文字の大きさ
大
中
小
308 / 502
第三部 12章
忘れられた存在
ジィジに怒られてから許可が下りず、罰としてスタルティと一緒にお勉強をさせられること三日……先生から匙を投げられた。
私が受けていた授業は魔法の基礎と応用、護身術だったんだけど……
護身術は私が結界を張れるため先生が手出しできず。急遽、誘拐されそうになった場合を想定した練習へ変更。でも先生が弱すぎて意味を成さなかった。
魔法の方は私が完全無詠唱で魔法を使うことを驚かれ、研究対象にされそうになったため早々に逃げた。
先生達は揃って「教えられることがありません」とジィジに報告。
「はぁ……規格外もいいところだ。他の勉強をさせたところで、同じ結果になりそうだな……仕方ない。許可してやる」
「やったー!」
ようやく許可が下りた私は早速グレンとジルに念話で報告。二人共喜んでくれた。
テンションが上がった私はその日の夜、久しぶりにパンケーキを振舞った。
ジィジには「そんなに行きたかったのか……」って苦笑いされたけど、行きたかったんだよー!
◇ ◆ ◇
ダンジョンに行くことを報告すると……天狐からはポーションやら丸薬やら傷薬の軟膏やらといっぱい渡され、アチャには「ちゃんと食べて下さいね」とパンとお菓子をもらった。
初級ダンジョンって聞いてるのに心配性じゃない?
買い物もしたし、天狐とアチャに防寒具を着させられ準備は万端!
地下と外を繋ぐ連絡通路までジィジが送ってくれた。
「おぉ! 大きいエレベーターだ!」
「これは昇降式魔道具だ。あそこに付いている魔石に魔力を込めれば上昇する。今回は誰かがやるだろうから任せていいが、誰もいないときは自分でやれ。帰りはあっちの昇降式魔道具で降りてこい」
「はーい!」
ふむふむ。一方通行なのね。
出入りは多いみたいで、エレベーター前に列が出来ていた。
エレベーターは四トントラックが乗りそうなくらい広い……箱。箱というよりも工事現場とかで使われている檻みたいなやつ。
ジィジに気が付いた並んでる人達に「どうぞどうぞ」と譲られ、私はエレベーターに一番乗り。しかも「柵から手を出すと危ないですよ」とか「こちらの方が揺れないですよ」と親切に教えてくれた。
ジィジが言っていた魔石に魔力を込める作業もいつの間にか終わっていて、上昇し始めたエレベーターの中から私はジィジに手を振った。
エレベーターは雪よけのために屋内に設置されていたらしく、着いた場所は倉庫みたいな場所だった。
倉庫から出た瞬間、目に飛び込んできたのは超巨大氷山!
ジィジから聞いていたけど、雄大な氷山を見て言葉を失ってしまう。
「……セナ様?」
「あ、うん。ごめん。すごいなぁって見てただけだから大丈夫だよ」
心配そうに声をかけてきたジルに答えると「そうですね」と微笑まれた。
「こういった自然を前にすると、自分の非力さを思い知らされる気がします……」
〈そうか? ただの氷の塊だろう?〉
ちょっとしんみりした途端、グレンから雰囲気をぶち壊す一言が発せられた。
グレンらしい言葉に私とジルは目を合わせてクスクスと笑ってしまう。
「そろそろ向かおうか? えぇっとどっちだっけ?」
「ギルドで地図をいただきました」
地図でおおよその場所をチェックして、頭の中でマップを展開させる。
薬草のお店のおじさんは二日かかるって言ってたけど、ネラース達に頼んだら一日もかからなそう。
「雪道ってネラース達大丈夫かな?」
『アクランなら大丈夫だと思うわ』
「白熊だもんね。ネラースかニヴェスも大丈夫だといいんだけど……」
「僕でしたらクーヴェを呼ぶので大丈夫です」
「クーヴェ?」
私が首を傾げるとジルは「出ておいで」と影から馬を呼んだ。
「ああああああああああー!!」
ヤバい。すっかり忘れてた! そうだ! 龍走馬従魔契約したんじゃん!
マジでド忘れしていて記憶を取り戻したときも呼んでいない。
焦りながら「グリネロ」と呼ぶと、出て来てはくれたけど盛大に落ち込んでいらっしゃった。
「超ごめん! マジごめん!」
謝る私をチラ見したものの、悲しそうに目を逸らされた。
「本当にごめんね?」
言い訳のしようがない私がひたすら謝っていると、ジルの従魔であるクーヴェがグリネロに話しかけた。
言葉は理解できないけど、宥めているっぽい。
『主人……もう、忘れてくれるな』
「うん。ごめんね」
『もういい。忘れぬように働こう』
あ、そんな感じでクーヴェが言ってくれたのかな? 後でクーヴェにもお礼言わないと!
お詫びのためにも今日はグリネロに乗せてもらおう。
「あ、でも馬具がない」
「セナ様の手綱はエアリル様が作っていたので、マジックバッグに入っていると思います」
「え!? マジで?」
無限収納を確認すると確かに手網は入っていた。入っていたけど頭絡と手綱だけで、ハミとか鞍がない。
「これしか入ってないんだけど……」
「エアリル様が『セナさんなら大丈夫。ない方がいいと思う』と仰っておりました」
「マジか……」
乗馬って……人生で一回、牧場で乗馬体験しただけなんだけど……それも小学生くらいの頃。乗れるとは思えない。
〈ネラース達と変わらないだろ。早く向かわないと、このまま日が暮れるぞ?〉
「あぁ! それなら大丈夫そう」
グレンの言葉に安心してグリネロに頭絡と手綱を装着。
座ってもらって背中に乗ると、グレンが言った通りネラース達の背中と感覚的な差がなかった。
〈羽が邪魔だ。しまえないのか?〉
『しばし待て』
グリネロが『ぬぬぬぬぬ』と力むと、羽がスーッと体に吸い込まれていった。
流石異世界! 地球の常識から逸脱している。
アクランを呼んでグレンを乗せてもらい、ようやく私達は出発。
グリネロの背中は快適で、私は方向を指示するだけ。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。