転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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第三部 12章

隠し部屋と流血王



 翌日、セナはアリシアと一緒にお城の中を探検していた。スタルティは魔法の勉強中のため、終わり次第合流予定である。

「セ、セナ様。こちらはわたし達メイドも立ち入りを禁止されています。ヒッ! も、もももも戻りましょう?」

 魔道具の明かりは付いていても光源が弱く、城内の他の場所よりも暗い。
 アリシアは不気味に思い、セナにお願いするが、当のセナは楽しそうに鼻歌を歌っている。
 そのセナの歌声が誰もいない廊下に響き渡り、アリシアの恐怖心をさらに煽っていた。

「жж!」
「え、ちょ、セナ様ぁ! 一人にしないで下さいぃぃ!」

 見つけたドアの中にセナが入ってしまい、アリシアは慌てて追いかける。
 部屋の中は明かりが灯っておらず真っ暗だった。
 アリシアが壁に付いている魔道具のスイッチを押すと、チカチカと数回瞬いた後、ちゃんと明かりが灯り、アリシアはホッと息を吐いた。

「ここは……女性の部屋でしょうか?」

 ジャレッドの部屋やスタルティの部屋とは違い、暖かみのある色彩の家具やカーテン。部屋の中は空気は籠っているものの、ホコリは積もっていなかった。
 セナは「おぉ」と声を上げ、楽しそうにあっちこっち物色し始めてしまった。

「セナ様、あまり触らない方がよろ……」
「何をしている……?」
「ヒィィッ! か、神よ。お助け下さい……」
「おい。うぬだ。レイスではない。祈るな」
「あ……ジャ、ジャレッド様でしたか……申し訳ございません……」
「いい。ここは立ち入り禁止のはずだが……」
「えぇと……存じております。ですがセナ様が……」
「はぁ……セナか……」
「アチャー!! жжж! жжжжжж!」

 いつの間にか続き部屋の方に行っていたセナの叫び声が聞こえ、アリシアとジャレッドは顔を見合わせて続き部屋に飛び込んだ。

「セナ!? …………は? 何だこれは……」
「жжжж! жжжжж!」

 飛び込んだジャレッドは壁際にポッカリと開いた暗闇に目を瞬かせた。
 セナは興奮してアリシアに何かを言い募っているが、で話されたため、アリシアもジャレッドも理解できなかった。

「セナ、落ち着け。こ、これはどういうことだ? こんな穴などうぬは知らんぞ」
「жжжж、жжжжж!」

 セナが得意気に本棚の本をいじると、スススススと本棚が動き、が隠れる。

「なるほど……隠し部屋か……あいつが作ったのか……?」
「жжжж!」
「……そうだな。確かめよう」
「待って下さいぃ」

 自身の腕を引っ張られたジャレッドは再び仕掛けを動かし、【ライト】を灯して暗闇に足を踏み入れた。
 は人が一人通れるほどの狭さの階段になっていた。
 一人残されるのが嫌だったアリシアはジャレッドの服を掴んで後ろに続く。

 階段の先は……机とイス、木箱が三つと本が数冊あるだけの小部屋だった。

「ホコリがすごいですね……」
「жжжжжж!」

 セナはまず本に飛び付いてパラパラとめくって確認した後、木箱の中身をチェック。お気に召す物がなかったのか、途端につまらなさそうな顔になる。
 ジャレッドはゴクリと喉を鳴らし、意を決したような顔付きで机の上に置いてあった本を手に取った。

「あいつの字……あいつの日記か……」
「あのっ! ジャレッド様、セナ様が!」
「ん?」

 早口でアリシアに呼ばれ、ジャレッドが振り向くとセナが既に階段を登り始めていた。

「……そうだな。戻ろう」

 何もこんなところで読むこともあるまいと、ジャレッドは日記を片手に二人に続いた。



 ジャレッドは再びアリシアにセナを任せ、自身の執務室で日記を読み始めた。
 日記にはジャレッドとの思い出や想いが綴られており、懐かしく、温かな気持ちが溢れてくる。

「そうだ……あいつは臆病なくせに自分を犠牲にするやつだった……アマンダ……」

 ジャレッドは想い人の名前を呟き、愛おしそうに日記を撫でる。

「こんなにも……こんなにも優しいお前が……なぜうぬと息子を手に掛けようとしたのだ……」

 あの日、ジャレッドはおかしくなったアマンダに襲われ、まだ乳飲み子であった息子を護るためにアマンダを殺めざるを得なかったのだ。そのときにジャレッドも右眼を失ってしまった。
 その一件が流血王と恐れられることに拍車をかけることになった。気に入らなければ例え妻であっても殺されると……

 謎がわかるかもしれないと読み進めるジャレッドは最愛の人物の最後の文面に目を留めた。

 ――女神は私の願いを叶えてくださるでしょうか……彼女は私とジャレッドが結ばれても変わっていなかった。私を亡き者にして、ジャレッドを自分の物にしようとしている。でも私には抗う術がない。私は……私はどうなっても構わないけれど、ジャレッドと愛しい息子だけは護りたい。女神様……どうか約束を忘れないでくださいませ……

「……どういうことだ? 女神との約束とは……うぬのこの体は女神の呪いではないのか……?」
「ジャレッド様! ジャレッド様ー!」

 ジャレッドの思考は廊下で声を張り上げ、ドアをドンドンと叩くアリシアによって遮断された。

「何だ」
「セナ様が……セナ様が大変なんです!」
「何だと!?」

 ジャレッドは取り乱すアリシアと共に廊下を走り出した。

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