文字の大きさ
大
中
小
316 / 500
第三部 12章
再会に次ぐ再会
アランさんに伝説の魔物についてオタクばりに熱く語られたあの日から……数日、レシピの調理法を教えたり、王妃の取り調べに同席したりとバタバタとすごした。
そこで判明したのは……なんと、アチャの実家が傾いたのはチスタ家が裏で糸を引いていたせいだった!
いろいろとジィジが取り計らって、原因を取り除いた今は盛り返しつつある。
民衆に【ホイップフラワー】が認知され始めると、空前のブームに。冒険者を中心に買い取り事業は軌道に乗り、雪族の村では冷凍保存箱も開発された。
第二段階としてホイップクリームを使ったバニラアイスをレシピ登録。
それは【ホイップアイス】として毎日長蛇の列を作っている。寒い地域だからあんまり売れないかな? って思ってたのに、こんなにすぐに浸透するとは予想外だった。
私はグレンが見つけてきた【ホシカッキー】という干し柿と、【シラルゥ】というホワイトシチューのルゥ(板状のアレ)のためにダンジョンに入ったり、ギルドの依頼をこなしたり、天狐に別の雪族の村を紹介してもらったり、実験したり……と充実した月日を過ごしていた。
◇ ◆ ◇
約束のパーティーが近付き、私達はおばあちゃんのチカラでキヒターの教会に前乗り。
私の予定が終わったら、ジィジ達も合流して、キアーロ国の王都に向かう。向かうって言っても、王都にある魔女おばあちゃんのお店に飛ばしてもらうんだけどね。
そこから転移門を使って、ブラン団長達と一緒に今回の会場であるシュグタイルハン国の王都に移動する予定。
キヒター達と一日遊んだ翌日、私達は精霊の国へ。
ジィジのお城の近くには精霊の国へ繋がる扉がなかったため、かなり久しぶり。そのせいでウェヌスも精霊の国に戻れていなかったんだよね。
精霊達は大歓待で迎えてくれ、食材の在庫も魔道具の在庫も一気に増えた。
しかも! 私が行けなかった腐呪の森の北にあるという山の湧き水を汲んでくれていたんだよ!
さらになんと! この湧き水の正体はワインビネガーとバルサミコ酢。ワインビネガーは赤・白・ロゼと三種類。
腐呪の森になかったお酢が手に入って私は歓喜! 喜ぶ私を見て、精霊達は殊更喜んでくれた。
ウェヌス達は私に新しい指輪を作ってくれ、赤のアレス達からも精霊の指輪を受け取った。普段一緒にいない四人とは念話でたまに話していたけど、私が指輪を持っていた方が何かと都合がいいらしい。
精霊の国で楽しい二日間を過ごした私達はクラオルファミリーの棲家へ。
ファミリー達は大喜びで……突撃してきたモフモフ達に揉みくちゃにされた。
私が行方不明になったとき、もしかしたら私がまた呪淵の森に飛ばされたかもしれないとガイ兄から連絡が入って、みんな探してくれていたんだそう。
まさかガイ兄からそんな連絡がいっているなんて知らなかった私は、もっと早く来ればよかったと後悔に苛まれる。
そんな私に〝無事ならいい!〟〝また会えて嬉しい〟と、一生懸命ジェスチャーで教えてくれる可愛いモフモフ達。控えめに言っても最高すぎる!!
離れがたいモフモフパラダイスでまたも二日ほど過ごし、私達はカリダの街のデタリョ商会のおじいちゃんを訪ねた。
おじいちゃんも心配してくれていて、会ったら渡そうと思っていたと、シュティーとカプリコ用の服やブラシをプレゼントしてくれた。
一度キアーロ国の王都へ飛び、ネライおばあちゃんに挨拶。おばあちゃんには涙を流しながらハグされたんだけど……以前よりも痩せていたため、「お土産だよ」と天狐と一緒に作った霊薬を飲んでもらった。見た目も鑑定の【状態】も大丈夫なことを確認して、ホッと一安心。
会いたい人達に久しぶりに会えて私も大満足!
