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11章
実験と使い道
グレンとジルはコテージの中へ、エルミスはガルドさん達に付いていて、プルトンは村の情報収集に行った。
私はコテージの砂浜で、匂い鉱石に火をつけてみる。
匂い鉱石は、煙りを出しながら紅く色付いた。炎が上がるワケではなく、炭のように地味に熱を発しながら燃えていく。匂いはなんて言えばいいのか……嗅いだことあるような気はするんだけど……
「それにしてもめっちゃ煙りが出るんだね」
『クシュン!』
「大丈夫?」
『鼻がムズムズするわ』
色違いを何個か燃やしてみると、色別で香りが違うらしいことがわかった。
ただ、どの鉱石からも煙りはモクモクと大量に上がり、辺り一帯は煙たくなってしまった。
「匂いが混ざって、ちょっと気持ち悪いね」
『クシュン! これ、何かに使えるとは思えないんだけど……』
再びくしゃみをしたクラオルは、鼻をつまみながら鉱石を指さした。この匂い付きの煙りは好きになれないみたい。
鉱石に水をかけると、プスプスと音を立てながら鎮火。消せば煙りは出なくなる仕様らしい。
「うーん……何かに使えそうな気はするんだけど……」
『この煙り嗅いだら、鼻がおかしくなっちゃったわ』
『ボクもです……主の匂いが……』
グレウスは私の首に鼻をこすりつけていて、くすぐったい。
辺りに漂っている匂いを消そうと【クリーン】をかけても、鼻の調子は戻らなかった。
二人にインスタントコーヒーの香りを嗅がせて、ようやく鼻が復活。コーヒー手に入れててよかった。
「これ、魔物に襲われたときに逃げるために使われてる感じかな? 魔物避けみたいな」
『その可能性はあるわね。鼻が利かなくなるもの』
私がクラオルと話していると、コテージに行っていたグレンとジルがやってきた。
〈セナ! 見つけたぞ!〉
「見つけたって何を?」
「こちらです」
グレンとジルはコテージの書庫で、匂い鉱石についての記述がないかを調べていてくれたらしい。
ジルが見せてくれた本を覗きこむと、確かに書かれていた。
〝匂い鉱石と呼ばれている、熱すると香りを放つ鉱石もある。その香りを染み込ませた布や糸は、魔物避けのお守りとして使われている。野営時にたき火にくべて、眠る際の魔物避けに使われていたこともあった。だが、肝心の魔物が狂ったように暴れ、冒険者が就寝中に襲われる事件が頻発。そのため、昔は重宝されていたが、今は推奨されていない。どうしても使用する際は充分気をつけるべし〟
「なるほど。あの書庫の本の中からよく見つけたね」
〈ふむ! ご褒美はプリンでいいぞ!〉
「ふふふ。そういうことね」
多分、グレンも探していてくれたけど、この記述を見つけたのはジル。
あの子達と一緒に行動しているから、デザートはここ数日出していない。
食べたいって言えば普通に出してあげるのに、ご褒美としてねだるグレンが可愛い。
コテージ内のリビングに移動して、ネラース達も呼んでプリンを出した。ガルドさん達やツィンク君達を運んでくれたからね。
ただ、本を探したグレンが拗ねるので、グレンとジルはプリンとミルクプリンの二種類。ネラース達はどちらか好きな方を選んでもらった。
〈実験して、使えそうなのか?〉
「まだわかんない。クラオルとグレウスの鼻が利かなくなったのと、煙りがすごかったくらい」
〈なんだ料理には使えないのか……〉
「料理……あぁぁ! そっか! 使えるかも!」
グレンの残念そうな呟きを聞いて、使えるかもしれないと思い付いた。
ずっと食べたいと思っていたアレ。ただ、私は機械の作り方がわからない。
レシピアプリをチェックすると、アレではないけど、簡単な燻製のやり方が載っていた。
「おぉ! ちょっと実験してみようか?」
みんなに声をかけて、みんなでキッチンへ移動。
レシピアプリには〝いらない鍋やいらない土鍋〟って書いてあるけど、いらない鍋がない。
