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第三部 12章
そもそもが勘違い
「私が一番でしょ!? どうしてポッと出のその二人が出てくるのよ! ちょっと、何で!? 解きなさいよ!」
喚き散らすパナーテル様をガイ兄が魔法で簀巻きにした。
「パナーテル様、あのね。天狐はいきなり現れた言葉も通じない私をロクに睡眠も取らずに介抱してくれたのね。アチャもずっと傍で私が過ごしやすいようにお世話してくれてたの。何より……ジィジもだけど、この三人は近くにいるだけですごーく安心できるんだよ」
「私だってそれくらい……!」
「それくらい? 私あなたの魔力で、夜うなされてたんだけど……っていうかさ、パナーテル様が言う〝一番〟ってどこからきたの?」
「え……?」
さっき映像を見たときも、パナーテル様は「私が一番」と言っていた。あれはパナーテル様視点だったけど声でわかったんだよね。おそらく、あの映像はパナーテル様の記憶だ。何で映像が見えたのかはわからないけど……
「前、ガイ兄に聞いたときは特に何も思わなかったんだけど、おばあちゃんと仲良くなってから疑問に思ってたんだよね。〝優しいおばあちゃんが自ら創りだした子供達に上司と部下みたいな格を付けるかな?〟って」
「ヒャーヒャッヒャ! セナは聡いのぅ」
「「「「!」」」」
「わからないから想像になるけど……『一人では大変じゃろうから、みんなで協力し合い、仲良くこの世界を治めておくれ』みたいなこと言ったんじゃないかと思うんだけど……」
「はっ! そんな感じのこと言ってました! え!? あれ? でも最初からでしたよ?」
エアリルは私の言葉に混乱してしまった。
「それは多分……パナーテル様本人が言い始めたんじゃないかと思ってるんだけど……『私が一番最初に創られたんだから、私が一番よ!』みたいな」
「全く同じセリフを言ってたな……」
「つまり、私達は繰り返し言われ、そうだと思い込んだってことかな?」
「何じゃと!?」
アクエスパパはため息を吐き、ガイ兄は呆れ、イグ姐は怒りの形相でパナーテル様を睨みつける。
「わ、私が一番なのよ! みんなに愛される光の神だもの!」
「ふむ。当初は五人共平等にしたつもりじゃった。しかし、眠りから目覚めれば、パナーテルを中心とした構図になっておった。意図したものではなかったが、お主達がそれでよいのならわざわざ水を差すこともないと思うてのぅ……」
「え……そんな……まさか……本、当に? 私が一番じゃないの? そんなの……嘘よ……」
目を泳がせていたパナーテル様におばあちゃんが伝えると、パナーテル様は目に見えて取り乱し始めた。
「やっぱり……パナーテル様はさ、自分以外にも目を向けるべきだと思うんだよね。全ては当たり前なんかじゃないんだよ。パナーテル様は感謝したことないでしょう? あの眷属が仕事を頑張っていてくれたから、世界は平和だったんだよ」
「何でセナちゃんが私の眷属を褒めるのよ! 記憶取り戻してあげたじゃない! 褒めるなら私でしょう!?」
話が通じないパナーテル様にいい加減疲れてくる。
「パナーテル様はさ、私じゃなくてもいいんだよ。パパ達が気に入っている子なら。隣りの芝生は青い。自分が持っていないものを持っているのが羨ましいだけ。パナーテル様はただ所有物としたいだけ。そこには優しさなんかない。ただの自己満足。私が褒めれば満たされるの? 違うでしょ?」
「どういうことですか?」
エアリルパパがよくわからないと首を傾げながら聞いてきた。
「うんとね、盛大にこじらせた〝かまってちゃん〟なんだよ」
「え?」
「パパ達四人は仲よしでしょ? 仲間に入れて欲しかったの。自分の方が立場が上だって壁作ったのは本人なのにね。一番上という立場を誇示しつつ、四人に褒められ、『すごい! 流石! 頼りになる!』って持ち上げてもらいたかった……って感じ」
「何じゃその面倒さは……」
「一種のメンヘラさんだね。仮に一番最初に会ったのがパナーテル様だったら、私は教会に寄り付かなかったよ。束縛嫌いだもん」
パパ達は呆れ返り、哀れむような目でパナーテル様を見た。
パナーテル様は私の〝嫌い〟発言がショックだったらしく、パクパクと口を開け閉めしている。
正確にはパナーテル様本人は〝苦手〟で、束縛が〝嫌い〟なんだけど……誤解されたっぽいかな?
