文字の大きさ
大
中
小
313 / 502
第三部 12章
王様達の計画
目の前に着いた途端、ギュッと抱きしめられた。
「天狐?」
「うふふ。心配で来ちゃった! これから入るの?」
「ううん。今さっき終わって出てきたとこだよ」
「あら! 流石セナちゃん! 早いわね! 体も冷えてるし、さっさと帰りましょ?」
私を抱えたまま、天狐がボソボソボソッと早口で何かを呟くと、ネラース達も全員、ジィジの部屋に転移していた。
あの人達そのまま置いて来ちゃったじゃん……まぁ、回復してあげたし、あの様子なら自力で戻れそうだよね。
「驚かせるな」
「ジィジただいま!」
「おかえり。手伝いに行ったんじゃないのか?」
「行ったわよ」
「あのね、ちょうど出たところで天狐と会ったんだよ」
「もう終えたのか。早いな。どうだったんだ?」
「みんなが手伝ってくれたからいっぱい手に入ったよ! あとね、生クリームあったの!」
「「なまくりぃむ?」」
ジィジと天狐、二人に首を傾げられ、私はダンジョンで手に入れた【ホイップフラワー】を出す。
「何だこれは?」
「これって確か、すごい寒いときに咲く花よね?」
「そう! 十一階層のセーフティーエリアで雪が降ってきてね、十二階層に降りたらいっぱい咲いてたの!」
「セナちゃんまさか……食べるの?」
「うん! 美味しいよ!」
ジィジはよくわかっていないみたいだけど、天狐は「これがねぇ……」と信じられない様子。
それなら作るしかないよね?
砂糖を混ぜたホイップクリームを食パンに挟んで二人に渡す。食べたジィジは「甘い……」と呟き、天狐は「おいしー!」と叫んだ。
「セナちゃん天才だわ!」
「女共が好きそうな味だな……」
ジィジには甘すぎたらしく、食べるのが遅い。そんなジィジから天狐が生クリームサンドを奪って食べ始めた。
「セナがダンジョンに行っている間に決まったことがある」
「決まったこと?」
「キアーロ国やシュグタイルハン国と話し合い、パーティーが開かれることになった」
「は!?」
ジィジの説明では――私がキアーロ国やシュグタイルハン国に戻ったら、ジィジとなかなか会えなくなる。それなら、キアーロ国やシュグタイルハン国と国交を結べば、情勢もわかるし、何かあったときに介入できると考えた。
……それで二ヶ国に手紙を送ったら、了承されたそう。
「セナの捜索に周辺国にも協力を求めたから、会わせたいらしい。セナに言うと嫌がるだろうからどうしようかと悩んでいたと書かれていた。パーティーなら一堂に会せるだろう?」
「えぇ……」
「己らも行く。ここから向かうと時間がかかるからな、ヴィーに送ってくれと頼んだ」
「マジか……もう決定事項じゃん……」
「あと、シュグタイルハン国のアーロン王から『俺達に心配をかけた罰だ。逃げるなよ』と伝言だ」
「う……」
くそぅ……釘刺された!
私抜きでやって欲しい……
天狐やアチャ、スタルティも一緒に行くらしく、天狐は「カッコイイ人いるかしら?」とテンションが高い。
しかも、すでに日程まですでに決まっているそう。
おばあちゃんが送ってくれるから、それまでは自由にしてていいらしい。
盛大に落ち込む私をクラオルとグレウスがスリスリして慰めてくれる。
もう腹をくくるしかないのかもしれない。
「そんなに嫌だったのか?」
「面倒じゃん……マナーとか言葉遣いとか……それに注目されたくない。自由がいい」
囲おうとされるのも嫌だし、利用しようと絡んでくるのも嫌。
「なんだそんなことか」
「え?」
「うふふ。セナちゃんに何かしてきたら……任せてちょうだい」
笑う天狐の紅い瞳がキラリと煌めいた気がした。
〈我がいるだろう〉
不満そうに口を尖らせるグレンに思わず笑みが浮かぶ。
「そうだね。みんなが一緒だもんね。一日だけ頑張ろう! それに国交が繋がったら、ホイップフラワーが向こうでも手に入るだろうし、悪いことばかりじゃないよね」
「そうね! ってことは、逆もあるわよね? こっちではなかなかない薬草や面白いものが手に入るわ!」
天狐も輸入品に興味があるらしい。
今まで私が見てきたものや採取したものを「こんなのがあるよ」と説明すると、俄然行く気満々になった。
「ふむ。そういった書類もまとめねばならんな……上手くいけば豊かになる」
「ホイップフラワーもリストに入れてね!」
「あれをか? 確かに女が好きそうではあるが……」
「ジィジ甘い!! 絶対売れるし、売る方法もあるんだよ!」
「売る方法? 一方的なのはいかんぞ」
ジィジをビシッと指さすと、やんわりと腕を下ろされた。
「むぅ。そんなことしないよ! 普通に売っても活用法がわからなそうだから、レシピ登録すればいいと思うの」
「レシピ登録って商業ギルドのか?」
「そうそう。料理の作り方と一緒に素材を売り込むんだよ」
「それが可能なら売れるだろうが……」
「レシピは任せて!」
ジィジのためなら一肌脱ぐよ! それに私も普通に手に入るようになったら嬉しいしね!
タルゴーさんに言ったら大喜びで広めてくれそうだ。
一番の問題は劣化。おそらく、要冷凍ないしは要冷蔵。
それを伝えると、それは問題ないと返ってきた。この国に多い雪族は氷魔法が使える人が多いらしい。天狐が口添えすれば村単位で協力が仰げるそう。
売れることを予想して、買い取りを強化しなければならない。
そのため、先んじてこの国でレシピ登録することになった。
「ねぇ、セナちゃん。前に登録したレシピってなーに?」
「えっとね……ジャムパンと、ナッツパンと、ドライフルーツパンと、カレーと、ベビーカステラと……あと何だっけ?」
「キーウィのスムージー、スイートポテト、すき焼き、トンコツスープでしょうか?」
〈スモークチーズやスモーク卵もあったぞ〉
天狐の質問に私が答えきれずにいると、ジルとグレンが補ってくれた。
それを聞いたジィジは「そんなにか……」と、ちょっと引き気味。
「パンってパンよね? それ以外は想像もつかないわ」
〈どれも美味しいぞ〉
「セナ様は料理だけではなく、便利道具も登録しています」
「はぁ……規格外だと思っていたが、ここまでとは……」
「流石セナちゃん! すごいわ! 料理が上手だとは思ってたけど、多才なのね」
ため息をつくジィジとは対照的に天狐はニコニコと私の頭を撫でる。
他にも料理や道具に使えるものがあるかもしれない。
ジィジと天狐にこの国で手に入るものを聞き、輸出可能品をリストアップしていく。
逆にジィジ達は、グレンやジルからこちらにはないものや、民が喜びそうなものを聞き、こちらも一覧表に。
アチャやスタルティも巻き込んで、ワイワイと賑やかに計画を練ることになった。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。