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第三部 12章
仲間side【1】
目の前のオラジー猿のしぶとさに手間取っていた一行は、セナの魔力が消えたことに気が付いた。
《!》
《セナちゃん!?》
〈セナ! どこだ!〉
プルトンとグレンが大声を上げても反応がない。
「セナ様!? ……念話が通じません!」
「何だと!?」
《クラオルもグレウスもポラルもよ!》
〈……ええい! 非常事態だ! プルトン! エルミス!〉
グレンは精霊の名前を呼び、炎を吐いて火魔法をオラジー猿に放つ。
グレンの攻撃はローションで足留めを食らっていた集団に向かい、爆発と爆風を引き起こした。
プルトンとエルミスはグレンの意思を汲み、結界を張ってガルド達を守り、森への延焼を防ぐ。
グレンの遠慮のない攻撃に、ネラース達もそれぞ魔法を展開して、被害を最小限に抑える。
ブレスと巨大火の玉を受けたオラジー猿は一瞬で消し炭と化した。
散らばっていた残りもネラース達を中心に早々に片付ける。
〈セナを探せ!〉
普段とは違うセナの従魔達の様子を見て唖然としていたガルド達にグレンが指示を出し、総出でセナを探し始めた。
ほどなく、コルトが地面に空いた穴を発見。そこにクラオルの蔓の一部が引っかかっていたため、珍しく大きな声で全員を呼んだ。
〈落ちたのか?〉
「行ってみましょう!」
「イッヒッヒ! お待ち下さい」
いきなり現れたインプはグレンとジルベルトの肩を掴んで引き止める。
突然のインプの出現にその場にいた全員がビクリと反応した。
〈驚かせるな! 貴様に構っている暇はない!〉
「ヴィエルディーオ様から言われたんですよ。……ちゃんと龍走馬と契約できたみたいですねぇ。イッヒッヒ」
「な゛!?」
「それどころではありません!」
驚いたガルドに構わず、ジルベルトが叫ぶ。そこへポラルが穴から這い出てきた。
〔タイヘン! タイヘン! ゴシュジン! ケガ!〕
〈何だと!? ええい! 離さんか!〉
ポラルの衝撃の発言を聞いたジルベルトは息を呑み、顔面蒼白に。フラリと体が傾いたが、インプに掴まれていたおかげで倒れずに済んだ。
ケガと聞いたガルド達も穴に飛び込もうとして、両手が塞がっているインプによって魔法で拘束された。
「スピーアスパイダーのポラルさん、セナ様は何と?」
ガッシリと掴まれた肩に暴れるグレンを尻目に、インプがポラルに話しかけた。
そこでポラルはセナからの伝言を思い出し、状況と共に皆に伝える。
「なるほど。ずいぶんと強力な魔力封じですねぇ。セナ様が魔法を使えないとなると、ここにいる皆さんは全員間違いなく使えません。他の入り口を探せとは、そんな状況でもセナ様の指示は的確。その指示に従って地下通路を探しましょう」
「セナ様のおケガを治すのが先です!」
「魔法が使えないのですよ? 全員で捕まりに行くのですか? それは得策ではありませんねぇ。セナ様を助けたいのであれば尚更」
すぐにセナの下へ行きたいジルベルトはいつものような冷静さがない。
拘束され、その様子を見ているガルド達は逆に少し頭を冷やすことができた。
《地下通路……地下通路…………あの村だ!》
何かを思い出したアルヴィンが声を張り上げた。
「村……ですか?」
《今日寄った廃れた村だ! あそこに不快な家があった!》
「案内をお願いします」
「僕は降ります! セナ様のケガを治さないと! アルヴィンは案内して下さい!」
ジルベルトはポーションを握りしめ、引き止められる前に自ら穴に足を入れた。
「おや。手が緩んでいましたか。仕方ありません。急ぎましょう」
残ったメンバーはネラース達の背に乗り、精霊達の先導で走り出した。
◆ ◇ ◆
ポーションを手に、滑り降りたジルベルトは何とか着地をして、辺りを見回す。
少々頭をぶつけたが、そんなことには構っていられない。
「セナ様!?」
『キキー!!』
クラオルの声を聞き、近くに駆け寄るがセナの姿は見当たらない。
「セナ様はどこですか!?」
ジルベルトが質問しても、クラオルとグレウスは泣きながら壁を叩いている。
「この壁の向こうにセナ様が?」
再びジルベルトが問うと、『そうよ!』と言わんばかりにクラオルに睨みつけられた。
ジルベルトもクラオルとグレウスに倣い、壁を何とかしようと調べ始める。
◆ ◇ ◆
道中、エルミスとプルトンがウェヌスに念話で状況を説明すると、風の元精霊王であるコメータを伴って駆け付けた。
コメータは追い風を起こし、邪魔な木や草を刈ってガルド達を乗せて走るネラース達のサポートをしてあげる。
廃村に着き、アルヴィンが〝不快〟と言っていた倒壊した廃屋を調べる。
この建物が一番損傷が激しく、血痕が至るところに染み込んでいた。
地下への入り口はすぐに見つかった。
家の残骸を退けると、地面にポッカリと穴が開いていた。
〈この臭いは……〉
「穏やかではありませんねぇ」
〈さっさと降りるぞ。ニヴェス、ガルド達用に蔓を出せ〉
グレンはニヴェスに指示を出し、自身はヒラリと降りて行った。
洞窟内は光源がなく、暗闇に支配されていた。
セナの気配もクラオル達の気配も穴に飛び込んだジルベルトの気配もしない。
夜目スキルの低いガルド達は再びネラース達に乗り、洞窟内を急ぐ。
「何だここは……」
「昔、魔物を捕まえ、実験していた地下施設のようですねぇ。おそらく、魔物が逃げ出してあの村に復讐したのでしょう」
「マジかよ……」
いくつも牢屋のような格子が付いている場所を通り過ぎた。なかには魔物と思われる残骸が残っているところもあり、奥へ向かうにしたがって異臭が濃くなっている。
するとジルベルトがセナを呼ぶ声が聞こえてきた。
突き当たりの牢の中で、ジルベルトはセナの名前を呼びながら壁を叩いている。
〈ジルベルト! セナは!?〉
「おられません!」
〈何だと!?〉
「おい! 牢の扉がないぞ!」
〈離れろ! 我が壊す〉
グレンが格子を殴りつけると、結界のようなものに阻まれた。
〈クソ!〉
「あった、あった。ありました。グレンさんはこの魔石を、精霊の皆さんはこの魔道具を壊して下さい」
インプが牢の近くに埋め込まれた魔石と、いつの間にか手に持っていた魔道具を指さした。
グレンと精霊がそれぞれを壊すと、インプが壁に手をかざしながら呪文を唱え始める。
すると、洞窟内のいたるところに魔法陣が浮かび上がり、一同は異様さに言葉を失った。
「イッヒッヒ。解除できました」
インプの言葉で我に返ったグレンが再度格子を殴ると、先ほどとは打って変わって、部屋の格子全体が脆く崩れ去った。
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