「で、結局どうするんだ?」
「うーん……あ! パナーテル様の眷属ってどうなってる? 呼べる?」
「ん? 眷属? 呼べばいいのか?」
「うん! お願い」
アクエスパパに頼んで呼び出したパナーテル様の眷属は、現れるなり土下座の体勢になった。
「本当に申し訳ございません」
「うん。いいよ。顔を上げて?」
おずおずと顔を上げた眷属の顔は見覚えがあった。
あの映像を見ていたときは気が付かなかったけど、確かこんな顔をしていたハズ。
「あれ? お兄さん……もしかしてサーカスのときの人?」
「はい……覚えていらっしゃったのですね……命令を受けていたとはいえ、重ね重ね申し訳ございません」
「ふふ。いいよ。天狐の下に送るようにしてくれたのはお兄さんかな? って思ったんだけど違う?」
「……流石セナ様。その通りです」
「何じゃと!?」
「イグ姐落ち着いて。このお兄さんはね、私がパナーテル様の空間に送られるのを阻止してくれたんだよ。まぁ、どうせならパパ達のところに送って欲しかったのが本音だけど、お兄さんが送ってくれなかったら天狐達に会えなかったから。お兄さんはさ、パナーテル様のことを考えて天狐のところにしたんでしょ? パナーテル様がこれ以上ヤキモチ妬かないように、仲間外れにならないように」
「…………セナ様は何でもお見通しなのですね……」
一瞬、目を見開いたお兄さんは泣きそうな顔で微笑んだ。
「いかなる処罰も受ける覚悟はできております。自分が勝手な行動をしたのです」
「お兄さん優しいね。こんな状況でもパナーテル様を庇うなんて……でもね、残念ながら私は飛ばされたことより、記憶を消されたことの方が嫌なんだ。ねぇ、おばあちゃん。本当に私が決めていい?」
「ヒャーヒャッヒャ。構わぬよ」
「じゃあ……おばあちゃんはみんなへの説明不足ってことでメイン神様に復帰。おばあちゃんのお手伝いがお兄さん。パパ達の眷属やお兄さんのお手伝いとしてパナーテル様ね。決定ー!」
我ながらいいアイディアだとパチパチと自分で拍手していると、数秒後にパパ達の「えぇー!?」という声が重なった。おばあちゃんと傍に控えているインプだけは笑っているけど……
「何で私がお手伝いなのよ!」
「パナーテル様、下を経験したことがないと下の気持ちはわからないんだよ。パナーテル様の頑張り具合はパパ達から聞くからね。頑張ったら差し入れしてあげるから!」
「差し入れ……?」
「そうだよ。ご褒美がないとやる気出ないでしょ? まぁ、私が作ったご飯とかお菓子がご褒美になるかはわかんないけど。もちろんお兄さんもね」
「じ、自分もですか?」
「うん。パナーテル様の仕事をほとんど担っていたのはお兄さんでしょ? めっちゃ大変だったと思う。でも今回はお仕置きだから、これから頑張ったらね?」
パナーテル様は呆然としながら「差し入れ……」と呟き、お兄さんは顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまった。
頑張ってくれとパナーテル様と眷属の頭を撫でてあげる。するとパナーテル様は憑き物が落ちたように「頑張る……」とふにゃと笑い、眷属は「セナ様はお優しいのですね……」とさらに号泣。
二人にはああ言ったけど、逆に言えば頑張らなければ差し入れもしないし、もちろん届けるのはパパ達にお願いするつもり。
トップにいた人が下に降格ってパナーテル様タイプには結構な罰になると思うんだよね。みんなのために働いて、自分中心の考え方から変わってくれたらいいな……
それにおそらくだけど、おばあちゃんのあの笑い方から、おばあちゃん本人もパナーテル様に何かお仕置きすると思うんだよね。
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