文字の大きさ
大
中
小
263 / 502
11章
カリダの街の領主
翌朝起きた私はブラン団長達に会うためにカリダの街へと飛んだ。
ブラン団長達は私が転移できることは知ってるけど、他の騎士団員さん達は知らない。ちゃんと門を通ったら、「久しぶりだね」と笑顔で声をかけてもらえた。
宿舎に着くと、ブラン団長達や団員さん達が入り口で待ち構えていた。門を警備していた騎士団員さんから連絡がきてたみたい。
パブロさんに「おかえり!」と抱きしめられ、フレディ副隊長とブラン団長は頭を撫でてくれた。
「……セナもジルベルトも元気そうで安心した。グレン殿は?」
「グレンはストレス発散のために狩りに行ったの」
「……なるほど」
挨拶もそこそこに、私に紹介したい人がいると連れられた場所は領主邸だった。
前に見たときとは違って余計な装飾が剥がされ、威厳のある雰囲気。通された部屋も余計な物が一切置かれていくて、よく言えばものすごくシンプル。悪く言えば棚やカーテンなど家具すら足りていない。
「すみません。お待たせしました。僕はこの度領主をやらされることになったレスリー・ロガスです。そこの堅物、フレディ副隊長様の兄なので、気軽に接してね」
「レスリー……」
応接室に現れた若い男性はニコニコと軽~く自己紹介してきた。
そんな領主を低い声で呼びながら睨みつけるフレディ副隊長。
兄と言っていただけあって、髪色と目元のパーツは似ているけど瞳の色は濃い緑。
笑顔を振りまいているからか雰囲気が全然違う。なんて言えばいいのか……飄々としていて軽い。ただ、私を見る目が一瞬真剣だったから、真面目な部分もありそうな気がする。実際のところどうかはわからないけどね。
「おぉ、怖い。そんな声を聞かせたら怖がられてしまうよ?」
「はぁ……セナさん、この男が言っていた通り、一応私の兄になります。こんなのですが、腕は確かです」
(フレディ副隊長の言い方だと、強さ的にも書類的にも強いって意味かな?)
お兄さんは「こんなのなんて酷いなぁ」なんて笑っている。
私達が自己紹介をすると、「レスリーって呼んでくれると嬉しいな」と微笑まれた。
彼が言うには、この街はブラン団長の領地みたいなものだから、自分は補佐のつもりとのこと。ブラン団長に即刻否定されてたけど。
元々歴代の領地が別にあり、そこは長男が継いだそう。自分は継がなくていいと思ってたのに、今回任せられることになったのは予想外だったらしい。
ちなみに、このお兄さんは三男で、領地の騎士団をまとめている次男がいる。さらにフレディ副隊長の下にも弟がいて、その子は騎士見習いとして領地で頑張っているそう。
「フレディ副隊長のお兄さんなら安心だね!」
「フレディから引き取りたいって連絡がきたときは驚いたけど、こんな可愛らしい子とはねぇ……」
何のことかとフレディ副隊長を見上げると、私がお世話になっていたときに引き取り手がいなければ養子として迎えるつもりだったと説明してくれた。
ブラン団長もそうだけどフレディ副隊長まで……優しすぎでしょ!
「そうそう。あのときはみんな驚いて、家族会議したんだよ。フレディが頭を打ったんじゃないかって。うちには女の子がいないからね。しかもセナさんみたいな可愛い子が妹なんて大歓迎だよ。あのときの話はなくなったけど、いつでも言ってね」
「えっと……ありがとう?」
私の返事を聞いて、レスリーさんは満足そうに頷いた。
「では、挨拶も済ませましたし戻りましょうか?」
「えぇー。酷いなぁ。お兄様が色々足りない中で頑張ってるのに」
「元々あった家具を全て払い下げしたのはあなたでしょう」
「アイツが使ってた物なんて誰も使いたくないよ。ほとんど買い手も付かなくて結局処分になったくらいなのに」
「後先考えずに実行したのが……ってセナさん、どうしました?」
兄弟喧嘩を始めてしまったフレディ副隊長の服をちょいちょい引っ張って、話に割り込ませてもらう。
「家具足りないの?」
「え、えぇ。必要な数が多すぎて、この街の商会では間に合わなかったのです」
「昨日デタリョ商会ではソファとテーブルあったよ?」
「あぁ、それはデザインによる物でしょう。こういった応接室などで使えそうな物は入荷次第届けるように頼んでありますので」
なるほど。確かにおじいちゃんに頼んだのは暖かい雰囲気のソファとテーブル。
家具コーナーを見たわけじゃないけど、応接室にリクライニングソファは置けないもんねと納得した。
「前に買ったやつ使う?」
「セナさんが使うのでは?」
「模様替えして使わなくなったの。前もほとんど使ってないからキレイだとは思うんだけど……中古はいらない?」
フレディ副隊長は悩む素振りを見せたけど、レスリーさんに見せて欲しいと言われたので、昨日廃教会で回収した家具を出す。
書斎とシュティー達の部屋の家具を見て、お兄さんは「買い取るよ」と言い出した。
使わなくなった家具だからお金はいらないのに、「他の貴族に何言われるかわからないから、払わせて。僕、一応領主だからね」と、言いくるめられた。
本当にそうなのかもしれないけど、おそらくレスリーさんの優しさな気がするのは気のせいかな?
結局、半額ほどで全部買い取ってくれた。
◇
次に訪れたのは冒険者ギルド。
ジョバンニさんに挨拶すると、前に会ったことのあるキツネ耳のお姉さんを紹介された。
前のギルマスが捕まったため、ジョバンニさんがギルマスに昇格。このキツネ耳のお姉さん――アマリアさんがサブマスにランクアップしたそう。
「キツネのお耳可愛い……」
『(主様ったら、心の声が漏れてるわ……本当にモフモフに目がないんだから……)』
「ふふっ。ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
ピクピクと動くキツネ耳を目で追っていると、クラオルからベシベシと叩かれた。
「ちょ、ちょっと落ち着いて。どうしたの?」
『主様にはワタシ達がいるでしょ!』
キツネ耳にヤキモチを妬いたらしい。
か、可愛すぎる!!
『浮気はダメよ!』とプリプリしているクラオルとちょっと拗ねているグレウスを膝の上で撫でてあげる。
「……大丈夫か?」
「うん。可愛いヤキモチ」
「……よくわからないが大丈夫ならいい」
私達の話が落ち着くのを待ち、ジョバンニさんに「本日は何か問題でも?」と聞かれた。
「ううん。カリダの街に来たから挨拶に来ただけだよ」
「そうでしたか。ありがとうございます。大変光栄です」
私達が揃って訪れたから、何かあるのかと思っていたらしい。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。