければ全然いいよ~。どっちみち決めるの時間かかるでしょ? 二、三日で決めてくれれば大丈夫。それよりちょっと相談があるんだよね」
「相談?」
アーロンさんがプロテインから意識を逸らしたところで、あそこで一人ダンジョンを守っていたグーさんのことを話していく。
「――だから、タルゴー商会辺りが配達に回って欲しいんだよ。ただ、グーさんは完全に自給自足なのね。当時の王様が命令した一族の末裔なのに、忘れ去られるなんて可哀想でしょ?」
「なるほど。責任持って生活物資を届けさせろってことか」
「さすがアーロンさん! 大正解!」
「そうだな。王族のせいならこちらが費用も全て持とう。リシク、タルゴー商会を呼べ」
「ハッ!」
アーロンさんが命令すると、リシクさんは部屋から出て行った。
リシクさんに連れられて執務室の訪れたタルゴー商会のリシータさんにグーさんのことを説明。グーさんがグールということに驚かれてしまい、危険がないことを力説すると、笑いながら快く了承してくれた。
これでグーさんの食生活も安心。壊れていた壁の修理もグーさん一人で苦労しなくて済む。
リシータさんは早速商会に戻って、手はずを整えてくれるらしい。早々に退室していった。
「そうそう。セナがダンジョンに行っている間に周辺国を集めてカレーを披露した。大好評で自国でも食べたいと言っていたぞ」
「おぉ~。よかったね」
「これで観光客も増えるだろう。セナが教えた各店も繁盛している。そこで……」
笑顔で話始めたアーロンさんが一瞬にして真顔になった。
「以前話したセナを嗅ぎ回っている貴族の件なんだが……」
「あぁー。謁見のときアーロンさんが牽制したやつね。それがどうかしたの?」
「そこそこのやつを捕まえたから、指示を出していた者は証拠が上がり次第捕縛だ。まだ完全には安心できないが、アーノルドが見張っている」
「おぉー! 思ってたより早いね! ありがとう! 危ないから気を付けろ系かと思っちゃったじゃん」
「俺も時間がかかるかと思っていたんだが、セナのことになると途端にやる気を出すヤツらがいてな……」
アーロンさんの視線の先にはドナルドさん。と、いうことは、頑張って調べてくれていたのはドナルドさんが率いる隠密に属している人達。
創世の女神のことを調べていたときに手伝ってくれたあの人達かな?
私がお礼を言うと、ドナルドさんは視線を外して右手を振った。照れているらしい。
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