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第三部 12章
空を飛ぶのは人参だけじゃない
モコモコを採り尽くし、私達は六階層へ降りる。
この階層にもモコモコがたくさん!
早速水魔法を繰り出し、グレウスに地面を揺らしてもらうと……飛び出てきたのはカブだった。
「おぉ~! 他の野菜ってカブだったんだ!」
人参と同じように羽が生えている。その羽は人参よりちょっとだけ大きかった。
重さかな? ってか、カブも飛ぶのね……
カブ料理もたくさんある。しかも雪下野菜なら美味しいハズ。
これもたくさんゲットしよう!
狩り担当のネラース達以外の全員をグループ分けして、総出で収穫。
大量の雪下野菜に私は気分上々。
「うふふふふ。このダンジョン最高じゃん! さ、次行こ、つぶっ!?」
久しぶりに話している途中でクラオルからのパンチが炸裂された。
前より力強いのは気のせいだと思いたい……
『ダメよ! すぐ食材に夢中になるんだから! お昼ご飯の時間よ!』
「えー…………はーい」
クラオルに抗議の目を向けると、『フンッ』と鼻を鳴らされ、私は渋々承諾。
プルトンに結界を張ってもらい、雪族の村でおばさんからもらったラグを出す。
このラグはおばさん特製で、雪の冷たさが伝わらない仕様になっている。
おばさんが「これでいつでも釣りに行けるわ!」と言っていたから、ワカサギ釣り用に作ってくれたんだと思う。
お昼ご飯は朝作っておいたスープとパン。同じ味だと嫌がるかなと、このスープはピリ辛にしておいた。
グレンは寒かったのか鼻をすすりながらおかわりしているし、ジルは「温まりますね……」とホッコリ。
パパ作のチート服を着ている私でも防寒具がなければ肌寒く感じるくらいだから、二人には結構寒いんだろう。
これは今日も湯の花風呂決定かな?
ご飯を終えたら再出発。
まだカブは復活していないから、七階層へ。
七階層はちぢみほうれん草、八階層は大根、九階層はキャベツ、十階層は白菜だった。
どれも羽が生えていて、各羽は段々と大きくなり……野菜の速さと羽の大きさが比例しているっぽい。
人参よりキャベツや白菜の方が速いなんて……驚きもいいところ。
ただ、あのお店に人参しかなかった理由がわかった気がする。
十一階層は少し雰囲気が変わり、広場型だけど生えている木にまで雪が積もっていた。
「さっきまでは薄い雪化粧って感じだったのに、ここは普通に積もってるんだね。足元もさっきより雪が深いし……歩きにくいね……」
ネラース達もいつの間にか普通サイズに戻っている。
前の階層までは畑みたいにいっぱいモコモコがあったのに、この階層はまとまっていない。ポツポツとモコがある程度。
これは期待できない。
「セナ様、ここはセーフティーエリアだそうです」
「そうなの?」
「はい。ギルドでいただいた地図に書いてありました」
「そっかぁ」
雪下野菜を狩り尽くしていたため、そろそろ日が陰ってくる時間。
「今日はここに泊まろうか?」
〈む!? 馬車か?〉
「テントじゃダメ? パパ達がくれたテントだから寒くないと思うよ?」
〈本当だな?〉
「多分? ダメだったら馬車出してあげる」
〈それならいいぞ〉
グレンからOKが出たので、無限収納に入っていたテントを出してみる。
アウトドアコーナーでよく見るドーム型のテントを想像していたのに、出てきたのは可愛い模様が描かれた小さめの円形のテントだった。
「何だっけ? モンゴルの……ゲル?」
〈セナ……小さすぎるぞ〉
「だねぇ……」
おそらくこれは一人用。私一人ならいいだろうけど、三人は厳しい。
後で馬車を出すとしても中が気になる私が中を覗くと……
「あ、普通に広いよ。ベッドもあるし」
空間拡張されているらしく、四隅(円形だけど)にベッドが四つ置かれていて、真ん中にはストーブ型の調理台と流し台。調理台の近くにはテーブルとイスという完備ぶり。しかも心地よい暖かさだった。
〈おぉ! これはいいな! 馬車の〝まんしょん〟みたいだ〉
「ふふっ。そうだね」
グレンのマンションの発音に笑ってしまう。
一度、出したテントをしまって、場所を移動する。
階段の目の前だったからね。
木が数本生えている場所の雪をグレンに溶かしてもらって、再度テントを出した。
グレンとジルにはテントに入ってもらい、私はテント近くで作業を始める。
《主よ、それは壁……か?》
「ふっふっふ。これは目隠しだよ」
土魔法で囲いを作っていた私にエルミスが不思議そうに聞いてきた。
雪の中にお泊まりなんて日本じゃやったことない。どうせならやりたかったことがある。
鼻歌を歌いながら魔法を駆使。チートでよかったとつくづく実感。
「できたー!! いいね、いいねぇ! テンション上がるね!」
《なるほど。風呂か》
《あちらは家……でしょうか?》
「エルミス正解! 露天風呂と、かまくらだよ。かまくらの中でご飯食べようと思って」
本当はお餅がよかったんだけど、まだお餅を発見してないからしょうがない。
テントに戻って夜ご飯の準備。
今日はおでん! 早速収穫した野菜を使うよ!
調理台だけじゃ足りなくて、コンロも使うことになった。
ジルにも手伝ってもらい、完成させたらグレンを連れてかまくらへ。
グレンは〈わざわざ外で食べなくてもいいだろう……〉ってボヤいてたけど、かまくらを見たら目を輝かせた。
〈何だこれは! 雪の家か?〉
「これはかまくらだよ。ラグを敷いてあるから、靴脱いで中に入ってみて」
〈……ん? 寒くない?〉
「よかった。大丈夫そうだね。じゃあ、食べよう!」
急遽コタツに似せて作ったテーブルの上におでん、きんぴら、だし巻き玉子、ほうれん草の胡麻和え、茶碗蒸し……と乗せていく。
個々のお皿を乗せる余裕はないから、今日は大皿。グレンが絶対お肉を希望すると予想して、豚巻きレニーレムマッシュも作った。
〈おぉ! 見たことない料理ばかりだ!〉
「いい香りですね」
落ち着かないグレンは〈いただきます〉と言うと、早速豚巻きキノコに手を伸ばした。
私的にはおでんを食べて欲しかったんだけど……流石グレン。ブレない男だわ。
〈んんん!〉
「美味しいです!」
二人共、いたく気に入ってくれたらしく、大きな土鍋で作ったおでんは早々になくなってしまった。
食後はグレンとジルも一緒に、湯の花入り雪見風呂で日本酒を少々。
これがやりたかったがために、コテージに水着を取りに行った。
「ふはぁ~」
〈これはいいな。酒があると思うとこの臭いも気にならん〉
「ふふふ。明日に影響がないように、飲みすぎちゃダメだよ?」
〈…………わかった〉
「ジルも……って大丈夫!?」
ジルも飲むか聞こうと顔を向けると、茹でダコみたいに顔を真っ赤にして俯いていた。
グレンにジルを抱えてもらい、急いでテントのベッドへ。
大丈夫だと言い張るジルに保冷剤を渡して熱を下げさせる。途中、何回も「服を……着てください」って言われたけど、服よりジルの方が大事に決まってるじゃん!
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