文字の大きさ
大
中
小
215 / 500
第二部 10章
国王の望む物
コテージに泊まった翌朝、ガルドさん達はお肌がツヤツヤだった。
お風呂でスッキリして、コテージのベッドで癒されたらしい。
「これに慣れたら抜け出せなくなりそうだ……」とガルドさん談。
その日はダンジョンのドロップ品を選別したり、ジルの弓矢やガルドさん達の食器を作ったりと、私は忙しく動いていた。
その間ガルドさん達はコテージ内で各々バラバラに行動していたみたい。ジュードさんは丸一日ほとんどキッチンですごしていたらしく、「何もないのに笑ってて不気味だった」とプルトンに引かれていた。
◇ ◆ ◇
今日はリシクさんのお迎えで王城へ。
若干緊張気味のガルドさんは、リシクさんに「本日は執務室になります」と言われてホッとしていた。
私達が執務室に入ると、ウキウキした様子のアーロンに迎えられた。部屋にはアーロンさんの他にレナードさんとドナルドさんもいた。
「で、どうだった!? クリアしたのか?」
「クリアはしたよ。一応ね」
「一応? なんか引っかかる言い方だな……何があった?」
ソファに座るなり聞いてきたアーロンさんに答えると、アーロンさんは眉を寄せた。
おちゃらけた雰囲気がなくなり、真剣な顔になったアーロンさんに、おばあちゃん達に相談した内容を話していく。
「――で、一番最後のボスがカイザーコングだったんだよね。だから普通の人には厳しいと思う」
「「「「カイザーコング!?」」」」
アーロンを筆頭に、リシクさん、レナードさん、ドナルドさんまで目を見開いた。
「…………なるほど……伝説の魔獣まで……ドロップ品はどうだった?」
「それは多分気に入ると思うよ。ただ……いや、先に見せるね」
私はダンジョンのドロップ品を出しながら、鑑定結果を交えて摂取方法も説明していく。
私の解説を聞きながらどんどん瞳を輝かせていくアーロンさん。
「これはすごいな! 飲むだけで強くなれるとは!」
「鍛えなきゃ意味ないよ?」
「それでもだ! これがあればもっと強くなれる!」
「しかし陛下!」
予想通りプロテインに大興奮しているアーロンさんに、レナードさんが咎めるように話しかけた。
「なんだ?」
「セナ様方以外が入れないダンジョンとなると、むやみやたらに飲むことはオススメ致しません。いくら今は膨大な数をセナ様が取ってきて下さったとはいえ、いずれ底を尽きてしまいます」
「む……そうか……そうだな……」
いや、アーロンさん! 私を捨てられた子犬みたいな目で見ないで! 私はもう入りたくないよ!
「セナ……」
「ヤダよ! 超大変だったんだから!」
〈我も拒否する。セナが使える食材がロクにないダンジョンに用はない〉
「ムゥ……」
そんな子供みたいに口尖らせても行かないからね!
「アーロン、お嬢にばっかり負担をかけるな」
「わかってる……」
注意したドナルドさんにわかってると言いつつ、未練がましく私を見てくるアーロンさんに、レナードさんがため息を吐いた。
「セナ様、おおよそで構いませんので【マッスル粉】の数量を教えていただいても?」
「微々、微、弱、中、全部合わせたら一万以上だよ。ちなみに【堅骨粉】は私も欲しいから、渡せるのは千くらい」
「一万!? そ、そんなにですか……大変貴重な物ですので全てを買い取るのは難しいかもしれません……」
「それは全然いいよ。ギルドに売ったりしないから安心して。他に魔道具もあったけど、そっちはどうするの?」
「魔道具……おそらく二度と手に入らないよな……欲しいが、【マッスル粉】が……」
「陛下、とりあえずその魔道具を見せていただいては?」
レナードさんに言われて、筋トレグッズを出していく。
アーロンさんは私が出したのを手に取り、どうやって使うのか聞いてきた。
「それはウエイト。手足に巻き付けて使うんだけど、込めた魔力量で重さが変わるんだよ」
全ての魔道具の説明をすると、アーロンさんもレナードさんも揃って悩み始めてしまった。
完全に予算の都合だよね。私的にはいらないから安くて構わないんだけど……今回はガルドさん達も一緒だし、グレンとジルに前もって言われてるから相応の値段じゃないと売れない。
長くなりそうだけど、私は他のことも話したい。
「どうせ私が持ってるんだから分割で買うのはダメなの?」
「「「「!」」」」
四人にバッ! っと顔を向けられ、ビクッと反応してしまった。
視線が強すぎだよ……
「いいのか?」
「遠い場所にいたら、ここに来るのが遅くなっちゃうかもしれないけど、それでもよければ全然いいよ~。どっちみち決めるの時間かかるでしょ? 二、三日で決めてくれれば大丈夫。それよりちょっと相談があるんだよね」
「相談?」
アーロンさんがプロテインから意識を逸らしたところで、あそこで一人ダンジョンを守っていたグーさんのことを話していく。
「――だから、タルゴー商会辺りが配達に回って欲しいんだよ。ただ、グーさんは完全に自給自足なのね。当時の王様が命令した一族の末裔なのに、忘れ去られるなんて可哀想でしょ?」
「なるほど。責任持って生活物資を届けさせろってことか」
「さすがアーロンさん! 大正解!」
「そうだな。王族のせいならこちらが費用も全て持とう。リシク、タルゴー商会を呼べ」
「ハッ!」
アーロンさんが命令すると、リシクさんは部屋から出て行った。
リシクさんに連れられて執務室の訪れたタルゴー商会のリシータさんにグーさんのことを説明。グーさんがグールということに驚かれてしまい、危険がないことを力説すると、笑いながら快く了承してくれた。
これでグーさんの食生活も安心。壊れていた壁の修理もグーさん一人で苦労しなくて済む。
リシータさんは早速商会に戻って、手はずを整えてくれるらしい。早々に退室していった。
「そうそう。セナがダンジョンに行っている間に周辺国を集めてカレーを披露した。大好評で自国でも食べたいと言っていたぞ」
「おぉ~。よかったね」
「これで観光客も増えるだろう。セナが教えた各店も繁盛している。そこで……」
笑顔で話始めたアーロンさんが一瞬にして真顔になった。
「以前話したセナを嗅ぎ回っている貴族の件なんだが……」
「あぁー。謁見のときアーロンさんが牽制したやつね。それがどうかしたの?」
「そこそこのやつを捕まえたから、指示を出していた者は証拠が上がり次第捕縛だ。まだ完全には安心できないが、アーノルドが見張っている」
「おぉー! 思ってたより早いね! ありがとう! 危ないから気を付けろ系かと思っちゃったじゃん」
「俺も時間がかかるかと思っていたんだが、セナのことになると途端にやる気を出すヤツらがいてな……」
アーロンさんの視線の先にはドナルドさん。と、いうことは、頑張って調べてくれていたのはドナルドさんが率いる隠密に属している人達。
創世の女神のことを調べていたときに手伝ってくれたあの人達かな?
私がお礼を言うと、ドナルドさんは視線を外して右手を振った。照れているらしい。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。