残りの人達に会えるのを楽しみにしながら、キヒターの教会に戻った。
◇ ◆ ◇
翌日、訪れたジィジ達と一緒にキアーロ国の王都にある、おばあちゃんのお店に飛ばしてもらう。
ちなみに、おばあちゃんのことやキヒター達のことを知らないスタルティは、ジィジの腕の中で眠らされている。スタルティには「魔法で向かうが、慣れていないと気分が悪くなるから」と伝えてあるらしい。
お店のカウンターで魔女スタイルのおばあちゃんが待っていた。
ジィジ、天狐、アチャはおばあちゃんの見た目とお店のゴチャゴチャ具合に驚いている。
「ヴィー、なのか……?」
「ヒャッヒャッヒャ。いかにも。観光するのじゃろう? セナが以前泊まった宿にお泊まり。部屋はインプがとっておるよ」
「ありがとう!」
「ヒャーッヒャッヒャ! …………セナ。普段見えているものが全てではない。よく見て、己を信じるんじゃ」
「え?」
「ヒャーッヒャッヒャ! さぁ、おゆき」
急に真面目な顔で言うおばあちゃんに驚いている間に、おばあちゃんが笑いながら指をパチンと鳴らす。
すると私達は一瞬にしておばあちゃんのお店の前の通りに移動していた。
「えぇー!? ちょっと、おばあちゃん! どういう意味!?」
ドアには〝クローズ〟と札がかけられていて、開かないドアを叩いても、おばあちゃんからの返事はない。
そのフラグみたいな発言……何かあるってことなの!? 怖いわ!
「ふふふ。セナちゃん、いらっしゃい。何かあっても大丈夫よ。セナちゃんにはアタシ達がいるわ」
「うん……ありがとう」
天狐は私を抱っこして頬をつんつんとつつく。
天狐の優しい温もりにギュッと抱きつくと、私を安心させるように微笑んでくれた。
「さ、とりあえず、スタルティを起こしてあげるためにその宿に行きましょ?」
天狐に促され、以前泊まったベーネさんの宿、〝渡り鳥〟に向かう。
宿のベッドでスタルティを起こし、私達は王都の観光。
スタルティとアチャは「雪がない!」「暖かい!」と大興奮。ジィジは久しぶりだけど、天狐は春の季節の地には来たことがないらしく、終始楽しそうだった。
夜ご飯はベーネさん達が豪勢な食事を用意してくれ、グレンはジィジや天狐とワインをガバガバ飲んでいた。
◇ ◆ ◇
ジィジにパーティーの件を聞いてから半年、今日はついにパーティー当日。
朝、宿に迎えに来てくれたブラン団長達に駆け寄る。
「久しぶりー!」
「……会いたかった」
「心配したんですよ」
「大変だったね! 無事でよかった!」
ブラン団長、フレディ副隊長、パブロさんは代わる代わる私を抱きしめ、頭を撫でまくる。
ちょっと頭がクラクラするけど、心配かけた私のせいだから甘んじて受け入れるよ!
落ち着いた三人にジィジ達を紹介すると、ブラン団長達はスッと表情を引き締めた。
「普段通りで構わん。セナから聞いている」
「そうそう。アタシも堅苦しいのは辞めて欲しいわ。ね? アリシアちゃん」
「えっと……わたしはその……」
天狐に話を振られたアチャはオロオロと言い淀む。
すると、ブラン団長は「では遠慮なく」と表情を緩めた。
全員でお城に向かい、王様に挨拶。
ブラン団長からの手紙に書いてあったけど、王太子だったブラン団長の義兄が正式に王位を継いでいた。
今回のこのパーティーのように周辺国が集まる機会はそうそうないと、元国王も一緒に向かうらしい。
今回は特例として、もれなく全員転移門をくぐった。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。