転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
321 / 534
第三部 12章

癒し同盟

しおりを挟む


 セナ付きの侍女となったアリシアは自由奔放なセナに振り回されていた。
 何かあるごと……いや、何もなくてもしっぽに触れようとしてくるセナを注意、何にでも興味を持つセナを注意、散らかされた部屋の片付け、汚れも気せず遊ぶセナの服を洗濯、キッチンに邪魔して自ら料理したがるセナの付き添い……と、到底王族専属とは思えない、平民の子供を相手にしているような毎日。
 ただ、見栄やプライドや権力とは程遠い天真爛漫なセナにアリシアは救われていた。
 流血王のお気に入りの女の子ということで、不安しかなかったアリシアだったが今では吹っ切れ、年の離れた兄弟のお守りをするように接している。それは堅苦しいのを嫌うセナも喜んでいた。
 この世界の単語をいくつか覚えたセナにより、以前よりは幾分か意思疎通もできるようになった。

 ジャレッドはアリシアにセナを任せつつ、セナの言語について調べていたが、これはまだ解決していなかった。
 かなりの時代を遡ってもセナが理解できる言葉ではなかったのだ。

◇ ◆ ◇

 朝ご飯を終えたジャレッドに、アリシアが話しかける。

「あの……」
「ん?」

 ちょうどそのタイミングでジャレッドに天狐から連絡が届いた。

「これから天狐が来るら……」
「セナちゃ~ん!! 会いたかったわぁ!」
「!」

 ジャレッドが二人に言い終わる前に三人の前に天狐が現れ、セナに抱きついた。
 いきなり現れた天狐に、アリシアは驚いてティーカップを落としそうになってしまった。

「ティンコ?」
「そうよ~。ちょっと疲れちゃったから、アタシを癒して?」

 天狐がスリスリとセナの頭に頬ずりすると、セナはお返しに天狐の頭を撫でてあげる。これは天狐がケガをして戻ってきてからの天狐のお気に入りの行動だ。

「何だ。子供みたいに」
「セナちゃんとくっ付いてると癒されるのよ」
「わ、わかります! あ! 申し訳ございません……」
「いいわよ。あなたは?」
「セナ付きになった侍女だ。名をアリシア・ブラウンという」
「そうなの。アタシの子、可愛いでしょ?」
「はいっ!」
「……いつからお前の子供になったんだ?」
「ん~……最初から? 子供なんて面倒だと思ってたけど、可愛いし憎めないのよね」

 悪びれもなく言う天狐にジャレッドはため息を吐いた。

「……まぁ、いい。どうだったんだ?」
「アタシが見た限りだけど、はいつもより雪が多くて、魔物が全体的に増えてるわね。今のところそこまで被害は出ていないわ。ただ、この先も続くと危ないかもしれない……って感じ」
「原因は?」
「そこまでは至っていないわ。あら、ありがとう」

 天狐はアリシアが淹れた紅茶を受け取って口を潤した。 

「ねぇ、あなた治ったの?」
「は? ……嫌味か?」
「前より傷痕薄くなってると思ったんだけど……」
「…………気のせいだ」
「あら。そう?」

 ジャレッドは少し心当たりはあるものの、自分でちゃんと確認したわけではないので、話しを終わらせた。

「セナの方は何かわかったのか?」
「それが調べてるんだけど、わからないのよ。そもそも、やっぱりアタシの魔法陣が起動してなかったの。だから何でアタシのところに来たのか謎なのよね。全く困っちゃうわ。ね? セナちゃん」

 膝の上に乗せたセナに同意を求めると、セナはコテンと首を傾げる。

「あぁ……んもう、可愛いんだから。そうそう。アリシアちゃん、あなたしっぽ気を付けた方がいいわよ?」
「え……あの……その……」
「もう手遅れだ」
「……はい」

 ジャレッドがハッキリ言うと、アリシアは顔を赤くして俯いた。

「あら! セナちゃんったら。獣族のしっぽは触っちゃダメって言ったでしょ?」
「モフモフ!」
「ごめんなさいね? 他のことは言うこときくのに、しっぽだけは注意しても触るのよね……しかも幸せそうな顔して」
「そうなんです! だから強く言えなくて……」
「あなたとは気が合いそうだわ。この服もあなたが用意したの?」
「はい。セナ様はよくお洋服を汚されますので……」
「そうなのよ! 前にもね……」
「一気に姦しくなったな……」

 天狐とアリシアの話が盛り上がり、ジャレッドは会話に入ることを止めた。
 話に夢中の天狐の膝の上にいるセナを手招きで呼び、セナと一緒に図鑑を眺める。

 しばらく経っても二人の話しは留まることなく、セナはジャレッドに助けを求めた。

「ジィジ……」
「ん? あぁ、腹が減ったのか。菓子食うか? ちょっと待ってろ……ほら」

 セナの様子を見てピンときたジャレッドはセナ用のお菓子ストックからセナのお気に入りのお菓子を持ってきた。
 受け取ったセナはジャレッドと半分こして食べ始める。

「お前はいつも分け与えるな」
「いっしょ、おいしい」
「ふっ。そうか……ん?」

 ジャレッドは不意に訪れた沈黙に天狐とアリシアの方に顔を向けた。

「アリシアちゃん……見た?」
「はい」
「アレが笑ってたわ……」
「あの……セナ様とご一緒のときはよく笑われています」
「えぇ!? この朴念仁が!?」

 アリシアは〝はい〟と言うわけにはいかず、曖昧に笑ってやりすごす。

「……お前……」
「だって知り合って此方あなたの笑顔なんて見たことなかったもの! いっつもブスっと無表情じゃない。そう……セナちゃんはジャレッドの心も癒したのね……」

 ジャレッドは〝笑わないわけではない〟と言ってやりたかったが、普通に接してくるセナに過去のわだかまりが癒させてることは確かなので、反論することができなかった。

「いい傾向ね! セナちゃん、もっと表情豊かになるようにしてあげてね。あぁ、怖い、怖い。睨まないでちょうだい」

 ジト目を送るジャレッドに天狐は大げさに怖がってみせる。
 そのやり取りを見て、アリシアは「ふふっ」と笑い声が漏れてしまった。

「あ……申し訳ございません」
「いいのよ、いいのよ。この人にかしこまることないわ」
「それはうぬのセリフだ」
「そうね! アタシにもかしこまらなくて大丈夫よ! 元々そういうの好きじゃないし」

 言い返したジャレッドを放置して、パンッと手を叩いた天狐にアリシアは驚いた。

「え……ですが……じゃあ、天狐さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」

 ニコニコと笑顔を向けてくる天狐にアリシアが案を出すと、天狐はニッコリ笑って頷いた。

「もちろん。何なら敬語もいらないわ。アタシ達セナちゃんの可愛いツボ一緒だもの」
「敬語は……流石に……ですが、嬉しいです!」
「うんうん。やっぱり女の子は笑顔が一番ね! 敬語は慣れてからで大丈夫よ」

 アリシアは〝敬語はなくせそうにない〟と思いつつも、天狐の気持ちが嬉しかった。

しおりを挟む
感想 1,817

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻   2021年 7月。第12巻  2022年 2月。第13巻  2022年 8月。第14巻  2023年 2月。第15巻  2023年 9月。第16巻  2024年 3月。第17巻  2024年 9月。第18巻  2025年 3月。第19巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。