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11章
鬼母の襲来
道中の魔物は私達の担当。とは言っても、グレンが暇つぶしに狩ってくれるため、私はネラースに乗ってるだけ。
「なんか大事になっちゃったねぇ」
「狙ったんじゃないのか?」
「さすがにここまでの規模になるとは思ってなかったよー。村長にちょっとお灸を据えられたらいいなとは思ったけど」
ガルドさんからのジト目を受けて、私が答えると「まぁ、あの村は俺もひでぇとは思ったが……あんまり口出すとロクなことにならねぇからな……」と返ってきた。おそらくガルドさんもあのとき、私と似たようなことを思ったんだと思う。ガルドさん優しいし!
ガルドさんとジルと話しながら魔馬達のスピードに合わせて進み、日が陰ると野営になった。
兵士さん達はテキパキと簡易竈を作り、スープの準備を始めている。
材料は塩と肉のみ。どうも討伐隊としてカリダの北の森に行ったときのような塩お湯スープっぽい。
声をかけ、普通に食べられるスープのと串焼きの作り方を教えてあげると、やたらキラキラとした目を向けられた。
クエバさんとシューネさんにまで「干し肉をちぎって入れるだけでこんなに違うなんて!」と褒められたけど、二人が塩お湯スープを飲もうとしていたことが驚きだよ!
特にシューネさんはスープの煮込み段階になってから「これも入れたら美味しいですか?」なんて、マジックバッグからポンポンと野菜を出してきた。使ってもいい食材を持っているならもっと早く出て欲しかったと思ったのは私だけじゃないと思う。
◇
朝早くから再び移動し始め、お昼ご飯以外は走り続ける。
頑張れば夜のうちに着けそうだったけど、暗い中にこの人数の移動は危険だと判断してもう一泊。
また朝早くから移動を開始して、村に着いたのはまだ朝と呼べる時間だった。エルミス情報ではちょうど朝ご飯タイムらしい。
私達が村にゾロゾロと入ると、ものすごく注目を浴びた。
「村長! 出ていらっしゃい!」
村の入り口近くでルシールさんが声を張り上げた。
てっきり私は村長宅に向かうもんだと思ってたのに、ルシールさんは我慢ができなかったらしい。
キツめの目がさらに吊り上がっていて、持っている扇をパンパンと手に打ち付けている。
着ているのは割烹着なのに、扇を持っているのは貴族あるあるなんだろうか? 貴族の武器的な?
ルシールさんの大声で、村人も集まり始めている。
村人が呼びに行ったのか、村長が現れた。
「なんだ! 騒々しい! 匂い鉱石の価値もわからん領主が何の用だ! よそもんはさっさと去れ! お前達もだ! さっさと飯食って働かんか!」
村長は持っていた杖でガンガンと地面を鳴らし、怒鳴り散らした。
村長に怒鳴られた村人はビクりと反応して縮こまってしまった。
「フィメィ村村長……あなたはフィメィ村の村民を無理矢理働かせているのですね?」
「フン! 領主に何がわかる! お前らが昔のように買い取れば、村は苦労することもない!」
「それさ、薬草なら冒険者ギルドが喜んで買い取るって言っただろ?」
「それに、街に来る度に商業ギルドが買い取ったお金で酒場に行ってますよね? お馴染みの三人で。そのお酒代、村人何人分の食材買えると思いますか? 少なくともこのお鍋十杯の塩スープにはなりますよ?」
ルシールさんに鼻を鳴らした村長に、クエバさんとシューネさんが告げ口のように反論。シューネさんは寸胴鍋まで出して、村人に見せつけている。
知らなかった事実に、村人は「え?」「お酒?」「薬草の方が高い?」「スープ十杯」と困惑しているみたい。
でもシューネさん……寸胴鍋十杯は言いすぎだと思う。「エール二杯ずつしか飲んでないくせに、安いお酒で女の子に絡むなんて!」って言ってたじゃん……
「計算もできないこいつらのために、わしがわざわざ運んでやっとるんだ! 少し飲むくらいでなんだ!」
「そうですか。あなたの言い分はわかりました。村の方に質問です。具合が悪くても、子供が行方不明になっても、親族が亡くなっても、坑道で採掘をしなければならないとは本当でしょうか?」
ルシールさんが真っ直ぐ村人達に問いかけると、ルシールさんの圧を感じたのか……村人はビクッと反応してからコクコクと頷いた。
「そのような行為は国によって禁止されています。わたくしの領地でこのようなことが行われていたなんて! ああ、本当にあなたには失望しました……なんて愚かな……」
ルシールさんは舞台女優のように声を張りあげ、大げさに嘆き悲しんで見せる。ほっかむりに割烹着だけど。
そのルシールさんに煽られたのか、村長が「お前らに何がわかる!」と杖を振り上げた。
私が結界を張る前に、ルシールさんは扇でいとも簡単に受け止め、さらに扇で杖をはたき落とした。
(ワーオ!)
「この大罪人が……! 村長及び、他二名拘束!」
ルシールさんのかけ声で、兵士さん達はキビキビと動き始めた。
ルシールさんが吐き捨てるように言ったセリフで、自分が言われたわけじゃないのにブルっと震えてしまった。
鬼母の雰囲気が恐ろしい……こっそりとそういうスキルでも持っているのかと鑑定しちゃったのは内緒にしておこう。ちなみに、スキルはなかったけど、称号に〝気骨稜稜〟って書かれていた。
話の感じから村長と一緒に街に来てた人だとわかったけど、私は顔も知らない。
兵士さん達は事前に話し合っていたみたいで、野次馬の中から目的の人物を引っ捕らえてロープでグルグル巻きに。私が指示することもなく終わった。
ルシールさんは村人を集めて理由を説明。村人は困惑していたけど、領主であるルシールさんに反論する人はいなかった。
少し笑っちゃったのが、アーロンさんの名前が出ても村人は誰だかわかっていなかったこと。国王だと聞いて、「国王様はアーロン様という名前なんですね」と呟いていた。自国民に名前を覚えられてないなんて……リシクさんやアーノルドさん辺りがアーロンさんをからかいそう。
説明が終わった後、村人の健康状態のチェック。これはクエバさんが担当。怪我人にはクエバさんが連れて来た冒険者がヒールをかけている。
シューネさんはチェックが終わった人に聴き取り調査。シューネさんの隣りで、ギルド職員が水晶玉みたいなのを持ってメモを取っている。これは〝鑑定玉〟というもので、鑑定のスキルを持っていなくても鑑定結果が水晶玉に表示されるらしい。
兵士さん達は村人の家の破損を直すグループ、お昼ご飯を作るグループ、ルシールさんと坑道を見て回るグループと分かれている。
「セナちゃん! おかえり!」
「ツィンク君、セブダル君ただいま!」
「今日、母ちゃん達、坑道行かないって」
「そっかー! じゃあ今日はお母さんとお父さんと遊べるね!」
「遊べる? ほんと?」
「聞いてごらん?」
ツィンク君達は何が起きたのかよくわかっていないみたい。
パタパタと両親に駆け寄って、遊べるのか聞いている。
「あはは! エルミスから聞いてたけど、こんなにいっぱい兵士が来るとは思ってなかったよー」
「これは俺達も予想外だったんだよ……」
疲れたように言うガルドさんに、モルトさんが「お疲れ様です」と声をかけた。
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