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11章
着ぐるみのオッサン?
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翌朝、再び冒険者ギルドへ。南パラサーでは、あの偉そうな騎士に絡まれそうで街の外に出られなかったんだけど、こっち側なら大丈夫だろうと、依頼を見に来た。
宿のお姉さんが、魔物の魚〝魔魚〟について教えてくれたんだよね。捕まえるのが大変な分、いい値段で買取ってもらえるそう。食べられる魔魚と食べられない魔魚がいて、詳細はギルドで依頼を受けるときにでも聞けばいいとアドバイスももらった。
お金よりその情報が欲しいのと、どんなのか見てみたいから受けてみることにしたんだけど……
「魔魚の名前が書かれてても、名前からは想像できないね」
「だなぁ……依頼書持ってって、受付けで聞くか」
ガルドさんが依頼書を剥がそうとすると、横から伸びてきた手が奪っていった。
「なんだぁ? 依頼は早い者勝ちだから、これはオレんだ!」
間違いなく絡まれたら面倒なタイプ。ガルドさんから「どうする?」って目で問われて、私は首を横に振った。
「見てみたかったけど、違うのにしよ?」
「……そうだな。どれがいい?」
「ギャハハ! お前ら子守りしながら依頼なんて大変だな!」
依頼書を奪っていった男性は私を見て爆笑しながら依頼書をカウンターへ持って行った。混んでる時間からズラしたとはいえ、まだ人はいる。あの人物のせいでチクチク視線を感じるようになってしまった。
〈セナ……〉
「ダメだよ? 今暴れたら活動しにくくなっちゃう」
〈……〉
「その代わり、討伐依頼はどう? ガルドさん達に頼んだら、高ランクの依頼内容もできるよ?」
〈……なら、これだな〉
グレンは不満そうだけど、一枚の依頼書を指さした。
依頼書はAランク用。注目を集めているので、カモフラージュのためにもう一枚依頼書を剥がした。
ガルドさん達はグレンが希望した依頼を受けてくれ、私とジルはCランクの依頼を受ける。
グレンは街を出て獲物を探している間も、放つオーラが怒っている。
「グレンー。機嫌直して? はい。パンあげるから」
〈なぜセナは言い返さない! パンは美味しいが、誤魔化されんぞ〉
「えぇー。だって、力量も測れない人に言ってもねぇ……騒ぎが大きくなるだけだし、面倒じゃん?」
「話す価値もないということですね」
〈そうか! そうだな!〉
いや、ジルさん……そこまで言ってないよ……
グレンの機嫌が直ったから否定するのも微妙かなと私は苦笑い。
私の気持ちがわかったのか、ガルドさんに頭をクシャクシャと撫でられた。
そうこうしているうちに、私達の前にに現れたのは、三十センチもあるカタツムリ。これは私とジルが受けたCランクの依頼。
カタツムリはグレンにより瞬殺されていき、五分も経たないうちに規定の二十匹に到達した。早い……
カタツムリを回収したら、ガルドさんに受けてもらった魔物の生息域へ向かう。
河沿いを進み、お目当ての場所に近付いたら索敵。
見つけた魔物はまたもやグレンによって瞬殺。
この一メートル以上もあるオオサンショウウオのような魔物は、皮膚の硬さで物理が効きにくく、全身を覆っている粘膜のようなヌメリで魔法も効きにくいハズなのに……グレンには意味を成さなかった。
思っていたよりも早く討伐が終わったため、私達は河岸でランチタイム。
食後は釣り。私は釣れないのでみんなのおやつを作る。
一位になった人にはオマケを付けるとお知らせすると、みんなはやる気を上げて竿を構えた。
グレン、ガルドさん、ジュードさんは経験者で有利だから、釣った数からマイナス五匹の予定。
今回のおやつはティラミスとシュークリーム!
