転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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11章

レア鉱石の使い道



 クエバさんが用意してくれた紅茶はバニラのような香りがする、甘い紅茶だった。



 商業ギルドのギルマスは応接室に入ってくるなり、私達に向かって膝をついた。

「セナ様がこの街に来られるなんて! こんなに嬉しいことはございません! 王都より、全面的に協力しろと連絡が来ております!」
「えっと……とりあえず、ソファに座りましょ?」
「ありがとうございます。失礼します」

 商業ギルドのギルマスは人のよさそうな柔和な笑顔を浮かべる女性で、シューネと名乗った。
 シューネさんもドワーフらしく、身長はジルと同じくらい。クエバさんとは違って、肌は青みがかっている。
 ちょっと気になるのは、割烹着みたいなエプロンドレスを着ていること。この世界にもこんなデザインがあるんだとビックリ。

「本日はどうなさったんですか? セナ様の登録レシピを許可してもらえるのでしょうか?」

 ワクワクした様子のシューネさんに、フィメィ村について聞きたいことを告げると、「あぁ……あの村ですか……」と一気にテンションが下がってしまった。
 そんなシューネさんを見て、クエバさんが「な? 言っただろ?」と豪快に笑った。

「あの村の方々は匂い鉱石を卸しに来られるんですが……匂い鉱石はグリーン玉以外は買い取りたくないくらいなんです。使い道がほとんどないので……」
「お守りに使われてるんじゃ?」
「はい、使われています。ですが、そんなに量は必要ないんですよ……なのに、あの人達は他のも買い取らなきゃ、グリーン玉は売らないと……毎度大量に持って来るので、いつも処分に困っているくらいなんです」

 シューネさんは思い出したのか、疲れと呆れが滲む声で語った。

「なるほど。ってことは、金額はグリーン玉にちょっと上乗せしたくらい? グリーン玉は何に使われてるの?」
「そうです。グリーン玉は上流階級の人が好む香りなので、ドレスや下着などに香りを染み込ませるのに使います」

 シューネさんは、香りを付けることを生業なりわいとしているお店があることも教えてくれた。貴族から服を預かり、香りを付けた物を返すそう。
 匂い版クリーニング店みたいなモノかと納得した。
(貴族が好むからか……そんなにいい香りだったかな? 緑ってトイレの芳香剤みたいな香りだったと気がするんだけど……)

「昔はグリーン玉の香りを身に纏うのが一種のステータスとなっていたそうですが、今は違う物で香りを付けることが多くなっています。ただ、一定数はグリーン玉の香りを好む人がいることと、見つかりにくいので買い取り金額は高いんです。なので、処分しなきゃいけないとしても買い取ってるんですよ」

 ふむふむと聞いていると、シューネさんは段々と興奮してきたのか、声が大きくなってきた。

「なのに……あの人達は買い取り金額について、『安い』だの『昔はもっと高かった』だのと、いつもうるさいんです! 昔みたいに人気があったら、コッチもそれ相応の金額で買い取るに決まってるじゃないですか! 村人全員の生活がかかっているというから、こちらも処分の費用などは請求してないのに! しかも! わたしは知っています! アイツらはギルドで匂い鉱石を売ったその足で酒場へ行き、お酒飲んで働いている女の子に『酌をしろ』と絡むんですよ! そんなサービスはやってないお店なのに! 一度、買い取り金額を下げましたが、変わらず酒場へ。ギルドの愚痴とわたしの悪口わるぐちを散々言って村へ帰って行きました。あの、ジジイは性格が悪いんです!」

 鼻息荒くまくし立て、ドンッ! とテーブルを叩いたシューネさんは、相当ストレスが溜まっているみたい。
 「まぁ、まぁ。ちょっと落ち着きなよ」と、クエバさんが紅茶を渡してあげている。
(完全に日本のタヌキ親父じゃないか……ここにも老害がいるなんて……)
 村人には贅沢を禁止しているのに、自分は街でお酒飲むって……酷くない?
 村長は「街までの移動の労力だ!」とか言いそうだけど、それでお酒飲んだり好きなことができるなら、街に来たがる人もいると思うんだよね。

 うーん……どうしようか……
 このまま匂い鉱石の使い道を教えたら、問題の村長は〝ほれみろ〟と言わんばかりに態度の悪さに拍車がかかりそう。
 でも、あの村をなんとかして、一定数匂い鉱石を手に入れないと、私の念願の生ハムが食べられない。今回の実験で掘った匂い鉱石は半分以上使ってしまった。一生分手に入れば、匂い鉱石のことは気にしなくて済むけど……

 それにこのまま村を旅立ったら、ツィンク君ファミリーが村八分むらはちぶにされそう。
 プルトン情報では、私達〝よそもん〟と仲よくするツィンク君ファミリーの悪口わるぐちをよく聞くらしい。これは、私達と美味しそうなご飯を食べていることによる嫉妬からきているみたい。

〈どうするんだ?〉
「悩むよね……ガルドさんはどう思う?」
「そこで俺に振るのか? んー……難しいな。もし、を教えたら、村人は今よりも酷使されるだろうしな……」
「ちょっと待て」

 ガルドさんが、右手で顎髭あごひげを触りながら話している途中でクエバさんに止められた。

「酷使? 村人は酷使されているのか?」
「ああ。朝から夕方まで坑道で採掘させられて、自分の子供が行方不明になっても探しに行くこともできていなかったが……知らなかったのか?」
「なんだと!?」

 ガルドさんの説明を聞いて、クエバさんがガタン! と立ち上がった。
 村や街にはそれぞれルールがある。私は日本の感覚が強すぎて、あの村の習慣は受け付けないと思っていたけど、やっぱり特殊みたい。
 聞いてみると、「他の国はわからないけど、少なくともシュグタイルハン国では、奴隷以外の者を奴隷のように扱うことは禁止されている」と怒りで眉を吊り上げながら教えてくれた。その奴隷も最低限の生活をさせなきゃいけない決まりがあるらしい。

「そっか。禁止なら話しが早いや」
〈どうするんだ?〉
「国が禁止にしたってことは、それを言ったのは王様でしょ?」

 怒りが削がれたクエバさんとシューネさんは揃って首を傾げているけど、グレン、ジル、ガルドさんは私の発言で見当がついたみたい。

〈ククク。面白くなりそうだ〉
「自国ですので、言ってみる価値はあると思います」
「マジか……」

 と、三者三様の反応をされた。
 理解していないままのクエバさんにお願いして、アーロンさんに手紙をしたためる。厳重に封をして、宛名のところに〝至急〟と赤ペンで目立つように書いた。
 おそらく、王都のグティーさんがすぐにアーロンさんに届けてくれると思う。

「陛下への手紙?」
「そう。ここがシュグタイルハン国でよかった! これならすぐに連絡が来ると思う」
「なるほど。あたし達ギルドからの手紙より、効果がありそうだね」

 クエバさんはニヤリと笑って、手紙を送りに行ってくれた。

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