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11章
サーカス団からの解放
しおりを挟むいつもだったら二手に分かれるところだけど、今回はバラバラ。ガルドさん達はもちろん、グレンも囮になってくれた。私はジルと一緒に適当な裏路地に入って即行転移。
「イッヒッヒ。 何かあったようですね」
「うひっ! 超ビックリした……」
宿の入り口である廃倉庫に転移すると、玄関と繋がっている暗闇からインプが顔だけ覗かせて声をかけてきた。
んもう! 心臓に悪いから気配消して顔だけ出すの止めて欲しい!
ジルも驚いて戦闘体勢になってるじゃん!
「イッヒッヒ。申し訳ございません。他の方々を迎えに行きましょう。セナ様は部屋でお待ち下さい」
謝りながら全身を現したインプは言うなり、溶けるように消えてしまった。
「驚いて、危うく攻撃するところでした……セナ様、インプもああ言ってましたし、先に部屋に戻りましょう」
「そうだね。あぁ……まだ心臓がバクバクいってる」
部屋に戻り、ほうじ茶で落ち着かせていると、十分も経たずにみんな揃って戻ってきた。
「いやー。走ってるのに真後ろからあの笑い声が聞こえて、超焦ったよー」
「ジュードもか……助かったが、あの登場の仕方は止めて欲しいな……」
〈我もさすがに驚いた……〉
みんないきなり現れたインプに驚かされたらしい。
どうやって戻ってきたのか聞いてみると、インプの指示の下、走った裏路地から転移させられたみたい。気が付いたら宿の玄関だったそう。心臓を落ち着かせている間に、全員集合したらしい。
「まぁ、全員無事ならいい。しかし、何でまた後を尾けられてたんだ?」
「知らないよ~。本当に。可能性があるとしたら……あの虎さん関係?」
ガルドさんに疑いの眼差しを向けられて、私はブンブンと手を振って否定した。
〈解呪がバレたとかか?〉
「周りには誰もいなかったけど……遠くから見てたらわかんない。まさか成功するとは思ってなかったんだもん」
〈あいつが暴れたんじゃないのか?〉
「でも、あのグランドタイガーは大人しくしているハズです」
ジルの言う通り、あの虎は仲間のために大人しくしていてくれていると思う。じゃなかったら、あのときに暴れて逃げることもできた。
声を出しちゃった可能性はあるけど……
「もしかして……あの人、従魔のこと言ってたし、クラオルとグレウス狙ってる?」
「可能性は……あるな。ヴァインタミアは珍しい」
ガルドさんからの追い打ちで、クラオルとグレウスが私の首にヒシッと抱きついた。
私の大事な大事なクラオルとグレウスに手を出す気なら、私もそれ相応に対応させてもらおう。パパ達にお仕置きしてもらうのもありかもしれない。
「まだわかんないから、しないけど」
「……何を企んでんのか知らねぇが、一人で突っ走るなよ?」
「うん。そうなったらみんなに協力してもらう~。ね? クラオル、グレウス」
クラオルとグレウスに話を振ると、スリスリと擦り寄せてくる。
ん~! たまらん!
モフモフしているとノック音がして、インプが入ってきた。
「イッヒッヒ。お食事です」
「わーい! ありがとう! あ! そうだ。ねぇねぇ、おばあちゃんの使いとか関係者って、今日貴族エリアのサーカスに来た?」
「いえ、聞いてませんよ。イッヒッヒ。気になるなら〝おばあちゃん〟に聞いてみて下さい」
え? マジで? あの男の人っておばあちゃんの関係者じゃないの?
〈セナ、食べないのか?〉
「食べるよ~。ここのご飯は美味しいからね!」
「イーッヒッヒ! ありがとうございます。ごゆっくり」
今日の夜ご飯のメインは魚の塩釜焼き。既に塩の塊にはヒビが入っていて、簡単に割れた。
美味しい料理をいただきながら、みんなと相談。一時間以上話し合った結果……結局、〝わからないなら聞きに行けばいいじゃない〟ということで、明日おばあちゃんに聞きに行くことに決まった。
◇
夜遅く、私がゴソゴソと準備していると、ジルから「準備できました」と声がかかった。
「私もオッケー。グレンは……大丈夫そうだね」
〈うむ。我はこの道具で眠らせればいいんだろ?〉
「そそ」
グレンが手に持っているのは、プルトンがいつの間にか指示を出して精霊の子達に作らせていた【ネムネム弾】というパチンコ玉。薬草で作られた物でぶつかると霧散する。プルトンいわく、超強力だけど後遺症もなくてバレないらしい。
グレンにはこれを起きている人に撃ち込んでもらう。
ジルは一番暗闇に強いため、全体の把握とサーカス団について調べてもらうつもり。
私は魔物の解呪と解放を担当。
本当は一人でやろうと思ってたんだけど……勘の鋭いガルドさん達にもバレバレだった。ただ、ガルドさん達は夜目スキルが低いため、今回はお留守番。
隠密マントを羽織って、いざ、出発!
サーカステントの前に転移して、グレン達とは別行動。私はコソコソと魔物の気配を感じるところへ向かう。
まだ起きている人がいるらしく、明かりが漏れているテントもあった。宿に泊まっているワケじゃないみたい。
魔物はサーカスの会場にほど近い大型テントにいた。テントの中は獣臭が漂い、決してキレイとは言えない。しかも虎や熊、猿や鳥など二十匹以上の魔物が体格に合っていない小さな檻に閉じ込められている。
「助けに来たよ」
『ガウ!?』
「しー! バレちゃうから静かに!」
『ガ、ガウ……』
急に現れた私に驚きの声を上げられ、慌てて小声で注意して辺りの気配を探る。
よかった……バレてないみたい。
ウェヌスも呼んで、精霊達にも檻の鍵開けを手伝ってもらう。
こんなところで、前にアルヴィンに教えてもらったピッキング方法が役に立つなんて……
虎以外の魔物は私を怪しんでいたけど、虎の様子を見て檻から出てきた。
「今から呪いも隷属の首輪も取ってあげるけど、騒いじゃダメだよ? 勝手にこのテントから出て行くのもダメ。その約束が守れない子は解呪しないからね? 」
私が小声で説明すると、疑いの目を向けてくる猿やブンブンと頷く熊と反応は様々だったけど、騒ぐ気はないっぽい。
一匹ずつ光魔法をかけていく。
解呪に関してはウェヌスはできないみたいで、かなり特殊だということがわかった。
「さて、これで全員かな?」
『ガウ』
「ここで自由になっても、街から出られないと思うから、街の外に出してあげるね」
『キキッ。キキキキキィ』
『すっごい復讐したいけど、それなら人里離れた安全な場所がいいって』
猿の発言をクラオルが通訳してくれた。
マジか……近くの森まで転移しようと思ってたんだけど……
「うーん……私が行ったことある場所にしか連れて行けないからな……採取に行った森だと街から近いし……」
『呪淵の森だと他の魔物に殺られちゃいそうだし、腐呪の森だと臭いがキツいわよね……』
「あ! あそこならいいかもしれない! 移動するのに眠ってもらうね。ウェヌス、お願い」
《かしこまりました》
いいことを思い付いた私はみんなに眠ってもらい、転移を行使した。
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