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11章
向かった先と神隠し
私が転移を繰り返して辿り着いたのはグーさんがいる森。中に勝手に入るのは気が引けて、ドアの前まで。
「グーさん! グーさん!」
名前を呼びながらゴンゴンとドアを叩いた。
五分ほど叩き続けると、グーさんは眠そうに目を擦りながら出てきてくれた。
「ふぁーい……ってセナ様!? こんな時間にどうしたんですか?」
「夜中にごめんね。ちょっと急用で……」
「いえいえ。セナ様ならいつでも歓迎です」
中への誘いを断って、サーカス団での出来事をかいつまんで説明する。
「それで、この子達眠らせて連れて来たの」
「なんと! それは酷いですね……可哀想に……」
「人の言葉がわかる子達だから、この森で生活させてあげてもいい?」
「ふふっ。もちろん。大丈夫ですよ」
「ありがとう! 助かる! 起こすね」
ウェヌスが魔物の子達を起こすと、グーさんにものすごく驚いていた。
グーさんを紹介して、お互いを狩り合わないように認知してもらう。
「よろしくお願いしますね。この辺はセナ様の従魔である、グレン様が強い魔物を狩ってくれたので、そこまで強い魔物はいません。たまにでいいので、ご飯を一緒に食べてくれると嬉しいです」
『ガウ!』
虎達もグーさんが優しい人だとわかったのか、それぞれちゃんと返事をした。
「仲良くなれそうで、安心しました。セナ様はお手紙だけではなく、僕の話し相手まで連れてきてくれるなんて……ありがとうございます」
「確かに寂しい思いをしなくて済むかなって思ったけど……どこに連れて行くか迷ってお願いしに来た方が大きいかも……押し付ける感じになっちゃってごめんなさい」
「とんでもない! 僕は賑やかなのが好きですし、セナ様が僕のこと考えてくれたのが嬉しいです!」
グーさんは嬉しそうにニコニコと笑顔を振りまいている。
めっちゃいい人! 連れて来た魔物達がグーさんのお手伝いをしてくれたらいいな!
グレンとジルには念話を飛ばしていたとはいえ、早く戻らないといけない。
最後に魔物達にしっかりと注意事項を言い渡して、私はグーさんとお別れ。
再び転移を繰り返してサーカステントへ戻った。
「お待たせ」
〈どこに行ってたんだ?〉
「グーさんの森だよ」
〈なるほどな〉
グレンもジルも納得した様子で、特に異論はないみたい。
二人から簡単に報告を受けると、結構悪どいことをやっていたことがわかった。
〈起きていたヤツらのうち二人が話しているのを聞いたが、セナがやったレースのメダルも「あんなものに金を払うなんてバカだろ」と話していた。腹が立ったから、この玉を三発ずつ撃ち込んで服をひん剥いてきた〉
「僕の方は違法取り引きの書類を見つけました。この街や他の街の領主にも詐欺を行っていたようです。ここで働いている何人かは奴隷だということも判明致しました。使われていない隷属の首輪も見つけたので回収してまいりました」
「二人共ありがとう! もうひと仕事に付き合ってもらってもいい?」
何をしようとしているのかを説明すると、二人はニヤリと笑った。
二人に協力してもらい、宿に戻ると、ガルドさん達は起きていた。心配で眠れなかったらしい。
◇
夜中に起きていた私達はいつもより遅く起きて、ブランチを食べたら行動開始。
まず、南パラサーの街の冒険者ギルドのギルマスに荷物を送った。中身はこの国の王様宛。あのギルマスなら上手いこと王様に届くようにしてくれるハズ。あとは国王次第。
続いておばあちゃんのお店に行くと不在だった。
聞きたかったのに残念……
仕方ないので予定を繰り上げて、私達は約束通りサーカステントがある広場に向かう。
貴族エリアに入ると、ここでは昨日の虎脱走の話がそこかしこから聞こえてきた。貴族の中では、勇敢な少女が虎の暴走を止めたことになっているらしい。そして昨日の件で今日は営業をしていないそう。
私達が素知らぬ顔をしてサーカステントへ向かうと、とあるテントが騒がしかった。
「あ! お嬢様! 申し訳ございません」
「どうしたの? 今日はやってないの?」
「えぇ……ショーに使う魔物が全て消えてしまいまして……」
「え? なんで? あの虎さんも?」
「そうなんです。理由は……わかりません……忽然と姿を消したとしか……探しましたが見つからず、目撃者もいないため、妖精のイタズラではないかと…………」
この世界では神隠しのようなことを〝妖精のイタズラ〟と呼ばれているらしい。
私がやった張本人だけど、あくまでシラを切るよ!
「そんなことってあるんだね……また虎さんモフモフしたかったのに……残念……」
「ありえないじゃない!! 一目瞭然でしょ!!」
私達が話していると、どこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
視線を移すと、どうやら女性が顔を真っ赤にして怒りながら喚いている。あの人は……確か、サーカステントの近くで歌っていた恰幅のいい女性だ。
「あの人、何で怒ってるの? 魔物がいなくなっちゃったから?」
「えぇっとですね……起きたら自分のテントで裸の男の職員が眠っていたと騒いでいるんです。自分を襲う気だったと……あの女性は性格がキツいので、間違ったとしか思えないんですけどね……あ! 申し訳ございません! お嬢様に話す内容ではなかったですね。あれは気にしないで下さい」
グレンにどういうことかと念話で聞いてみると、その方が面白そうだったからだそう。ちなみに盗み聞きした内容から、件の男性にはお気に入りのジェリランちゃんという子がいるらしい。
詐欺や違法取り引きはダメだけど、完全な冤罪に少し気の毒に思ってしまう。
「セナ様へのお品物は団長がご用意しておりますので、案内致します」
「はーい」
付いて行くと、小洒落た小型テントだった。昨日はこんなテントがあることも気が付かなかったけど、民族的な織物があちこちに使われていて可愛い。
サーカス団の団長は小太りの男性で、焦っているように見える。
団長は私達にお礼を述べ、高そうな布製の袋を渡してきた。中身はどぎつい香りの香水。団長の説明によると、この国の貴族の中で流行っているらしい。中身は使う予定はないけど、袋は可愛いので遠慮なくいただいた。
団長からこの香水がいかに入手困難であるかの説明を受けているとき、武装した騎士達がテントになだれ込んできた。
「貴様を詐欺の罪で逮捕する!」
騎士の一人がビシッと指を差しながら声を張り上げると、他の騎士達は反論の隙も与えることなく団長を引っ立てて行った。
「あなた方は?」
〈我らは昨日脱走した虎を捕らえた礼を言われていただけだ。文句があるのか?〉
「なるほど! あなた方でしたか! 被害を出さずに済みました。ありがとうございます!」
騎士には領主からの呼び出しがあるかもしれないと宿の場所を聞かれたけど、ジルがまたも回避した。
私はジルに「疲れているのですね」と言われ、グレンに強制的に抱っこされてサーカスを後にすることになった。
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