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第三部 12章
天狐とお出かけ【1】
ジィジはお仕事、スタルティはお勉強、私達は天狐とお出かけ。そのため、アチャは本日実家に戻って休日となった。休日とは言っても、夜には戻ってくるらしいけど……ゆっくり休んでもらいたい。
天狐に転移で飛んでもらい、私は村の位置を確認。
記憶喪失のときに行った場所はマップに記載されてなかったんだよね。これで私も転移で来られる。
「お? お嬢ちゃん久しぶりだなー」
「あ! こんにちは!」
「おおぉ? 話せるようになったのか?」
「うん!」
以前一緒に採取してくれたおじさんは「そいつはよかったな!」と頭を撫でてくれた。
村長であるおばあちゃんにもご挨拶しに来たんだけど……グレンが寒さにやられ、急遽キッチンを借りることになった。
〈寒い! 寒すぎるぞ!〉
「古代龍なのに寒さに弱いのねぇ。ますます興味深いわ」
〈あの城は平気だったのに!〉
「あそこは地下だし、住みやすいように造られているのよ」
「グレンは火のドラゴンだから暑さには強いんだよ。ほら、これ飲んで」
ガクガクと震えるグレンに、作ったスープを渡す。
まさかここまで寒さに弱いと思ってなかったから、グレンの服は買い足していない。
「はい、ジルはこっち飲んで。昨日みんなの服も買えばよかったね。私が大丈夫だったから思いつかなかった。ごめんね」
「ありがとうございます」
〈あぁ……温まるな……〉
昨日買ったヌクヌク草とホカホカ草、生姜に唐辛子、さらに辛味酒を入れた特製ピリ辛スープを二人に渡す。
グレン用に作ったスープは成分が濃いかなと、ジル用のはグレンのスープを薄めた物にしてみた。
〈ふむ。死ぬかと思ったが、もう大丈夫だ。むしろ体が熱いくらいだな〉
「よかった。風邪引かなくて済みそうだね。グレンは寒くなったらこれ飲んで。ジルの分はこっちね」
二人にスープの残りをそれぞれ渡しておく。
二人の顔色を見ても、今日一日は大丈夫そう。
「これも持っておくといい」
「おばあちゃん、これは?」
「指先を温める丸薬だよ。その様子じゃ、手袋もなさそうだからね。指先の感覚がなくなってきたらお飲み。凍傷予防になるよ」
「わぁ~! ありがとう!」
おばあちゃんは、私達三人にそれぞれ五つほど丸薬をくれた。
グレンは鑑定したらしく、「いいものを持っているではないか!」と大喜びだった。
「そうそう。この村の辛味酒を分けてくれない? セナちゃんが欲しいらしいのよ」
「セナちゃんなら構わないよ。料理に使うのかい?」
「うん! ここの辛味酒は魔力が強いからカクテルよりも料理の方がいいと思うの」
記憶が戻ったことで、当時感じていたことも全部マルっと覚えている。
街で見た全ての辛味酒に魔力が宿ってたけど、この村のは特別魔力が濃いんだよね。
何となくだけど、この村は他の村とは違うんだと思う。村長のおばあちゃんが息吹いてケガを治してくれたしね。
「前にも言ってたけど、そのカクテルって何?」
「ジュースみたいなお酒だよ。飲みやすいから気を付けないとガバガバ飲んじゃうんだけど……そのまま飲むのが苦手な人とかは好きだと思う」
天狐の質問に答えると「ジュース?」と首を傾げられた。
そういえば果実水はあるのにジュースは見たことない!
「うんとね、フルーツの果汁なんだけど……飲んだ方が早いと思う。すぐできるからちょっと待ってね」
オレンジジュースが飲みやすいかなと無限収納からシネンシスを取り出し、果汁百%のフレッシュジュースを作る。
空間魔法で圧縮しちゃえばいいだけなんて魔法って素晴らしい!
