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第三部 12章
忘れられた存在
ジィジに怒られてから許可が下りず、罰としてスタルティと一緒にお勉強をさせられること三日……先生から匙を投げられた。
私が受けていた授業は魔法の基礎と応用、護身術だったんだけど……
護身術は私が結界を張れるため先生が手出しできず。急遽、誘拐されそうになった場合を想定した練習へ変更。でも先生が弱すぎて意味を成さなかった。
魔法の方は私が完全無詠唱で魔法を使うことを驚かれ、研究対象にされそうになったため早々に逃げた。
先生達は揃って「教えられることがありません」とジィジに報告。
「はぁ……規格外もいいところだ。他の勉強をさせたところで、同じ結果になりそうだな……仕方ない。許可してやる」
「やったー!」
ようやく許可が下りた私は早速グレンとジルに念話で報告。二人共喜んでくれた。
テンションが上がった私はその日の夜、久しぶりにパンケーキを振舞った。
ジィジには「そんなに行きたかったのか……」って苦笑いされたけど、行きたかったんだよー!
◇ ◆ ◇
ダンジョンに行くことを報告すると……天狐からはポーションやら丸薬やら傷薬の軟膏やらといっぱい渡され、アチャには「ちゃんと食べて下さいね」とパンとお菓子をもらった。
初級ダンジョンって聞いてるのに心配性じゃない?
買い物もしたし、天狐とアチャに防寒具を着させられ準備は万端!
地下と外を繋ぐ連絡通路までジィジが送ってくれた。
「おぉ! 大きいエレベーターだ!」
「これは昇降式魔道具だ。あそこに付いている魔石に魔力を込めれば上昇する。今回は誰かがやるだろうから任せていいが、誰もいないときは自分でやれ。帰りはあっちの昇降式魔道具で降りてこい」
「はーい!」
ふむふむ。一方通行なのね。
出入りは多いみたいで、エレベーター前に列が出来ていた。
エレベーターは四トントラックが乗りそうなくらい広い……箱。箱というよりも工事現場とかで使われている檻みたいなやつ。
ジィジに気が付いた並んでる人達に「どうぞどうぞ」と譲られ、私はエレベーターに一番乗り。しかも「柵から手を出すと危ないですよ」とか「こちらの方が揺れないですよ」と親切に教えてくれた。
ジィジが言っていた魔石に魔力を込める作業もいつの間にか終わっていて、上昇し始めたエレベーターの中から私はジィジに手を振った。
エレベーターは雪よけのために屋内に設置されていたらしく、着いた場所は倉庫みたいな場所だった。
倉庫から出た瞬間、目に飛び込んできたのは超巨大氷山!
ジィジから聞いていたけど、雄大な氷山を見て言葉を失ってしまう。
「……セナ様?」
「あ、うん。ごめん。すごいなぁって見てただけだから大丈夫だよ」
心配そうに声をかけてきたジルに答えると「そうですね」と微笑まれた。
「こういった自然を前にすると、自分の非力さを思い知らされる気がします……」
〈そうか? ただの氷の塊だろう?〉
ちょっとしんみりした途端、グレンから雰囲気をぶち壊す一言が発せられた。
グレンらしい言葉に私とジルは目を合わせてクスクスと笑ってしまう。
「そろそろ向かおうか? えぇっとどっちだっけ?」
「ギルドで地図をいただきました」
地図でおおよその場所をチェックして、頭の中でマップを展開させる。
薬草のお店のおじさんは二日かかるって言ってたけど、ネラース達に頼んだら一日もかからなそう。
「雪道ってネラース達大丈夫かな?」
『アクランなら大丈夫だと思うわ』
「白熊だもんね。ネラースかニヴェスも大丈夫だといいんだけど……」
「僕でしたらクーヴェを呼ぶので大丈夫です」
「クーヴェ?」
私が首を傾げるとジルは「出ておいで」と影から馬を呼んだ。
「ああああああああああー!!」
ヤバい。すっかり忘れてた! そうだ! 龍走馬従魔契約したんじゃん!
マジでド忘れしていて記憶を取り戻したときも呼んでいない。
焦りながら「グリネロ」と呼ぶと、出て来てはくれたけど盛大に落ち込んでいらっしゃった。
「超ごめん! マジごめん!」
謝る私をチラ見したものの、悲しそうに目を逸らされた。
「本当にごめんね?」
言い訳のしようがない私がひたすら謝っていると、ジルの従魔であるクーヴェがグリネロに話しかけた。
言葉は理解できないけど、宥めているっぽい。
『主人……もう、忘れてくれるな』
「うん。ごめんね」
『もういい。忘れぬように働こう』
あ、そんな感じでクーヴェが言ってくれたのかな? 後でクーヴェにもお礼言わないと!
お詫びのためにも今日はグリネロに乗せてもらおう。
「あ、でも馬具がない」
「セナ様の手綱はエアリル様が作っていたので、マジックバッグに入っていると思います」
「え!? マジで?」
無限収納を確認すると確かに手網は入っていた。入っていたけど頭絡と手綱だけで、ハミとか鞍がない。
「これしか入ってないんだけど……」
「エアリル様が『セナさんなら大丈夫。ない方がいいと思う』と仰っておりました」
「マジか……」
乗馬って……人生で一回、牧場で乗馬体験しただけなんだけど……それも小学生くらいの頃。乗れるとは思えない。
〈ネラース達と変わらないだろ。早く向かわないと、このまま日が暮れるぞ?〉
「あぁ! それなら大丈夫そう」
グレンの言葉に安心してグリネロに頭絡と手綱を装着。
座ってもらって背中に乗ると、グレンが言った通りネラース達の背中と感覚的な差がなかった。
〈羽が邪魔だ。しまえないのか?〉
『しばし待て』
グリネロが『ぬぬぬぬぬ』と力むと、羽がスーッと体に吸い込まれていった。
流石異世界! 地球の常識から逸脱している。
アクランを呼んでグレンを乗せてもらい、ようやく私達は出発。
グリネロの背中は快適で、私は方向を指示するだけ。
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