このキッチンにあるモノは基本的に日本と同じようなモノ。この世界では存在しないモノも多い。使い潰したらパパ達にお願いしないといけない。
悩んだ結果、土鍋を使うことにした。パンを渡せば精霊の〝赤〟が喜んで作ってくれそうだからね。
網は前にデタリョ商会で買ったやつ。
土鍋に赤い匂い鉱石を一つ入れ、網を置いて火をつける。
十分経っても、鉱石から煙りが出ない……焦れた私は鉱石に直接火をつけて、網の上にチーズを乗せて蓋を閉めた。匂い鉱石がウッドチップの代わりになれば、スモークチーズになるハズ。
〈すごい匂いだな……鼻が曲がる〉
「思っていたよりも煙りが出るのですね……」
換気扇を回しているけど、土鍋から漏れる煙りが多くて追いついていない。キッチン中が煙たくなり、これは終わった後、クリーンをかけまくらなきゃいけなさそう。
レシピ通り十分ほど待つと、チーズに色が着いた。レシピのように美味しそうな薄茶色ではなく、濃い焦げ茶色。燻しすぎたっぽい。
試しに食べてみると、燻製にはなっているものの、予想通り濃い。
「うーん……微妙……」
〈あんまり美味しくないな……〉
「チーズ風味の煙りを食べている感じでしょうか?」
「多分、大鍋でやれば美味しくなるとは思うけど、鍋か機械を作らないとだね。もしくは鉱石を割って、小さな欠片で作れば成功するかも」
グレンは私の言葉に懐疑的で、〈本当に美味しくなるのか?〉と疑っている。
地球で食べていたような燻製だったら、グレンも気に入るとは思うけど……実験をしないとわからない。大鍋を作っても、失敗なんてこともありえる。
仮に成功したとしても、村の人達に教えた方がいいものなのか……酪農も畜産もしていないから、村で作るとしたら燻製にするモノを買いに行かなきゃいけない。
「なんにしても、成功させなきゃ話にならないね」
『主様。やる気を上げたところ悪いけど、そろそろ眠る時間よ』
「はーい」
ジルに協力してもらって、キッチン、リビング、廊下と家中に【クリーン】をかけて回る。
ちょうどエルミスから連絡が入り、ガルドさん達戻ってきた。プルトンに念話を飛ばすと、プルトンはこのまま夜も情報収集をするらしい。
「ただいまー! セナっち実験したのー?」
「おかえり! したよ~」
「どうだったんだ?」
ガルドさんに聞かれて、リビングでチーズを渡すと首を傾げられた。
「木か?」
〈食べてみろ〉
「いただきまーす!」
怪しんでいるガルドさんの隣りで、ジュードさんがパクンと食べた。
「……んん!! 水! 水ちょーだい!」
まさか塊を一口で食べると思ってなかった私は、急いでジュードさんに水を渡す。
私からコップを受け取ったジュードさんは、ガブガブと飲み干して「ふぅー」と息を吐いた。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫ー。なんか、不思議な味だったー。チーズ?」
「そう。よくわかったね~」
ジュードさんがさっきの慌てた様子もなかったかのように普通に話し始めて、ガルドさんが呆気に取られている。
チーズと聞いて、モルトさんとコルトさんが齧ると、ガルドさんがさらに目を見開いた。
「お、おい……」
「確かに不思議な味ですね。喉が乾きます」
「……うん。でもマズくない」
〈食べないのか?〉
「うっ……わかった。食うよ。食えばいいんだろ?」
ガルドさんは意を決したように、ほんのちょびっとだけ齧って「ん?」と首を傾げた。想像した味ではなかったみたい。「食えるな……」なんて呟いた。
「これ、スモークチーズっていうんだけど、本来はもう少し香りが薄いの。作り方が成功したらお酒に合うよ」
「へぇー! どうやって作ったのー?」
やり方と、匂い鉱石でわかったことを説明すると、ジュードさんが大笑い。魔物避けの煙りを料理に使うことがツボに入ったらしい。
これからどうするかを相談して、ガルドさん達は私に付き合ってくれることになった。
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