文字の大きさ
大
中
小
317 / 500
第三部 12章
大集合
ズズズズズと開いた転移門をくぐると、門の前でアーロンさんが待ち構えていた。
アーロンさんに挨拶しようとすると、目の前にサッと気配が四つほど移動してきた。
「お嬢!」
「嬢ちゃん!」
「「……」」
「ドナルドさん、アーノルドさん、暗部のお兄さん達久しぶり~!」
誰かわかった私が挨拶すると、アーノルドさんとドナルドさんは一瞬、驚いたように目を見開いた。
「嬢ちゃん……呑気すぎるだろ……」
「お嬢、本当にもう大丈夫なのか?」
「うん! 心配してくれてありがとう」
ーーウォッホン!
わざとらしい咳払いにそちらを見ると、アーロンさんが苦笑いしていた。
アーロンさんと宰相のレナードさんが一歩前に出ると、ドナルドさん達はシュッと一瞬にして天井裏や柱の陰に移動した。
流石暗部! 忍者もビックリだね!
「アーロンさんとレナードさんも久しぶり~」
「久しぶりだな。逃げられるかと心配していたが……」
「ジィジ達が一緒なのにそんなことしないよ」
「ハッハッハ。それはジュラル殿に感謝しないとな。……それにしても、わかりやすくうちの暗部に気に入られているな。まぁ、アイツらも調べ回ってたから、後で労ってやってくれ。紹介してもらいたいが……ここじゃなんだからな。応接室に移動願いたい」
アーロンさんに促され、ゾロゾロと廊下を歩いている最中、廊下に飾られているどデカい武器と防具を見て、天狐は「この国は力持ちが多いのねぇ」なんて感心していた。
応接室でソファに座るとアーロンさんからおやつを求められた。そういうところは変わってないみたい。
ラスクとポテチを出し、ジィジ達にアーロンさん達を紹介する。
「この国の国王のアーロンさんと宰相のレナードさん。さっき挨拶したのはドナルドさんとアーノルドさんだよ。一言お願い」
私が天井裏にいる二人に向かってお願いすると、パカッと天井が開く。二人は顔だけ覗かせて「よろしく」と告げて再び引っ込んだ。
ドナルドさんの気配が離れていったから、別のお仕事に向かったのかもしれない。
「己はニェドーラ国の元国王、ジャレッド・ジュラル。引退して久しい。これは子孫のスタルティ・ジュラルだ。此度は国交についての承諾感謝する」
「アタシは……ニキーダよ」
「おや? 先ほどは〝テンコ〟と仰っておりましたが……」
天狐が名乗ると、キアーロ国の国王ーードヴァレーさんがすかさず質問した。
「普段は天狐って呼ばれてるからついクセでね。アタシはニキーダ。セナちゃんがつけてくれたのよ~。いい名前でしょ? セナちゃんの関係者である、あなた達なら呼んでも構わないわ」
天狐はそう言って私の頭を撫でる。
「他の人はダメなの?」
「名前はね、重要なの。人となりを表すのよ。やったこともやられたこともないけど、古代魔術では名前で縛ることもできるって言われてるの。だからアタシも自分の名前なんて考えなかったのよ。種族がアタシしかいないから名前がなくても困らなかったしね」
「私が付けちゃってよかったの?」
「もちろん。セナちゃんが名付けてくれて嬉しいわ。まだ一度も呼んでもらってないけど」
「う……ごめん。ずっと天狐って呼んでたし、いつから呼んでいいのかわからなかったのと、改まるとちょっと恥ずかしくて……」
「うふふ。大丈夫よ。そんな感じだろうなって思ってたわ。もちろん、ママでもいいのよ?」
マゴつく私を天狐は笑って許してくれたけど、気にしてるならちゃんと名前で呼んであげないと! 申し訳ないことしちゃった!
パパとはすんなり呼べたのにママと呼ぶのは恥ずかしいのは何故!?
