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11章
スライム強し!
砂を撒きながら歩き始めると、すぐに【スライム砂】の効果がわかった。
休憩前とは違い、明らかに歩きやすい。
ネックレスも周りの湿気を吸収してくれ、息がしやすくなった。
「すごいですね……こんなに変わるとは……」
「ジメジメが体に纒わり付かねぇし、足元も埋もれないから楽だな」
「ね! 便利だとは思ってたけど、スライムがこんなに使えるとは思ってなかったよ~」
モルトさんが感心したように呟いた。
ガルドさんの言う通り、この砂のおかげで進むスピードが上がっている。
夕方近くなり、野営ができそうな場所を探していると、強そうな気配を察知した。
ガルドさん達にも伝え、臨戦態勢を取る。
私は足場を確保するために自分達の周りに砂を撒いておく。
〈来たぞ!〉
「うわっ!」
グレンが叫ぶと、私達の右側から巨大ムカデが飛び出してきた。
ジュードさんは顔スレスレに現れたムカデに驚いて尻もちをついた。
ムカデは私達の頭上を通り過ぎ、左側の泥に頭から突っ込んでいく。攻撃らしい攻撃はされていないけど、ムカデに付いていた泥が私達に降りかかる。
プルトンが急いで結界を張ってくれたけど、既に私以外は泥まみれ。私はパパ達が作ってくれた服のおかげで、泥はこびりつかない。
再び顔を出したムカデは今度は左から右へ。また私達の頭上を飛び越えて、泥の中に入る。
〈こいつは何がしたいんだ?〉
「多分だけど、足止めして泥に埋もれさせたいんじゃない? わざと泥降らしてるんだと思う」
〈厄介な……〉
巨大ムカデの胴体に無数にある足が気持ち悪い。
飛んでいるムカデのおなか目掛けて、ガルドさんが繰り出した攻撃は、ムカデの勢いに弾かれてしまった。
「くっ! 硬ぇ!」
今この状況で攻撃が成功しても、ムカデの体液が降ってきそうで、弾かれたことにホッとしちゃったのは内緒。
プルトンが結界を張ってくれているからこれ以上は汚れないとはいえ、飛んでくる泥が視界を妨げてウザい。
何回も出てくる度に真下から移動して、ガルドさん達は物理、私と精霊達は魔法で攻撃を仕掛けるけど、弾かれてしまう。
何か有用な手はないかと考えを巡らせる。
〈泥の中だと攻撃できん〉
「そっか! 泥に入られなきゃいいんだ!」
思い付いた私はエルミスとプルトンとアルヴィンに協力を要請。
ムカデが飛び出してきた瞬間を狙って、合図を送る。
「今!」
《任せて~!》
ムカデが飛び込む場所一帯に【スライム砂】を大量に撒いてもらい、泥を固めて中に逃げられないようにする。
ムカデは飛び出した勢いのまま、砂を撒いた地面にドーン! とぶつかった。
「やったー!」
陸に上がったらこっちのもの。
ビタン! ビタン! と暴れるムカデにグレンとガルドさん達が剣で斬り付け、ジルは的確に関節を狙って弓を射る。私は空間魔法でムカデがあまり動かないように重力の圧をかける。
ムカデはそれでも暴れ、無数にある足で攻撃を弾こうとシャカシャカ動かしている。
「しぶとかったね……」
結局、仕留めるのに一時間以上もかかってしまった。
日本でもそうだったけど、虫って生命力強いよね……
戦闘が終わったころには、既に辺りは真っ暗。動くのは危険だから、今日はここで野営するしかない。
地面はスライム砂を撒いたおかげで固いから、泊まれることは泊まれる。ただ、私はお風呂に入りたい。
私自身は泥を被っても染み込まなくて流れ落ちたけど、ガルドさん達は泥が乾いてカピカピ。
みんなに聞いてみると、満場一致でコテージへ行くことが決まった。
「あんまり贅沢に慣れたくはねぇんだが……俺達まで悪ぃな」
「全然だよ~。野営も嫌いじゃないけど、私が今日はこっちがいい」
移動中、馬車の中以外ではなるべくコテージに行かないようにしていたけど、今日は我慢できない。
コテージのドアは閉めれば周りから見えなくなるけど、一応プルトンに見えないように結界を張ってもらった。
お風呂に入った後、みんなで夜ご飯。疲れていた私達は早々にベッドに入った。
────────────────────
翌日は霧が少しマシになっていた。【スライム砂】のおかげで〝かんじき〟を付けなくても歩けることが判明。
「ギャッ!」
歩いている途中、飛び出してきた魔物に咄嗟に持っていた砂を振りかけると、水分を吸収され、干からびてしまった。
「わーお……スライム砂強すぎでしょ……」
〈ハッハッハ! なんだこれは! 面白すぎるぞ! 我もやりたい!〉
グレンが面白がって出てくる魔物に砂を投げつけると、一瞬にして干物のようにカラッカラに。
「戦わなくていいのは楽だが……これは……ありなのか?」
「あはは! いいんじゃないー? オレっちだけだったら戦うしかないけど、戦うと体力使うからねー」
「そうですね。セナさんのおかげで楽に進めます。自分にもその砂分けていただきたいです」
ジュードさんとモルトさんも賛成らしく、みんな【スライム砂】を持ち、現れる魔物に投げつけ始めた。
素材としてはダメになっちゃうけど、早く沼地地帯を出たい私達は効率重視。
◇
進み続けること二日。ようやく腐呪の森の入り口へ。
名前のまんま腐った臭いを放っていて、クラオルとグレウスは近付いた時点でマスクを着けた。
「ひでぇ臭いだな……」
《ここはまだ序の口よ! 中へ進めば進むほど強烈になるって風の子が言ってたわ!》
「マジかよ……」
ガルドさんはプルトンの言葉に顔を引き攣らせた。
「まだお昼だけど、今日はここまでにしよ? ご飯は……コテージの方がよさそうだね」
『それがいいわ!』
クラオルとグレウスが鼻をやられてグロッキー。私はダンジョンで経験した、あのツーンとくる汗臭さの方が苦手なんだけど、クラオル達はこっちの方が苦手みたい。
コテージへのドアを出すと、飛び込んでいった。
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