転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
314 / 533
第三部 12章

閑話:頼られたい女

しおりを挟む


 ――時は少し遡る。

 女は暇を見つけてはセナを見つめていた。

「何で私ばっかり! 私が一番のハズなのに!」

 事ある毎に同じセリフを吐き、八つ当たりをするようにおのれの眷属に仕事を割り振る。

「パナーテル様、仕事をして下さい。頑張ると言っていたではありませんか」
「頑張ったってセナちゃんは何も言ってくれないじゃない!」

 言われた眷属は〝そりゃ知らないんだから当たり前だろ〟とは言えず、「まずは他の神達に許しを得てからではないですか?」と答えた。

「あの人達はちょっとミスしたくらいで怒りすぎなのよ! そりゃあ、あの教会の像を直すときのことはまずかったかもしれないけど……加護あげたじゃない!」
「まず、人ではなく神ですし、加護は転生時です。加護をやったんだから自分を好けというのは些か横暴かと。彼女の空間魔法の件もアクエス様がキチンとお話していたのに、適当に返事をしていたのは他でもないパナーテル様でしょう。しかもその後教会の件で印象はプラスどころかマイナスです」
「エアリルとアクエスだってミスして呪淵じゅえんの森に落としたのよ! それにあの人まで出て来るなんて! ずっと行方知れずだったくせに!」
「ヴィエルディーオ様は創世の女神であられます。あの御方も人ではありません。それにあの御方やエアリル様、アクエス様はセナ様が喜び、かつ役に立つ物を差し上げていたでしょう」
「私だってそれくらいできるわよ!」

 〝できたところで一度もやってないじゃないか〟と眷属は言ってやりたかったが、あー言えばこー言うパナーテルには言っても無駄なことが長年の付き合いから理解していた。
 眷属からすれば〝どうでもいいから仕事をしてくれ〟というのが本音だった。



 セナがこの世界に来てから、パナーテルは前以上に仕事をしなくなった。セナのせいではないことは重々承知しているが、眷属にとっては厄介な子供だ。パナーテルが癇癪を起こす度にセナを責めたくなる。
 眷属はパナーテルがしでかした過去を思い返す。

 ある日、セナが他の神達と宴会をしているのを目撃したパナーテルは荒れに荒れた。

「ズルいわ! 私だってセナちゃんとセナちゃんのご飯食べたいのに!」

 また別の日、セナがオークの巣の殲滅に行くことになり、頼られたいパナーテルがオークの数を増やした。しかしそれはグレン達によって無駄となったが、そのせいでセナはギルマス代理に迷惑をかけられてしまった。
 パナーテルが強化した〝人に好かれやすくなる〟加護の弊害でシュグタイルハン国の王族にストーキングもされた。

「まぁ、セナちゃんは知らないから大丈夫よね。それに好かれるのはいいことだもの」

 さらに別の日、セナがサーカスを見に行くことを知ったパナーテルは、眷属にサーカス団の魔物を開放するように命令した。セナはパナーテルの目論見通り、魔物を解放することにした。
 〝これで私を頼ってくれるハズだわ! 助けてあげれば見直してくれるハズよ!〟とパナーテルは意気込んでいた。助けを求めるとすれば、他神であることは頭にない。
 しかし、セナは自分で隷属化された魔物達を解呪してしまう。

「んもう! 何で全部解決しちゃうのよ! 私を呼んでくれれば一瞬で助けてあげるのに!」

 教会の一件を知ったヴィエルディーオから、「自分本位の神力は使ってはならない」と注意されていたにも拘らず、パナーテルは他にも、他神にバレないようにチマチマと神力を使ってはセナの邪魔をしていた。
 それらは全て、セナの従魔であるグレン達や従者となったジルベルト、一緒に行動しているガルド達……そして本人によって解決されている。


 ……そしてあの日、ついにパナーテルは強硬手段に出たのだ。

「ふーん……あの馬達に会わせるために森に向かわせるなんて、回りくどいことするのね…………あの森って確か……そうよ! やっぱり! ふふふふふ。セナちゃんはママを頼らざるを得なくなるわ!」

 パナーテルは頭の中で計画を立て、これからのセナとの生活を思い描いた。
 そのためには準備しておかなければならない。

「まずは……魔法陣に近い部屋に落とさないとでしょ……中は魔法を使えないハズだから……うん。これで魔法陣に落ちてくれるハズだわ! 魔法陣が起動した瞬間にあの人達の記憶を封印するようにして……あ、創世の女神の加護が厄介ね。精霊の指輪も使えないようにしなくちゃ。加護はママのだけで充分。早くママに慣れてもらいたいから、私の魔力をちょっとずつ送っちゃいましょ。直接送ると強すぎて気付かれそうだから……この魔石に溜めた魔力をちょっとずつ送ればいいわね…………よし! これで私のところに転移すれば完璧ね!」

 〝記憶を封印したセナを自分の空間魔法内に閉じ込め、自分を頼りにするように仕向ければ、自ずと他神よりも自分を見てくれる〟とパナーテルは思い込んだ。
 そんな自分本位のパナーテルが細工をしているのを眷属は黙って見ていた。ここまで固執されるセナを不憫に思いながら。

 パナーテルは今か今かと期待しながらセナが罠にかかるのを待っていた。罠を仕込んで機嫌のいいパナーテルはこのときだけは仕事をこなす。
 そのパナーテルにバレないように眷属はパナーテルの細工を少しいじる。

「あなたに来られたら、ますます仕事をしなくなるのは目に見えているのでね……悪く思わないで下さい。〝可愛い子には旅をさせよ〟とは、あなたの世界のことわざです。悪いようにはしませんから」

 眷属はサーカス団で魔物を開放する前にセナと目が合っていた。サーカスを楽しみ、笑顔を振りまいていたセナは眷属から見てもとても愛らしい子供だった。パナーテルの加護がなくても大抵の人には好かれるだろうことが見てとれた。
 だからあのとき、見た目とは裏腹に大人しいグランドタイガーを選んで牢を開けたのだ。

 眷属によって転移先を変えられたため、他神はもちろん、パナーテルさえも行き先は知らない。
 この一件が神界を揺るがし、この世界に影響を及ぼすことになろうとは……このときのパナーテルも眷属も予想できていなかった。



 パナーテルの罠にかかってしまったセナは眷属の目論見通り、冬の地域にいる天狐の下へ送られた。
 張り切ったパナーテルの記憶封印によって、この世界の記憶も、三十年生きてきた地球の記憶も封印され、純粋な五歳の日本人として……


 機嫌よく仕事をこなしたパナーテルはタイミングを見計らい、そのままのテンションで自身の空間魔法内の家を訪れた。
 しかし、待てど暮らせど肝心のセナが現れない。
 その場で細工した魔法陣を確認すると、セナがその場にいないことからキチンと起動したことがわかった。しかし、ヴィエルディーオの神使であるインプが魔法陣を調べているせいで、自身は調べられなかった。迂闊に今神力を使えば、神使から他神に計画がバレてしまう。

「何で!? ちゃんと起動してるのにセナちゃんは来ないのよ!」

 パナーテルは自身の計画が破綻したことを受け入れられず、声を荒らげた。
 しかしここはパナーテルの空間魔法内。誰にも聞かれることはなかった。

しおりを挟む
感想 1,816

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記 『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました! TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。 キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ) 漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ ° 連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_ 「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表! ※2025/12/25 コミカライズ決定! ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。