ママはたまにでニキーダと呼ばせてもらおう。
「では我々はニキーダ殿と呼んでも?」
「ええ、構わないわ。次はアリシアちゃんの番よ?」
「……は、はい! アリシア・ブラウンと申します。ニェドーラ国でセナ様の専属メイドをしております」
ドヴァレーさんが問いかけると、天狐は頷いてアチャに話を振る。
アチャが緊張気味に頭を下げると、アーロンさんが「堅苦しいのは苦手だ」と手を振った。
困惑しているアチャの代わりに天狐が「じゃあ、遠慮なく」と返した。
アーロンさんは一つ頷くとジィジに向き直り、握手を求めた。
「史実の登場人物に実際会えるとは光栄だ。当時の話を聞きたいが、先に国交の件について話をまとめたいと思う。まず……」
流石に国に関わる仕事の話だからか、アーロンさんは真面目に話し始めた。
アーロンさんの話をまとめると……ここにいる三ヶ国は既に手紙でやり取りしていたため、内容の確認と書類にサインすればいいそう。
他国とも国交を結ぶかどうかはジィジ達に委ねられ、話し合いの場が必要なら用意してくれるらしい。
輸入や輸出についても話はまとめられていたみたいで、サンプルの交換や追加の資料が行き来している。
スタルティはときどき首を傾げながらも、自分なりに話を理解しようと努めていた。
「ドヴァレーは顔見知りが多いが、ジュラル殿は初対面だろう。レナードに資料を作らせた。時間は少ないが、あるとないではかなり違うと思う。後で確認してくれ」
「助かる」
ジィジがアーロンさんから受け取った資料を横からかっさらい、パラパラとめくる。
資料は、来場者である他国の王族や宰相などのプロフィールが簡単にまとめられていた。
写真はないけど、似顔絵が描いてあったり、特徴が書かれていてわかりやすい。
それにしても……
「子供が結構いるんだね」
「あぁ……捜索を頼んだ手前、断れなかったんだ。何もないとは思うが……穏便に頼むぞ」
〈それは相手次第だな〉
アーロンさんはグレンの返事にピクリと眉を動かし、「何もないことを願うしかないな」と苦笑い。
私はそんなに面倒な子供が来るのかと資料を手早くチェックする。
「今回のパーティーは名目上、新しく結ばれる国交を祝うパーティーだ。どんなに気になっても〝探し人を見るため〟だけに集まれないからな。見たいなら見に行けばいいと思うが……まぁ、この辺は王族や貴族特有の見栄だな」
「ふーん。なるほど」
「ただ、そうしたおかげで楽だぞ? セナには最初に挨拶してもらうが、それ以降は他の者と同じく自由で構わん。ジュラル殿はオレやドヴァレーと一緒に挨拶回りをしてもらいたい」
「おぉ! はーい!」
「……わかった」
ジィジが答えるまでにちょっと間があった気がする。
怖がられてたせいであんまり人と関わってなかったから、苦手なのかも。何かあったらアシストしてあげよう。
「パーティーは夕食を兼ねた、カレーパーティーだ。その前に、会わせたいやつらがいる。場所は会議室だ」
アーロンさんとレナードさんの案内で会議室に着くと、そこには……キアーロ国王都の商業ギルマスのサルースさん、同じく王都の冒険者ギルマスのジョルガスさん、タルゴーさんと執事のダーリさん、リシータさん、シュグタイルハン国王都の商業ギルマスのボンヘドさん、同じく冒険者ギルマスのグティーさん……と勢揃いしていた。
サルースさんは来るって聞いてたけど、タルゴーさんとダーリさんまでいるとは思わなかった!
「みんないる!」
「セナ達はそちらに、ドヴァレー達はあちらの席に頼む」
「はーい」
会議室は教室のような家具の配置になっていて、一段高い壇上と聴衆席。聴衆席には既にサルースさん達が座って待っている。
壇上にはソファが並べられていて、私達は各グループ毎に着席する。ブラン団長達、ジィジや私達、アーロンさん達、キアーロ国の国王達という並び順だった。
「わぁ~! 勢揃いだね!」
「うむ。ここにいる者はセナの関係者だ。パーティーの前に顔を覚えておいて欲しい」
アーロンさんはジィジが頷いたのを確認してから「では、開催国であるオレから……」と自己紹介。続けて、キアーロ国の王様達、ブラン団長達、ジィジ達と順番に紹介した。
サルースさん達は前列から順に立ち上がり、それぞれ自分の名を名乗っていく。
天狐が小声で「覚えきる自信がないわ」とポツリと呟いた。
私は元々会ってたからわかるけど、私も初対面だったら覚えられないよ!
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。