転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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11章

土砂降り【2】



 少年から渡されたものを見てみると、刺繍入りのホワホワの手袋だった。
 手袋をしまって急いでジルの元へ向かうと、みんなに心配されていた。

「あぁ、セナ様! ご無事でよかったです……姿が見えなくなったので心配しておりました」
「ごめんね。ちょっとあっちに行ってたの」

 ジルが釣っていた場所からだと、ちょうど木の影に隠れて私が見えなかったらしい。そこでジルが大声で私を呼んだため、私のところにみんなで向かうところだったみたい。心配かけて申し訳ない。
 何があったのかと心配するみんなに少年のことを説明すると、一人で行動するなと怒られた。

「サーカスのことがあるから、用心しないとダメだよー?」
「ごめんなさい。モヤモヤしないから大丈夫だと思ったの」
「勘か……まぁ、無事ならいい。これからは離れるなら誰かしらに声かけてからにしろ」
「はーい」

 私が戻ったことでみんなは釣りを再開。ジルだけは「またいらぬ人物が寄って来るかもしれません」なんて心配性を発揮したため、私のおやつ作りのお手伝いをすることになった。
 防水フル装備とはいえ、土砂降りは寒い。温かいのがいい。レシピを検索していると、いいものを見つけた。

「ベーコンポテトパイにしよう! 冷凍パイシートがないから作らないと」

 ジルが率先して手伝ってくれたおかげか、思っていたよりも簡単にパイ生地ができた。

「レシピアプリ様々だわ……魔法で時短できるのも大きいけど、主婦ってすごい……」
「こちらパンとは違うのですか?」
「ふふふ。全然違うよ! さ、具を詰めて焼こ!」

 パイを焼いている間にお昼ご飯の準備。コンロが足りないのでジュードさんに出してもらって鍋焼きうどん。
 それだけじゃ足りないかな? と、炊き込みご飯やだし巻き玉子も作って定食風。
 みんなに声をかけてランチタイムの始まり。

〔ゴシュジンサマ、コレハ?〕
「それはカブの漬物だよ。ポラルの糸が大活躍してるから特別ね。ちなみにそのカブはフィメィ村のツィンク君からもらったやつだよ」
〔フフッ、トクベツ!〕
〈ズルいぞ!〉
「そういうと思ったけど、グレンの鍋焼きうどんはみんなより量が多いんだよ」
〈む……仕方ない……〉

 出した食事を減らされると思ったのか、グレンは鍋焼きうどんを食べ始めた。



 午後もみんなには釣ってもらい、私はジルと一緒にひたすら調理。
 セミエビは大漁で、釣り上げナンバーワンはモルトさんだった。

「とても美味しいです。セナさんの料理はいつも素晴らしいですね」
〈むむ……さっさと食え〉
「明日もあるんだからそんなカッカすんな」
〈そうだな。明日もあるからな! 明日はわれが勝つ!〉
「……頑張る」

 グレンとコルトさんは明日もやる気満々みたい。その様子を見て、ガルドさんとジュードさんが仕方なさそうに笑った。

 宿に戻り、お風呂から上がってから気が付いたんだけど……少年に渡したのは使用済みのタオルだった。しかもポラルが使い古したいらないやつ。
 まぁ、少年も知らないしいいよね!

────────────────────

 翌日、私達は街の南西のエリアを訪れた。
 このエリアでは土砂降りでも関係ないのか、子供は走り回り、大人も活動していた。
 防水フル装備の私達は周囲から完全に浮いていて、住民からは遠巻きに注目されている。

「めっちゃ目立ってるじゃん……」
「でも釣るんだろ?」
「うん。手に入りにくいことを考えると、釣れるだけ釣りたい」
「釣りだけやってればそのうち慣れて、注目もされなくなるだろ」

 ガルドさんに言われて、それもそうかと気にしないことにした。

 量が欲しいため、今日はジルも釣り担当。もちろん私は昨日と同じく調理だ。
 ちょっと広めに開けた場所に大型パラソルやテーブル、コンロをセッティングしていく。
 体育祭とかで見る、屋根だけの大型テントが欲しい……

 昨日のことを考えて今日のおやつはピザまん。ご褒美の方は肉まんに決めた。みんな寒い中釣ってくれてるのに、一人だけおやつはズルいと思ったから。

 お昼ご飯のホワイトシチューも作るのに忙しなく動いていると、グレンの〈うるさい。邪魔するな〉という声が聞こえてきた。
 顔を上げると、グレンもそうだけどガルドさん達も子供に囲まれていた。
 グレンに絡んでいた子供達は相手にしてくれないグレンから離れ、優しく受け答えをしてくれるモルトさんとジュードさんに寄っていく。
 グレンとジルに大丈夫か念話で聞いてみると、何を釣っているのか聞かれたそう。二人共魔魚についての話はしなかったらしい。

 お昼ご飯の間も近くでずっと見られていて、正直気まずい。

「食べにくいね……」
〈これはやらんぞ。われが全部食べる〉

 そう言って、グレンはシチューをかき込んだ。
 そんなつもりはないからゆっくり食べてもらいたい。

「そういえばさっき、父親が釣り上手って言ってた子がいたよー」
「俺に絡んできたチビも言ってたな」

 それって、バイトしてもらえたりするかな?
 鑑定では、セミエビは珍しい魔魚だけど買い取り金額は安い。食べられる身が少ないことと、殻も素材としてはイマイチというのが理由。私は殻から出汁をとりたいため、素材として使えなくても構わない。むしろ素材価値が高かったら、料理に使うことを躊躇しちゃいそうだからありがたい仕様だ。

 食後、みんなに説明して、ジュードさんに子供達に親を呼んできてもらうように声をかけてもらう。
 集まった二十人ほどの親達にジルが買い取りの話をすると、大喜びされた。日雇労働者が多いらしく、釣った魚を渡すだけで稼げるなんてと驚きつつも大興奮だった。

「道具は自分達のものを使ってください。小さなものも大きなものもそれ相応の金額で買い取ります。お金はこの女性がミンミンエビと交換で支払います。コチラにお持ち下さい」

 ジルの説明が終わると、住民はそれぞれ家から釣り竿を持参して、グレン達の邪魔にならないように釣り始めた。
 ぜひともいっぱい釣ってもらいたい。

 街の人から買い取るため、ジルは私のサポート。本人いわく、護衛だそう。
 一緒に料理をしつつ、住民が釣り上げたセミエビを換金していく。
 作ったピザまんをみんなに配ると、ご機嫌ナナメだったグレンの機嫌が少し緩和したからちょうどよかったかもしれない。

 住民達は本当に釣りが得意らしく、私達が買った釣り竿よりショボ……素朴な釣り竿で見事に釣り上げていく。
 最初は親本人が換金に来ていたけど、そのうち自分の子供を使う親が増えた。数を釣って稼ぐことにシフトしたらしい。

 私達は傘があるし防水フル装備だけど、彼らはみんな雨にうたれている。釣りのバイトを頼まなくても濡れていたかもしれない。でも、これで風邪を引かれたら私が気にする。
 彼らには温まる生姜卵スープを作ってあげよう。


 日が暮れるまで釣ってもらい、大漁の在庫に私は大満足。
 最後に希望者は食器を持ってくればスープを渡すことを伝えると、瞳を輝かせた。さすがに寒かったみたいだけど、隠し味としてポーションを混ぜたから風邪は大丈夫だと思いたい。

 仲間内の勝負はグレンが僅差で優勝。大喜びで、夜ご飯前なのにご褒美の肉まんを五つも平らげていた。

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