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15章
なんか違う
しおりを挟む「うおっ!」
「わっ!!」
体が浮遊感に襲われて慌てて体のバランスを取る。
柔らかい場所に着地して、素早く周りの様子を窺った。
マップではここは騎士団の屋外演習場。目の前に張られた結界の外は土埃が砂嵐のように舞っていて視界を塞いでいる。
何かに耐えるような唸り声は聞こえてくるのに、キョロキョロと見回しても問題のパブロさんが見当たらない。
「パブロさ――わわっ!」
いきなり足元が動き、私は転がり落ちるように尻もちをついた。
何が起きたのかとバッと顔を上げてから、ようやく合点がいった。
長距離だったからか、ネックレスを目指したからか……わからないけど、狭い結界内に折り重なるように落ちたみんなの上に着地していたらしい。
道理で砂嵐がよく見えると思ったよ……身長低いハズなのに結界目の前だったのは視点が高かったからなのね……
〈重い!〉と怒りながら、下から脱したグレンのさらに下に、パブロさんやブラン団長が潰されていた。
慌てて下敷きになっていた三人を助け起こすると、三人共頭を押さえながら目を丸くさせた。
「大丈夫?? ごめんね」
「うぅ……セナさん……どうしてここに……?」
「ネックレスの結界が使われたのがわかったから。これ飲んで」
ポーションを配り、パブロさんに私達が現れたせいでミチミチになった結界を広くしてくれるようにお願いした。
復活した三人に何があったのか聞いてみると、要領を得ないものだった。
「えっと、つまり……謎の飛行物体が現れてリカルド隊長が剣を投げたら、それが墜ちてきた。墜落時の爆風を防ぐためにネックレスに魔力を通した……ってこと?」
「……そうだ」
「セナさーん! 会いたかったよー!」
パブロさんはサッと私を持ち上げ、ギュムギュムと抱きしめてくる。
てっきり魔物との戦いとか、暗部のお仕事でピンチ! とかを想像してたんだけど……まさか宇宙人来襲みたいなパターンだとは思ってなかった。しかも本人はバトルには参加していない。
まぁ、三人が無事だったことを喜ぶべきだよね!
「その飛行物体ってなんなの?」
「あのバカが勝手に攻撃するからさ! 僕達は確認できてもいないんだよ! ってその人達は?」
私を抱えたまま、鋭い目付きでガルドさん達を見やった。パブロさんはかなり警戒しているみたい。
そういえば会うのは初めてだったっけ。ガルドさん達はパーティーに参加してなかったや。
「あ、紹介するね。私を呪淵の森で助けてくれた、【黒煙】のパーティ。順番にガルドさん、ジュードさん、モルトさん、コルトさんだよ。よろしくね」
「……貴殿らが……」
手を上げて挨拶するガルドさん達に驚きながら、ブラン団長達は自己紹介してくれた。
その間も土埃は収まる気配はなく、それどころか見えない位置から戦闘音が聞こえてくる。
「リカルド隊長が戦ってるっぽいけど、見えないんだよね……この魔力と気配……いやいや。まさかね」
その相手がここにいるハズのない人物しか思い当たらなくて、頭が混乱し始める。
ちょうどそのとき、「あっぶないじゃないのー!」と怒りの声が響き渡った。
「え!? やっぱニキーダ!?」
〈うむ。そうみたいだな〉
「え? なんでいるの?」
〈知らん〉
ですよね!
とりあえずパブロさんにネックレスの結界を解いてもらい、新しくプルトンに結界を張るようにお願い。
気配を頼りに戦っている二人に結界を張ると、ニキーダが「イダッ! なにすんのよ!」と叫んだ。
キンキン! ガンガン! と結界を壊そうと攻撃する音が聞こえる中、土埃が収まるのを待つ。
するとそこには楽しそうに結界に大剣を振り下ろすリカルド隊長と、真っ赤な瞳を紅く燃え上がらせて爪で引き裂こうとしているニキーダがいた。
他の騎士団の団員達は演習場の隅で身を寄せあっている。パッと見た感じではケガ人はいなさそうで、その点は安心した。
「ニキーダ! ニキーダってば! んー……えっと、あ! ママー!!」
「!?」
名前を呼んでも気付いてもらえなくて、ママと叫ぶとグリン! と首だけこちらを向いた。
あまりの瞳の強さにビクついた私を視界に捉えると、徐々に燃えるような瞳はなりを潜めていく。
「……まぁ! セナちゃん!」
我に返ったニキーダは、私が結界を解除した瞬間――一瞬で私を抱え上げ、グリグリと頬ずりしてきた。
す、素早い……
「うふふ。癒されるわー。んもう、会いたかったのよ?」
すっかりいつも通りに戻ったニキーダになされるがままになっていると、ブラン団長達が寄ってきた。
「……ニキーダ殿」
「あら、久しぶりね。ブラン達がいるってことは、やっぱりここがカリダの街なのね」
「……あぁ。何がどうなったのか聞いても?」
「ええ。急いで仕事片付けて戻ってきたのよ。そしたらセナちゃんは旅に出たって言われちゃってね、ブランならセナちゃんがどこにいるか知ってるかもって聞いてすぐに飛んで来たんだけど……降りられる場所探してたらアイツが攻撃してきやがったのよ! 本当信じらんないわ! アタシじゃなきゃ大ケガよ、大ケガ! ま、セナちゃんに会えたから許してあげるわ。セナちゃんに感謝してよね」
「……なるほど。それは大変失礼した。セナ」
「ん?」
「……あの結界はキツいか?」
「ううん。あれくらいなら余裕だよ。解く?」
「……いや、可能ならしばらくあのままにしておいてくれ。俺達は場所を移そう」
「あ、待って」
促すブラン団長を止めたニキーダは私を抱えたまま、演習場にできたでっかいクレーターに向かって歩いていく。
クレーターの中心には、私よりも幾分か小さいサイズの透明度の強い薄い水色の生き物がうつ伏せで頭を抱えていた。
「あなた大丈夫?」
『ピギィ! ピギギギギ!』
声をかけたニキーダに勢いよく立ち上がって文句を言うその生き物は、日本では動物園で見かける生き物のにそっくりだった。
「可愛い……ペンギン?」
「おしい! ピングーノよ。セナちゃんが気に入ったのなら探し回った甲斐があったわね」
パタパタと腕を振って怒るペンギンを放置して、ニキーダは私に微笑みかける。それを見たペンギンがさらに腕をフリフリして怒りをアピールしてきた。
「ケガはないんでしょ? じゃあいいじゃない」
『ピギ!? ピギ、ギギギギー!』
「何言ってるかさっぱりわかんないわ」
「うんとね、『こんなに遠いなんて聞いてない。ちょっと運ぶだけって聞いた』って言ってるらしいよ」
『ピピ!?』
「流石セナちゃん! 言葉がわかるのね」
「ううん。クラオルに通訳してもらったの。おなかがペコペコだって」
「えぇ……? ワガママねぇ。その辺の草でも食べてなさいよ」
「えぇ……それは可哀想だよ。そうだ! キミも一緒に行こ? ご飯あげるよ」
『ピピ?』
パブロさんが他の団員達に伝言しに行くとのことで、私達はブラン団長の執務室に移動することになった。
歩くのが遅いペンギンはフレディ副隊長が運んでくれた。氷や雪の上を滑ったり、飛んだりするのは得意だけど、歩くのは苦手なんだって。
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