コーヒーが手に入ったら食べたかった二品。コーヒーの苦味が苦手なみんなのために、甘めなコーヒーを使う。
「オレっち六匹目ー!」
〈む! まだ始まったばかりだ!〉
「騒ぐな。魚が逃げる」
ジュードさんとグレンにガルドさんが注意。その三人の近くでジル、モルトさん、コルトさんが静かに……でも的確に魚を釣り上げている。
この世界の魚は全体的に大きいけど、見た目は日本の魚と大差ない。
クラオル情報によると、アクエスパパがくれた黒マグロなんかは魔魚に分類されるらしい。魚と魔魚の違いは攻撃してくるかどうかで、基本的にはどっちも食べられるそう。簡単に釣れるのが〝魚〟で、釣るのが大変だったり戦うことになったりするのが〝魔魚〟。
話を聞いて明確な違いはないことがわかった。魔物と魔獣の違いみたいなもんだね。
「くっ! 引きがすごいです!」
〈大物か!?〉
ジルの竿が折れそうなくらいにしなり、踏ん張っているジルの後ろからグレンが支えた。
二人でも川に引きずり込まれそうで、グレンの腰をガルドさんとジュードさんが引っ張る。
「これ、相当な大物だぞ! モルト! ロープ巻け!」
ガルドさんから指示を受けたモルトさんがテキパキとジル達をまとめてロープで巻き、さらに河岸の大きな岩にロープを結び付けた。
「上がるぞ! 引けぇぇ!」
ガルドさんのかけ声でジル達四人が踏ん張り、勢いよく河から飛び出してきた魚をコルトさんが網でキャッチ。魚の勢いと重さでコルトさんは転んじゃったけど、連携が素晴らしい。
「コルトさん大丈夫!?」
「……大丈夫」
コルトさんから大丈夫だと返事が来たので、倒れ込んだ四人に駆け寄る。
一番後ろを支えていたジュードさんが三人の重さで唸っていて、モルトさんが急いでロープを解いた。
「ぷはぁー。重かったー」
〈魚は!?〉
「……ココ」
グレンはジュードさんより釣った魚が気になるらしく、すぐにコルトさんの元へ。
「ジル、大丈夫?」
「は、はい。驚きで少々手が震えております」
呆然としながら答えるジルにガルドさんが「頑張ったな」と頭を撫でる。三人に【ヒール】をかけてから、釣り上げた魚を見に行くと、魚は網の中でピクピクと痙攣していた。
〈暴れるから大人しくさせておいた〉
「なるほど……」
釣り上げた魚は……一メートルほどのオタマジャクシに手足を生やした着ぐるみを着たオッサン……に見える。
顎下にあるシワが気の抜ける顔っぽくて、生えている手足が胴体と色が違う。
実際に着ぐるみを着ているわけではないから、人面魚ならぬ人面オタマジャクシ? とでも言えばいいんだろうか……
「絶妙に気持ち悪いね……」
『これ、魔魚だと思うわ。魔力感じるもの』
「え? これが魔魚? まさか魔魚って全部こんな感じじゃないよね?」
『それはワタシにもわからないわ』
とりあえず鑑定してみると、確かに魔魚だった。水魔法を使って攻撃してくるらしい……泥臭く、食用には向かないそう。ただ、素材としては高く売れるみたい。
みんなに鑑定内容を教えると、見た目の気持ち悪さからか、食べられないことに全員が納得した。
魚釣りの雰囲気じゃなくなったので、デザートタイム。
数はコルトさんがブッチギリで多かったんだけど、「ジルベルトが頑張った」と優しいコルトさん。
今回の優勝者はジルに決まった。
ジルはジルで「数で負けている」と遠慮するので、結局みんなでティラミスとシュークリームを食べる。
多めに作っておいてよかった!
◇
ギルドで納品と一緒にオタマジャクシを出すと、予想以上に高額で買い取ってくれた。
「まさかあれが金貨五十枚になるとはな」
「引きが強かったから、高いのかもー」
「本当に僕が受け取ってよろしいのですか?」
「おう! ジルベルトが釣ったからな。誇っていいんだぞ」
遠慮しようとするジルの頭を撫でて、受け取らせるガルドさんとジュードさん。ジルはそんな二人に挟まれてくすぐったそうに笑っている。
仲良しの兄弟みたいで微笑ましい。
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