文字の大きさ
大
中
小
216 / 502
第二部 10章
国王の望む物
コテージに泊まった翌朝、ガルドさん達はお肌がツヤツヤだった。
お風呂でスッキリして、コテージのベッドで癒されたらしい。
「これに慣れたら抜け出せなくなりそうだ……」とガルドさん談。
その日はダンジョンのドロップ品を選別したり、ジルの弓矢やガルドさん達の食器を作ったりと、私は忙しく動いていた。
その間ガルドさん達はコテージ内で各々バラバラに行動していたみたい。ジュードさんは丸一日ほとんどキッチンですごしていたらしく、「何もないのに笑ってて不気味だった」とプルトンに引かれていた。
◇ ◆ ◇
今日はリシクさんのお迎えで王城へ。
若干緊張気味のガルドさんは、リシクさんに「本日は執務室になります」と言われてホッとしていた。
私達が執務室に入ると、ウキウキした様子のアーロンに迎えられた。部屋にはアーロンさんの他にレナードさんとドナルドさんもいた。
「で、どうだった!? クリアしたのか?」
「クリアはしたよ。一応ね」
「一応? なんか引っかかる言い方だな……何があった?」
ソファに座るなり聞いてきたアーロンさんに答えると、アーロンさんは眉を寄せた。
おちゃらけた雰囲気がなくなり、真剣な顔になったアーロンさんに、おばあちゃん達に相談した内容を話していく。
「――で、一番最後のボスがカイザーコングだったんだよね。だから普通の人には厳しいと思う」
「「「「カイザーコング!?」」」」
アーロンを筆頭に、リシクさん、レナードさん、ドナルドさんまで目を見開いた。
「…………なるほど……伝説の魔獣まで……ドロップ品はどうだった?」
「それは多分気に入ると思うよ。ただ……いや、先に見せるね」
私はダンジョンのドロップ品を出しながら、鑑定結果を交えて摂取方法も説明していく。
私の解説を聞きながらどんどん瞳を輝かせていくアーロンさん。
「これはすごいな! 飲むだけで強くなれるとは!」
「鍛えなきゃ意味ないよ?」
「それでもだ! これがあればもっと強くなれる!」
「しかし陛下!」
予想通りプロテインに大興奮しているアーロンさんに、レナードさんが咎めるように話しかけた。
「なんだ?」
「セナ様方以外が入れないダンジョンとなると、むやみやたらに飲むことはオススメ致しません。いくら今は膨大な数をセナ様が取ってきて下さったとはいえ、いずれ底を尽きてしまいます」
「む……そうか……そうだな……」
いや、アーロンさん! 私を捨てられた子犬みたいな目で見ないで! 私はもう入りたくないよ!
「セナ……」
「ヤダよ! 超大変だったんだから!」
〈我も拒否する。セナが使える食材がロクにないダンジョンに用はない〉
「ムゥ……」
そんな子供みたいに口尖らせても行かないからね!
「アーロン、お嬢にばっかり負担をかけるな」
「わかってる……」
注意したドナルドさんにわかってると言いつつ、未練がましく私を見てくるアーロンさんに、レナードさんがため息を吐いた。
「セナ様、おおよそで構いませんので【マッスル粉】の数量を教えていただいても?」
「微々、微、弱、中、全部合わせたら一万以上だよ。ちなみに【堅骨粉】は私も欲しいから、渡せるのは千くらい」
「一万!? そ、そんなにですか……大変貴重な物ですので全てを買い取るのは難しいかもしれません……」
「それは全然いいよ。ギルドに売ったりしないから安心して。他に魔道具もあったけど、そっちはどうするの?」
「魔道具……おそらく二度と手に入らないよな……欲しいが、【マッスル粉】が……」
「陛下、とりあえずその魔道具を見せていただいては?」
レナードさんに言われて、筋トレグッズを出していく。
アーロンさんは私が出したのを手に取り、どうやって使うのか聞いてきた。
「それはウエイト。手足に巻き付けて使うんだけど、込めた魔力量で重さが変わるんだよ」
全ての魔道具の説明をすると、アーロンさんもレナードさんも揃って悩み始めてしまった。
完全に予算の都合だよね。私的にはいらないから安くて構わないんだけど……今回はガルドさん達も一緒だし、グレンとジルに前もって言われてるから相応の値段じゃないと売れない。
長くなりそうだけど、私は他のことも話したい。
「どうせ私が持ってるんだから分割で買うのはダメなの?」
「「「「!」」」」
四人にバッ! っと顔を向けられ、ビクッと反応してしまった。
視線が強すぎだよ……
「いいのか?」
「遠い場所にいたら、ここに来るのが遅くなっちゃうかもしれないけど、それでもよければ全然いいよ~。どっちみち決めるの時間かかるでしょ? 二、三日で決めてくれれば大丈夫。それよりちょっと相談があるんだよね」
「相談?」
アーロンさんがプロテインから意識を逸らしたところで、あそこで一人ダンジョンを守っていたグーさんのことを話していく。
「――だから、タルゴー商会辺りが配達に回って欲しいんだよ。ただ、グーさんは完全に自給自足なのね。当時の王様が命令した一族の末裔なのに、忘れ去られるなんて可哀想でしょ?」
「なるほど。責任持って生活物資を届けさせろってことか」
「さすがアーロンさん! 大正解!」
「そうだな。王族のせいならこちらが費用も全て持とう。リシク、タルゴー商会を呼べ」
「ハッ!」
アーロンさんが命令すると、リシクさんは部屋から出て行った。
リシクさんに連れられて執務室の訪れたタルゴー商会のリシータさんにグーさんのことを説明。グーさんがグールということに驚かれてしまい、危険がないことを力説すると、笑いながら快く了承してくれた。
これでグーさんの食生活も安心。壊れていた壁の修理もグーさん一人で苦労しなくて済む。
リシータさんは早速商会に戻って、手はずを整えてくれるらしい。早々に退室していった。
「そうそう。セナがダンジョンに行っている間に周辺国を集めてカレーを披露した。大好評で自国でも食べたいと言っていたぞ」
「おぉ~。よかったね」
「これで観光客も増えるだろう。セナが教えた各店も繁盛している。そこで……」
笑顔で話始めたアーロンさんが一瞬にして真顔になった。
「以前話したセナを嗅ぎ回っている貴族の件なんだが……」
「あぁー。謁見のときアーロンさんが牽制したやつね。それがどうかしたの?」
「そこそこのやつを捕まえたから、指示を出していた者は証拠が上がり次第捕縛だ。まだ完全には安心できないが、アーノルドが見張っている」
「おぉー! 思ってたより早いね! ありがとう! 危ないから気を付けろ系かと思っちゃったじゃん」
「俺も時間がかかるかと思っていたんだが、セナのことになると途端にやる気を出すヤツらがいてな……」
アーロンさんの視線の先にはドナルドさん。と、いうことは、頑張って調べてくれていたのはドナルドさんが率いる隠密に属している人達。
創世の女神のことを調べていたときに手伝ってくれたあの人達かな?
私がお礼を言うと、ドナルドさんは視線を外して右手を振った。照れているらしい。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。