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第三部 12章
雪ダンジョンの恐ろしさ
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グレンもジルも眠りについた夜中、私は再び精霊達と共に雪見風呂に入っていた。
精霊達と話した結果、ジルは温泉で一気に温まったためのぼせたんだろうということに落ち着いた。
「ふぅ~。これで雪がチラつく……もしくは月とか見えたら最高なんだけどなぁ」
《……セナちゃん、ゆっくりしてるとこ悪いけど、人間が来るわ》
プルトンが私に注意を促すと、バタバタと階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
「あぁー! やっと着いた!」
「セーフティーエリアだー!」
「なぁ、前に来たときあんな建物あったか?」
「ん? あ、本当だ。前はなかったから他の冒険者のテントとかじゃねぇの? それよりさっさと休もうぜ。走り回って疲れちまった」
「すげぇなぁ。あんなテント持ってるなんて高ランクかな?」
ダンジョンに来た冒険者パーティっぽい。
私達のゲル型テントを見つけたらしく、話題になっている。
結界石を起動しているから近付いては来られないけど、騒がしい声で雰囲気が台無し。
プルトンに頼んでグレンとジルが起きないようにテントに遮音の結界を張ってもらった。
《主よ。そう肩を落とすな。天気が荒れそうだからちょうどいい》
「え、セーフティーエリアなのに?」
《うむ。空気が一段と冷えている。これは吹雪くぞ》
「マジか……」
ダンジョン内は天気も変わる。それはパパ達からの刷り込み情報で知っているけど、てっきりセーフティーエリアは除外されるんだと思っていた。
安全って魔物が出ないだけなのね……
吹雪が明日まで続くなら、動かない方がよさそう。特にグレンは寒さに弱い。あっという間に体温が奪われちゃう。
私は気配を殺しながらお風呂から上がり、テントへ戻った。
◇ ◆ ◇
翌朝、目を覚ましたジルはちょっと気まずそうだったけど、朝ご飯を食べるころには普通に戻っていた。
テントの外の様子を窺うと、雪は降っているものの、吹雪いてはいなかった。これなら攻略が続行できそう。
「そういえば昨日の冒険者ってどうなったの?」
《うふふ。あっちで縮こまってるわよ》
〈冒険者?〉
「うん。夜中に降りてきたんだよ」
プルトンが指さした方向に様子を見に行くと、一本の木の根元で男性五人が団子状になって震えていた。
「えっと……大丈夫?」
「ごごごごごどどど」
声をかけた私に何か喋ろうとしているけど、顎がガチガチ鳴りすぎてて何を言いたいのかサッパリわからない。
〈セナ! そんなやつら放っておけ!〉
「僕も事前準備をしていない自業自得だと思います」
二人共冷たい! 確かに準備して来なかったこの人達が悪いとは思うけど、ここは初級ダンジョン。初心者も来られる。このまま雪の中に放置は可哀想じゃない? 遭難になっちゃうよ!
悩んだ私はガタガタと震える五人にヒールをかけ、さっき作ったお昼ご飯用のスープを一杯ずつわけてあげることにした。
不満を言うグレンを宥め、冒険者が回復したのを見届けたら、お礼を言う冒険者達から離れる。
戻るのか進むのか決めるのは自分達。あんまり手助けしすぎて、他人に寄生する人になって欲しくない。
〈放っておけばいいものを〉
「まぁまぁ。これからあの人達がランク上がったとき、初心者を助けるかもしれないでしょ? それが受け継がれていったら優しい冒険者が増えるよ」
「セナ様はそこまでお考えだったのですね」
いや、ジル、ごめん。今思い付いただけ。まぁ、本当にそうなってくれたらいいと思うけどね!
「さ、予想外に時間かかっちゃったから、チャキチャキ進も! 残り四階層でしょ?」
「はい。最後の十五階層にダンジョンボスがいるそうです」
ゲルをしまって十二階層に降りる。
十二階層は森の広場型だった。
このエリアも雪が降っていて、歩きにくい。
ルフスは雪のせいで飛びにくいらしく、小さいサイズでグレンの頭の上に。残りのネラース達は再び狩りに走って行った。
私はグレンに抱っこしてもらい、腕の中からモコモコ探し。
《セナちゃん、セナちゃん! あっちに面白いものがあったわよ!》
「面白いもの?」
《そう! 変な花!》
プルトンが言うには木に咲いている花のことで、見た目は花に見えないらしい。
案内してもらった木を見上げると、私には……ソフトクリームにしか見えなかった。
「うずまきソフトクリームの花……?」
《この形面白くない?》
〈小さな蛇みたいだな〉
「あ、想像するのはそっちなんだね」
〈ん? どういう意味だ?〉
首を捻るグレンに「何でもない」と伝え、これは何だろうと鑑定をかける。
「おおお! あれ? あ! そういうことか!」
「セナ様?」
「あのね、これ生クリームだよ」
〈は?〉
鑑定では【ホイップフラワー】。栄養価はなく、これだけでは甘くもない。ただ泡立てた生クリームみたいな感じで、フワフワしているだけらしい。
私は片栗粉の代用品で【スライム液】を使っていたけど、本来は【マラーション草】のローションを乾燥させたものが片栗粉だった。
シュティーのミルクは栄養価が高い液体生クリーム。多分だけど、シュティーのミルクは栄養豊富な飲むミルクで、この花がお菓子とかに使われるホイップクリームだ。
説明しても納得していないグレン達に、お試しで砂糖を混ぜたホイップクリームを食べさせる。
グレンいわく、シュティーの生クリームの方が美味しいけど、妥協できる範囲だそう。
モコモコ探しはお休みして、【ホイップフラワー】の収穫を手伝ってもらう。
《この木は上の階層にも生えておりましたが、このような花は咲いておりませんでした。おそらくですが、ダンジョン内で雪が降り、寒さが増したときに咲く花だと思います》
「おぉー! そうなんだ! ラッキーだったね!」
途中でウェヌスから考察を聞き、私のやる気は一気に上がった。
レア物なら今のうちにたっぷりと収穫しておきたいよね!
モコモコも見つけ次第収穫しつつ、【ホイップフラワー】を刈り尽くす勢いで採取しまくる。
十三階層、十四階層も森エリアだったため、【ホイップフラワー】の在庫は大量となった。
これで気がねなくホイップクリームを使ったおやつが作れるし、デザートサンドイッチも作れる!
グレンやガルドさん達の消費量を考えるとすぐになくなっちゃいそうで、なかなか手が出せなかったんだよねぇ。
十五階層のボス部屋の手前のセーフティーエリアでお昼休憩。グレンに雪を溶かしてもらい、たき火で冷えた体を温める。
機嫌のいい私はデザートにカスタードパイを作った。
「雪下野菜もホイップクリームもたくさん! お手伝いありがとう!」
〈おぉ! 温かいおやつだな!〉
みんなハフハフ言いながら焼きたてを頬張る。プルトンは《甘いし、温かいし最高ね!》と大はしゃぎだった。
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