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11章
模様替え
◇
グレンはご飯を食べ終わると〈狩りに行って来る!〉とまた飛んで行った。
私達はシュティー達に影に入ってもらってデタリョ商会に向かう。
なんとシュティー達は武器がシャベルとバットみたいな木の棒だったんだよね……しかも魔物との戦闘で服も二着ほど破れているのに、ソーイングセットがないから……とそのまま着ていた。
念話が使えるんだから私に言えばいいのに、遠慮していたらしい。
「セナ様、お久しゅうございます。セナ様のレシピは大好評を頂いております。本日はレシピの件でしょうか?」
「違う、違う。今回もメインはシュティー達の服なんだけど、他にも欲しい物があって……それはメモってきたからお願いできる?」
「かしこまりました。ではご用意致しますので少々お待ち下さい」
「はーい」
おじいちゃんと執事のお兄さんが部屋から退出したので、シュティー達を呼ぶ。
執事のお兄さんは二人の紅茶も用意してくれていた。
シュティーとカプリコは「二回目だけど緊張するわ」なんて手を握り合っていたのに、いざ服を見ると二人共テンションが上がっていた。
武器と防具選びも何やらこだわりがあるっぽいから「何でも好きな物を選んで」と本人達に任せることにした。
お兄さんがシュティー達を担当してくれているので、私はおじいちゃんに他の物を見せてもらう。
「セナ様、申し訳ありませんがレース編みの本は取り扱っておりません」
「そっかぁ……」
「と、言うよりも、レース編みのデザインがまとめられている専門書はこの国には存在しないのです」
レース編みは貴族の女性のたしなみ。
淑女教育の中で教えられる物で、親から子へ、または専門の講師を雇い、幼いうちから体に覚えさせるそう。それぞれの家オリジナルの模様があるため、本にはできないらしい。
貴族御用達のお店ではレース編みの取り扱いもしている、とのことだった。
「何に使うかにもよりますが、当商会でもいくつかでしたらレース編みを手に入れることも可能でございます」
「シュティー達が可愛い物好きだから、暇なときにでも自分で作れたらいいかなって思ったの。そしたらそれを使って小物作ったり、服のリメイクしたりできると思って」
「なるほど。シュティー様方のためでしたか。……基本の編み方だけでもよろしいのですか?」
「うん。上手くなったらデザインを自分で考えればいいと思うし」
おじいちゃんは一度部屋から出ていき、一冊の本を持ってきた。この本に基礎の基礎だけ載っているらしい。
他にもオススメの本や恋愛小説、図鑑に絵本と本だけで結構な量になってしまった。
「……これで書かれていた物は全てになりますが、他には何かご希望の品はございますか?」
「んー……あ! キヒターに何かお土産買わないとだよね。みんなは何かある?」
「差し支えなければ紅茶の葉を」
〔アクセサリー、ミタイデス〕
ジルの紅茶はわかるけど、ポラルがアクセサリーを見たがるとは……正直意外だわ。
おじいちゃんは「喋れるのですね……」と内容よりもポラルに驚いていた。
お土産はどうしようかと思ったんだけど、クラオルのアドバイスで栽培用の支柱と植木鉢とプランターにした。
おじいちゃんに再び持ってきてもらって商品を見ていく。
紅茶はすぐに決まったんだけど、ポラルは〔コレニツイテイル、コレ、ホシイデス〕と指輪に付いていたラインストーンみたいなものを指さした。
「それは〝ワロフキー〟という鉱石でございます。色は多種、大きさは最大で三センチほど、最小ですと一ミリないものもあります。宝石よりは安いですが……」
「値段は大丈夫だよ」
「失礼致しました。では大きさや数、色などのご希望をお教え下さい」
心配そうに私を見上げたポラルを撫でてあげると、意図がわかったのか〔イッパイ!〕と答えた。
「色と大きさはバラバラで大丈夫だから、とりあえず用意してもらえる分だけ買い取ります」
「! ……かしこまりました。すぐにご用意致します」
困惑していたおじいちゃんに伝えると、一瞬目を見開かれた。私が全部買い取るとは思っていなかったみたい。
おじいちゃんがラインストーンを準備している間に、シュティー達に決まったか聞いてみると……防具はちょうどいいのがあったけど、武器で悩んでいたらしい。それなら私が作ってあげよう。
本当は防具も作ってあげたかったんだけど……防具らしい防具は作ったことないから、今回は買いに来たんだよね。そのうちちゃんとした物を作ってあげる予定。
「武器は私がなんとかするから決まった物だけ買っちゃおう」
『お嬢様ありがとう!』
『とっても嬉しいわ!』
戻ってきたおじいちゃんに精算をお願いして、ここでのお買い物は終わり。
「そういえば、さっき思い出したんだけど、宝石いる? 前にダンジョンで真珠いっぱい手に入ったんだよね。あと黒真珠とエメラルド」
「売っていただけるのですか!?」
「あ、ギルド通さなきゃダメなのかな?」
「いえ、そのような規定はございません。ですが、トラブルがあっても自己責任となりますので、ギルドを通す方が多いです」
「なるほど。おじいちゃんだし、私は全然いいよ。ただ、面倒に巻き込まれたくないから、私が売ったことは内緒にして欲しいけど……」
「それはもちろんでございます。死んでも口外致しません! 見せていただいてもよろしいですか?」
前にシュグタイルハン国の王都で売った残りと、黒真珠、エメラルドをテーブルの上に載せると、おじいちゃんはそれはもう目を輝かせた。
特にエメラルドは前にプルトンが教えてくれた通り、最高級品と言っても過言ではないくらいで、とてもじゃないけど買い取れないと言われてしまった。
「素晴らしいですね! 真珠もそうですが黒真珠も格別。このようなものをたくさんお持ちとは……」
おじいちゃんに見せたのはほんの一部でまだまだ在庫があるし、もっと質のいいものが残っている。やっぱり金額が付かないものもありそう。
おじいちゃんの希望分を売ると、大量購入した金額が増えて戻ってきてしまった。真珠で稼いでもらいたい……
◇
教会に戻ってきた私達は買ってきた家具で模様替え。
三人とも主寝室を使わないで二階の部屋を使っているらしい。主寝室は私の部屋なんだそう。
まずは、シュティー達の部屋の家具を女性ウケがいいという繊細な彫刻が施されている家具にチェンジ。ベッドも二人が眠れる超大型に替えた。
次は今回の模様替えの最大要因となった場所。使っていないという、一階の書斎をキヒター達が寛げる場所にしたい。
以前買ったソファとテーブルをしまって、リクライニングソファとソファに合わせたテーブルに。フワフワのラグとクッションを置き、本棚には買った本を入れていく。窓辺とテーブルの上には花を差した花瓶。ソーイングセットは新しくかった箱に入れた。
「ここにあるのは好きに読んでいいからね。欲しい本があったら私に言ってくれれば買ってくるから」
《わぁー! 図鑑があります!》
『まぁ! 文字の勉強ができるわ!』
『素敵! でもこんなにたくさんいいの? あたい達役に立ちたいのにいっぱいお金使わせちゃってるわ……』
カプリコは私のお財布を心配してくれたみたいで、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ふふっ。心配しなくて大丈夫だよ。お金は使い切れないくらいあるから」
『でも……』
「日頃のお礼のつもりだったんだけど、そうだな……これからもキヒターは薬草を、シュティーとカプリコはミルクをお願いできる?」
『そんなことでいいの?』
「そんなことじゃないよ。私にとっては超重要だからね! 三人のおかげですごい助かってるんだよ?」
三人は私の発言に大げさに感動していた。
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