「はい、どうぞ。これはシネンシスっていうフルーツだよ。シュグタイルハン国のダンジョン産だからこの辺にはないかもだけど、甘くて美味しいから飲んでみて」
「いい香りね!」
〈セナ、おかわり!〉
グレンさん……もう飲んでたのね……さっきスープも飲んでたのに……
「んん! 美味しいわ!」
「うん。香りそのまま、果実を飲んでるみたいだねぇ」
「よかった! これはオレンジ……シネンシスジュースで、こういうジュースとお酒を混ぜて飲みやすくしたものをカクテルっていうの」
〈セーナー〉
「ちょっと待って~」
グレンにせっつかれ、ちょうどいいやとスクリュードライバーを作って渡す。
オレンジジュースとウォッカを割るだけだから簡単。
この世界ではお酒に年齢制限はないけど、ジルの分は超薄めにしておいた。何となくね。日本だったらアウトの年齢だもん。
「美味しいねぇ……辛味酒がこんな風になるなんて。飲みやすいけど、これは危険だね」
「そうね。セナちゃんが言ってた通り、グイグイ飲めちゃうわ」
〈我は飲んだ気がしない。飲むならそのままがいい〉
「ふふふ。グレンのそのセリフは呑んべぇのセリフっぽいね。さっきのスープにも辛味酒が入ってるから、今日はこれ以上はダメだよ」
グレンは残念そうにコップを見つめているけど、これ以上飲ませるつもりはない。グレンは私を見て諦めたのか、ジルに紅茶を要求していた。
「前のスープもさっきのスープも、セナちゃんは料理上手なんだねぇ」
「そうよ! ウチの子すごいでしょ?」
「ハハハ。そうだねぇ。村のスープじゃ物足りなかっただろう? すまないね」
「ううん! おばあちゃんの薬草スープは美味しいから大好きだよ。美味しくなかったのは……」
「違う村の塩スープね。セナちゃん吐き出したもの」
天狐が笑いながら言うと、おばあちゃんは一瞬目を見開いて、その後爆笑した。
だって、あのスープ……ただの塩味のお湯だったんだもん。まだ野菜しか入ってなかったからいいけど、あれにお肉が入ってたらトラウマになるところだったよ……
「少食のセナちゃんがおかわりするくらいだもの。間違いなく気に入ってるわ」
「ハハハハハ! それを聞いて安心したよ。今日はゆっくりできるのかい?」
「えぇ。そのつもりよ」
「そうかい。みんな喜ぶよ。それなら辛味酒の倉庫に案内してやろうかね」
村長の先導で家を出ると、外は雪が降り始めていた。
来たときは晴れてたのに、山の天気は変わりやすいという言葉まんまだ。
村長いわく、今年はやたら雪が多くて雪掻きが追いつかないんだそう。
毎日毎日の雪掻きは大変だよね……特に腰!
溶かしてもいいか聞いてみると、大丈夫らしいので、グレンが早速溶かしていた。歩きにくかったらしい。
村の外れにある倉庫で樽に入った辛味酒を選んでいると、朝も会ったおじさんがやって来た。
「おー、いたいた」
「あら? どうしたの?」
「さっきその兄ちゃんが震えてただろ? 寒ぃんだと思ったから息子の昔の服持ってきたんだよ。ちっと古いがあったけぇぞ。こっちは坊主用だな」
おじさんが渡してくれたのはふわふわの上着と、フォックスファーみたいなマフラーだった。
「わぁ~! ホワホワだ! もらっちゃっていいの?」
「おう! 家にあっても着ねぇからな」
「ありがとう!」
早速、グレンに上着、ジルにマフラーを装着。二人共、サイズはピッタリだった。
古いって言ってたけど、全然古く見えない。淡いグレーの毛皮で二人によく似合っている。
二人がお礼を言うと、「いいってことよ」とおじさんは笑った。
おじさんにお礼しないと!
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