転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
317 / 533
第三部 12章

天狐と元国王

しおりを挟む


 パチパチと瞬きしながら自身を見つめてくるセナから目線を逸らし、ジャレッドはひとまず天狐から渡された分厚い手紙を読んでみることにした。

 手紙にはセナの好きな物、嫌いな物、好きなこと、嫌がること、注意事項……と詳細に書き綴られていた。
 しかし、天狐が調べたことや通じない言葉、この世界の常識である魔法について、セナの不可解な行動……と読めば読むほど謎は深まるばかり。
 読んでいるジャレッドの眉間には段々とシワが刻まれていく。

「……面倒な子供を押し付けられたもんだ……」

 確かに、死ねない体となってから何千年と生きてはいるが、さすがに遠く離れた異国の辺境のことなど知る由もない。他人はおろか自身の子供にも恐れられ、まともに子供の相手などしたことがないというのにうぬにどうしろと言うのだ……とジャレッドは思った。
 最後に添えられた「セナちゃんを護って。頼んだわよ? 流血王様」という言葉にも一片の皮肉が込められている気がする。
 流血王――それはジャレッドを示す言葉だった。ジャレッドが進んで戦地に赴き、戦場を血に染めたことが由来している。
 人族に限られたことではないが、戦時中はもてはやすくせに平和になれば厄介者扱い。恐れて近付くこともなく、たまにビクビクと機嫌を取りにくる。
 そんな生活に嫌気がさし、早々に引退してはいるが……何千年と経った今でも流血王を知らぬ者はこの大陸にはいない。

 思考の海に沈んでいたジャレッドがふとセナを見てみると、セナは紙にペンで落書きしていた。
 セナの隣りに置かれている大きなカバンを見る限り、しばらく滞在することは確定だろう。

「あの天狐が随分と過保護だな……」


 ――天狐とジャレッドが巡り会ったのは、千年以上前。ジャレッドが死ぬことを諦めて放浪していたときだった。
 ある雪山の洞窟で眠っていたときに、天狐がやってきたのだ。

「ちょっと、あなた大丈夫!?」
「あぁ……」
「……あら?」

 顔を上げたジャレッドに天狐は首を傾げた。

「……あなた流血王?」
「……だったら何だ? うぬが休んでるところを邪魔しにきたのはそっちだろ」
「いや、別に。もっとカッコイイ人を想像してただけ。安心して。タイプじゃないから!」

 ビビるワケでもなく、あっけらかんと言い放つ天狐にジャレッドは虚をつかれた。
 その後、天狐は何を思ったのか延々と自分の好みの男について朝まで語り、結局ジャレッドは眠れなかったのだ。

 天狐との付き合いはそれ以来続いている。たまにフラりと城を訪れては手土産や土産話をして帰る天狐はジャレッドにとって数少ない友人と呼べる存在だろう。
 本人に〝流血王〟などと冗談でも言えるのは天狐くらいである。

「今思えばあのときも薬草やスープを渡してきたな……あいつは世話焼きだったのか……仕方ない……」

 ジャレッドはセナが読める本でも持ってきてやろうと、ソファを立ち上がった。
 セナに「ここにいろ」とジェスチャーで伝え、頷いたセナを置いて部屋を出る。


 ――しばらく言われた通りに待っていたセナは、そろそろ空腹の限界が訪れようとしていた。
 いつもだったら天狐や老婆がおやつをくれるが、今日は二人ともいない。
 グゥグゥと鳴るおなかに耐えられなくなったセナはジャレッドを探しに向かうことにした。
 部屋から出ると、地下ゆえに薄暗く、魔道具でところどころに明かりが灯っていた。そこをキョロキョロと周りを窺いながら、セナは迷路のような城の廊下を歩く。

 ここは流血王の住む王宮エリア。
 ひと睨みされれば身がすくんで動けなくなるほどの恐ろしい人物が住む場所で働きたいと希望する人は少ない。ゆえに、最低限の人材が流血王と遭遇しないように働いているだけ。

 ジャレッドを探していたセナは、甘く心が惹かれる香りに気が付いた。
 匂いを頼りに階段を降りて行く。
 クンクンと鼻を頼りに辿り着いたのは、洗濯場だった。
 あるを見たセナは顔を輝かせて、それに飛びついた。

「ひゃぁぁぁ!」

 自身のしっぽに抱きつかれた洗濯を担当していたメイドは、予想外の出来事に悲鳴をあげる。

「な、何ですか? あっ、ちょ、ダメです! そんな、あっ、サワサワ触ったら……ひゃぁ! ぁぁぁ……」

 大胆にしっぽに抱きつき、サワサワ、なでなで、さらにはしっぽに顔を埋められ、メイドは腰が抜けてしまった。
 永遠にこの恥辱に耐えなければならないのかと気が遠くなりかけていたメイドは、セナの腹の虫に助けられた。
 盛大に訴えられて一瞬止まったセナから、自身のしっぽを救出する。

「ハァ、ハァ……お、お嬢様。獣族のしっぽは……」
 ――グゥ~
「お、おなかが空いているのですか? 申し訳ありませんが、ここにはお嬢様にお出しできるものはありません。食堂に……」
「жжжжжж……」
「え……言葉が…………う……そんなウルウルとした目で見ないで下さい。案内したくても食堂に入る許可をもらっていないので案内できないのです」
 ――グゥ~
「……わ、わたしが作ったものでよければ食べられますか?」

 メイドは仕事をクビになる覚悟でセナに手作りのおやつを見せる。
 それを見たセナは途端に目をキラキラとさせて、齧り付いた。



 部屋に戻ってきたジャレッドはセナがいないことに慌てる。

「ここにいろと言っておいただろうが……」

 ジャレッドは慌ただしく部屋を後にし、セナの気配を探す。


しおりを挟む
感想 1,816

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記 『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました! TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。 キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ) 漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ ° 連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_ 「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表! ※2025/12/25 コミカライズ決定! ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。