316 / 533
第三部 12章
古い友人
しおりを挟むそれから一ヶ月、天狐が他の村の護符を強化しに行っている日中の間、セナは老婆宅に預けられていた。何にでも新鮮な反応を示すセナは村人から可愛がられ、薬草採取や雪遊びと楽しい毎日を送っている。
護符の強化が一段落した天狐は老婆宅で夜ご飯を食べ終わったタイミングを見計らってセナに話しかけた。
「あのね、ちょっと異常すぎるから本格的に調べに山頂の方に行きたいんだけど、しばらく帰って来られなくなりそうなのよ」
「?」
言葉のわからないセナに天狐は絵を描きながら再び同じ説明をする。しかし、天狐が描いた絵はセナには理解されなかった。
「お前さん……絵が壊滅的じゃないか……いくら察しのいいセナちゃんでも、これは……」
「ムッ。仕方ないじゃない! 絵なんか描くことなかったんだもの……」
「護符の文様は描けるのにねぇ……どれ、ちょっと貸してごらん」
下手過ぎる天狐からペンを渡された老婆は紙芝居のように絵を描き、セナに内容を教えてあげる。
「……」
「そんな悲しそうな顔しないで。私も寂しいわ。それでね、この村だと魔法で手紙を送れる人がいないから、連絡が取りにくいのよ。だからすぐに連絡が取れる人のところにお願いしようかと思ってるんだけど……それなら、もしかしたらセナちゃんの言葉がわかるかもしれない人のところがいいかなって思って。その人はちょっと顔が怖いけど、とっても強いからセナちゃんを護ってくれると思うの。それにセナちゃんの好きな本もいっぱいあるわ」
天狐が話す横で老婆はサラサラと紙芝居の続きを描く。
内容を大まかに理解したセナは頭を振って、上目遣いに天狐を見つめた。
「困ったわね……」
「ふむ。セナちゃん、何か言いたいことがあるなら紙に描いてごらん」
老婆に促されて描かれたセナの絵は、子供らしいタッチだが、何かと戦う天狐だということがわかった。
「……なるほど。セナちゃんはお前さんのケガを心配しているんだよ。前にケガして戻ってきたから余計に気にしてるんだろうね」
「セナちゃん……んもう、いい子なんだから! 大丈夫よ。任せて」
セナのせいで寝不足だったのが原因……とは言えない天狐は、セナを抱きしめながら、安心させるように「大丈夫」と繰り返し言い聞かせる。
天狐がセナの右手の小指と自身のそれを絡めて、ようやく頷いた。
◇
翌日のお昼過ぎ、セナを抱きかかえた天狐は目的の人物目指して転移魔法を展開した。
「あら? 連絡しておいたのにいないのかしら?」
小さな応接室のような部屋に飛んできた天狐は、部屋の主がいないことに首を傾げた。
魔力を辿ると、どうやら続き部屋である隣りの部屋にいるらしいことがわかった。
繋がるドアには鍵がかけられていたが、天狐は無遠慮にドンドンとドアを叩く。
五分ほど叩き続けると、右眼に眼帯をした男性が眉間にシワを寄せて「うるさいぞ」と出てきた。
その男性はカラスのような漆黒の髪の毛に金色の瞳の持ち主。眼帯の下には裂傷が走り、目をケガしていることが見て取れる。不機嫌さが隠されていないため、無事な方の三白眼の目がさらに鋭く見える。
「あら、寝てたの? 久しぶりね。連絡しておいたじゃない。っていうか、寝癖付いてるわよ?」
「いつとは言ってなかっただろうが……」
目付きの鋭い男性はぞんざいに頭を撫で付けながら、ソファに座った。
「で? そいつか?」
「紹介するわね。セナちゃん、五歳、人族。これはギルドのネックレスからわかったことよ。塩スープより薬草スープやコンソメスープの方が好きで、甘すぎるものは嫌い。魔法は使えないけど、魔力はすごいわ。ただ、その魔力のせいだと思うんだけど、回復魔法が効きにくいのよね……」
「余計な情報はいらん」
「あら。全部大事な情報よ。セナちゃん、この悪人顔の人はジャレッド・ジュラル。この地下帝国の古~い元国王様。見た目じゃわからないけど、もう何千年って生きてるの。顔ほど怖くないから大丈夫よ。さ、自己紹介して」
「жжжжж!」
セナが挨拶をすると、男性は片眉をあげた。
「己ですら聞いたことない言葉だぞ」
「城には文献たくさんあるでしょ? 調べてよ。私、いろいろとやらなきゃいけないの。細かいことはこの手紙に書いておいたわ。セナちゃん、この人の言うことよく聞いてね? 愛してるわ。待っててね」
「ん? あ、おい!」
セナの額に口付けを残し、男性が止める声をスルーして、天狐は転移してしまった。
ほんの数分前に初めて会った少女と残された元国王は、どうしようかと思考を巡らせる。
1,097
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記
『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました!
TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。
キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ)
漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ °
連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表!
※2025/12/25 コミカライズ決定!
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。