文字の大きさ
大
中
小
235 / 500
11章
買い物と回避
翌日、私達はみんなでお買い物に出てきた。一応、私はフードを被って髪の毛を隠している。視界がよくないから、今日もグレンの腕の中。
一昨日訪れた屋台エリアとは別に、港近くにはマーケットがあると宿の人が教えてくれたんだよね。
マーケット会場は屋根がある巨大倉庫みたいな場所。海外の市場みたいな感じで、いろいろなお店が入っていた。
「おぉー! 山盛りの魚! あっちは野菜だ! あれは? お酒かな!?」
〈セナ、暴れるな。落ちるぞ〉
グレンの腕の中から身を乗り出してはしゃいでいると、注意された。
「おい。ジュードも落ち着け」
「だってこんなに魚いっぱい見るの、久しぶりだよー!」
ジュードさんも浮かれていたらしく、ガルドさんに怒られている。
口を尖らせたジュードさんに、モルトさんが「順番に見ていきましょう」と勧めていた。
人の多さで進むスピードが遅い分、各お店をゆっくり見られる。
イスが用意されていてその場で食べられるお店、買った魚を捌いてくれるお店、八百屋、果物屋、鍋などの調理器具屋、刃物屋……と多種多様なお店があった。
「あ! 干物だ!」
〈なんだ? 干からびてるぞ〉
「これは、わざと干して美味しさを閉じ込めてるんだよ」
「お! 嬢ちゃんわかってるなー! 干し魚だ! 食ってみるか?」
「うん!」
試食用があるのかと思ったら、おじさんは手前に置いてあった干物をちぎって渡してくれた。
「ん~! 塩気がちょうどよくて美味しい!」
「ハッハッハ! ほれ、あんちゃん達も」
おじさんから順番に受け取って食べたガルドさん達は「酒に合うな」と気に入った様子。
他の干物も味見させてもらい、ご飯に合う干物をチョイス。鑑定したら、ニジマス、アマゴ、ヤマメ、イワナに似ている魚らしい。無意識に選んだ味は馴染みがあるからかと一人納得した。
大量購入した私達に気をよくしたのか、おじさんはオマケもくれた。
まさか干物があるとは思っていなかった私はルンルン気分で、買い物を再開。
他のお店を見ていると、次から次に試食を渡されるハメになった。まぁ、気に入ったものを山盛り買っちゃう私が悪いのかもしれないけど……
「ふぅ……もう入らない……」
試食でおなかが膨れているのに、マーケットの中でお昼ご飯も食べた私は苦しくて動きたくない。
〈セナにしては食べた方だな。この後はどうするんだ?〉
「さっきのお店のおばさんが、釣り竿さえあれば港でも魚が釣れるって言ってたから、試してみようかと思って。グレンは違うことの方がいい?」
〈釣りか! 久しぶりだな!〉
特にやりたいことはなかったらしい。
ガルドさんとジュードさんも釣りの経験者らしく、教えてくれることになった。
釣具屋さんに向かっている途中、プルトンが領主関係者の魔力をキャッチ。遭遇しないように迂回する。
マーケット会場の中でかち合わなくてよかった……
釣具屋さんでは経験者の三人に全員の竿を見繕ってもらう。
私のはオモチャみたいな竿になった。身長を考えると、これでも大きいらしい……ジルは普通の竿なのに……
グレンいわく、ジルベルトなら大丈夫だろ! とのことだった。
私だって身体強化使ったら大丈夫だと思うよ!?
この先のことを考えてリールや針、撒き餌や疑似餌など一通り全員分買った。
驚いたのは、糸を巻き取るところが魔道具になっていて、自動でリールを巻いてくれる……言わば電動リールがあったこと。これは思っていたよりも高かったけど、必要経費ってことで!
釣り竿を持って、先程のマーケット裏に向かう。
河は近くで見るとまさに大河。海みたいに広く、対岸が遠い。しかも流れが早いため、係留されている船は結構揺れている。ただそこそこの透明度があり、よく目を凝らすと魚影が見えた。
早速釣り具のお試し! と、並んで釣り竿を構える。
五分もかからないうちにジルの竿に当たりが!
ガルドさんが横でサポートして釣れたのは小魚だったけど、ジルは「初めて釣れた」と、とても嬉しそう。
その後もみんなの竿には魚が入れ食い状態で、そりゃもう釣れる、釣れる。
なのに私の竿をときたら……
「………………釣れない」
「セナ様……僕の竿と交換いたしますか?」
くっ! 気を遣わせてる!
「大丈夫! この竿で釣ってみせる!」
「そうですか? 交換したくなったらいつでも言って下さい」
意気込んではみたものの……一時間経っても、二時間経ってもかからず……
場所が悪いのかと移動してもダメ。
結局、夕暮れまで釣れることはなかった。
ビギナーズラックはどこへ行った! いいもん、いいもん! みんなが釣った魚が〝ホンモロコ〟って魚に似ているらしいから、食べてやるもん!
みんなに慰められながら宿に戻る途中、またもや領主の関係者がいるとのことで大回りすることになった。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。