文字の大きさ
大
中
小
226 / 502
11章
過去の栄光
朝ご飯を食べた後、ツィンク君達をガルドさん達に任せ、私はコテージで実験。
エルミスは昨日と同じくガルドさん達に付いていて、プルトンはそのまま情報収集。昨夜プルトンがちょっとだけ戻ってきて、闇の子を呼んだ。村の老人達だけじゃなく、坑道内の様子も探るらしい。
キッチンが煙りで充満するのは昨日で懲りたため、海岸にコンロを出した。
クラオルとグレウスは前にダンジョンで作ったマスク着用。マスクでも全ての匂いは遮断できない。インスタントコーヒーの粒を一粒ずつ握り、時々鼻をリセットしている。コーヒー、手に入れててよかった!
何回も何回もチャレンジして、なんとか午前中に食べられるくらいのスモークチーズが完成した。
◇
お昼ご飯をツィンク君達と食べたら、私達は街に向かう。
街へはガルドさんも一緒。ツィンク君兄弟が懐いてくれないため、気まずいらしい。
ジュードさん、モルトさん、コルトさんは村に残ってもらう。連絡のため、エルミスも居残り組。同じく、情報収集のためにプルトンにも残ってもらう。
街までは通常ならば馬車で二日。歩くと五日くらいかかる。
ツィンク君の両親の話では、村人は十日に一度、村長所有の馬車で匂い鉱石を街に卸しに行き、買い取ってもらったお金で食料を買って戻ってくるらしい。
行くメンバーは固定で、村長と他二人。残りの村人は街どころか、村の外へ出たこともない人が多いそう。
食材は村人全てに平等に振り分けられる。調味料も服も……何もかもが支給品。
村では幼いころから「村のために働け」と周囲に言われ続け、十二歳になったら坑道デビュー。そこからは熱が出ようが、身内が死のうが、毎日朝から夕方まで匂い鉱石の発掘作業。日本のブラック企業より酷いかもしれない。夜眠れるという点だけはマシかもしれないけど。
馬車はジュードさん達が泊まるため、村に置いていく。
村に残るメンバーに手を振って、私達はネラース達に跨った。
ネラース、ニヴェス、アクランに飛ばしてもらい、道中の魔物はグレンとルフスが瞬殺。
次の日のお昼前には街に着いた。
アーロンさんから連絡が来ていたらしく、門番の兵士さんに笑顔で迎えられた。
「王都だけじゃねぇのか……」
「そうですね。シュグタイルハン国内は、アーロン陛下から通達されているはずです」
「なるほどな……それでこの待遇か」
私達のギルドカードをチェックした兵士さんのニコニコ対応に、ガルドさんは驚いたみたい。
「サフロムの街へようこそ! 陛下から知らせはありましたが、まさかこの街に来られるとは思っていませんでした」
「ねぇ、お兄さん。この街の特産品とか教えてくれる?」
「あー……この街は、シュグタイルハン国の中でも小さい街なんです。他の街と違ってダンジョンが近くにありません。なので、訪れる冒険者も少ないんですよ。そうですね……強いて言えば、街の名前にもなっているサフロームという花でしょうか? 主に、染料に使われてます」
「なるほど。ありがとう!」
「いえいえ! ちょうどギルドに到着です」
案内してくれた兵士さんに再びお礼を言うと、兵士さんは元気に走って門に戻って行った。
兵士さんが街が小さいと言っていた通り、今まで寄った街よりも冒険者ギルドが小さめ。
中に入ると、冒険者は一人もおらず、職員からの注目を集めた。
真っ直ぐカウンターへ向かうと、「いらっしゃいませ!」と受け付けのお姉さんは元気よく声をかけてきた。
「悪ぃが、ギルマスを頼む」
「どういったご要件でしょうか?」
不思議そうに首を傾げたお姉さんに、私達がギルドカードを見せると「まあ! 噂のセナ様でしたか!」と大声で言われてしまった。お姉さんの声に、カウンター裏にいるギルド職員がザワザワとし始め、男性が一人走って二階に上がって行った。
人がいないからいいけど……冒険者に絡まれたくない私は苦笑い。後でギルマスに注意してもらおう。
バタバタと二階から降りてきたのは、少し緑がかった肌の、私よりも少し身長が高い女の子だった。ただ、顔の作りは大人っぽい。
「あたしがこの冒険者ギルドのギルマス、クエバだよ。ドワーフだから小さいけど、何十年も前に成人してる。見た目で判断しないでもらいたい。とりあえず応接室に行こうか」
何も言っていないのに……
容姿のことでよく年齢を聞かれるのかもしれないなと思いつつ、商業ギルドのギルマスも呼んで欲しいと頼んだ。
応接室はギルマスの身長に合わせているのか、置いてある家具が全体的に低い。私は座りやすいけど、背の高いグレンとガルドさんは座りにくそうだった。
「まさかこの街に来るとはね。素材でも売りに来たのかい? 先に言っておくけど、他の街みたいに大量には買い取れないよ」
手の平をヒラヒラとさせながら一人で喋り始めたクエバさんに、私達は顔を見合わせた。
「フィメィ村について聞きたい」
ガルドさんが訊ねると、クエバさんは「フィメィむらぁ?」と声を上げた。
「あの頑固ジジイ達の村がどうかしたのかい?」
「頑固ジジイ?」
「そうだよ。大昔、って言っても百年は経っていないか……あそこの村で採れた鉱石がバカ売れしてたんだよ。それはもう、ものすごくね。だけど問題になって、今じゃほとんど使われちゃいない。その栄光にしがみついているジジイの村だろ? いらない鉱石なんかより、薬草でも持ってきてくれた方がありがたいんだけどねー。あのジジイ共はこっちの話なんか聞く耳持たないのさ」
クエバさんは呆れたように笑っている。
「しかもあのジジイ共は、村の住民以外は〝よそもん〟とか言って毛嫌いしてるんだよ。なんでも、昔、冒険者が村の採掘現場に勝手に入って鉱石を持って行ったらしくてね。それも定かじゃないからあたしは狂言だと思ってる。過去の栄光にしがみついて独り占めしたいのさ。今じゃ頼まれたって盗みなんかしないのにね。まあ、詳しい話は商業ギルドに聞いた方がいいよ。あのジジイは冒険者ギルドにはてんで寄り付かないから」
クエバさんが話す内容から、聞きたい情報はほとんど聞けてしまった。
「なるほど……どうしようかな……」
「まさか鉱石が欲しいなんて言わないだろ? あれはグリーン玉以外、気休めのお守りにしか使われていないよ」
「あぁ……えっと……商業ギルドのギルマスが来たら話します」
「そうかい。今、お茶用意するからちょっと待ってな」
そう言って、クエバさんは応接室を出て行った。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。